株式会社日本メディック
(画像=株式会社日本メディック)
城田 充晴(しろた みつはる)――代表取締役社長
1987 年、三重県生まれ。早稲田大学卒業後、みずほ情報総研(現・みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社、システムコンサルタントとして活躍。
2017 年に日本メディックに入社、マッサージ機器の営業、企画・開発などを担当する。
2021 年、社⾧に就任。趣味はゴルフ。
マッサージチェアをはじめ、健康状態を推定する測定機器、などの健康器具の企画・開発を行っています。特に、業務用マッサージチェアとしては国内最大シェアを誇り、業務用に特化した機能を追求しています。超高齢化社会へと進む現代の日本において、安全で質の良い健康機器の企画、開発ならびにマッサージチェアの利用拡大を通して健康増進のサポートを目指します。

目次

  1. これまでの事業変遷
  2. 自社事業の強みやケイパビリティ
  3. これまでぶつかってきた課題や変革秘話
  4. 今後の事業展開や投資領域
  5. メディアユーザーへ一言

これまでの事業変遷

—— これまでの事業変遷についてお聞かせください。

株式会社日本メディック 代表取締役・城田 充晴氏(以下社名、氏名略) もともと、昭和のバブル期に温泉ホテルや健康ランドでの展示販売からスタートしました。お風呂上がりのお客様にマッサージチェアを試してもらい、「ご自宅でもいかがですか?」と提案する販売スタイルです。

バブル崩壊後、スーパー銭湯の開店ブームがあり、展示販売員がいない時間でも「使いたい」というお客様の声に応えるため「コイン式マッサージチェアの運営ビジネス」を開始しました。この無人運営モデルは徐々に拡大し、効率的に収益を生むビジネスとして成長しました。

その頃、家電量販店やテレビショッピングの普及により、従来の展示販売は採算が合わなくなったので撤退し、コイン事業とレンタル事業に注力することにより会社をスリム化することに成功しました。

しかし数年後には、仕入れ先メーカーがファンドに買われ、一方的な支払条件の変更を受け、資金繰りの破綻が明白になり、資金に余裕が残っているうちに事業と従業員を他社に譲渡しました。その結果、一人も解雇することなく、会社を空の状態にして民事再生手続きを決断しました。

—— 民事再生後の再建について教えてください。

城田 事業も資金もない状況で、次に何をすべきかが大きな課題でした。

そこで、「業務用に特化したマッサージチェアを開発すれば、同じ悩みを抱える全国の運営会社に役立つはずだ」と考えました。ただし、業務用マッサージチェアの製造には医療機器の認証が必要で、協力してくれる工場を見つけるのに苦労しました。最終的に、取引先であった企業の相生電子の協力を得ることで製造が実現しました。

資金面では多くの方の支援を受け、業務用マッサージチェア「あんま王」を開発・発売。これが事業再建の礎となり、現在の基盤が築かれていきました。

—— ホールディングス設立の経緯について詳しく教えていただけますか。

城田 2021年にホールディングスを設立した背景には、事業承継とシナジーの最大化という目的がありました。当時、相生電子の社長が後継者問題に直面して相談をうけていました。 日本メディックと一体となることで、より強固な体制を築くことを目指しました。

ホールディングス体制にしたことで、日本メディック、ライフスピリッツ、相生電子の3社を「兄弟会社」として横並びに配置しました。これにより、上下関係を生まず対等な関係を維持しながら、各社のシナジーを最大化することが狙いです。

自社事業の強みやケイパビリティ

—— 自社事業の強みについてお聞かせいただけますか。

城田 当社の強みは、日本で唯一、業務用に特化したマッサージチェアを提供している点です。大手メーカーも存在しますが、多くは家庭用向けであり、業務用としての耐久性や機能は考慮されていません。家庭用は使用頻度が低いのに対し、業務用は常に稼働しているため、布が破れたり汚れたりすることが頻繁にあります。そこで、消耗品としての布を現場で簡単に交換できるよう改良しました。

—— 家庭用と業務用では、求められるものが大きく異なるようですが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。

城田 業務用では、機械が一日でも停止すると売上に影響を及ぼします。家庭用なら修理日は、お客様の都合で翌週、翌々週になることがありますが、業務用ではそうはいきません。例えばネットカフェなどに設置されている場合、故障すればそのブース自体が使えなくなり、売上機会を失うことになります。そのため、万が一の故障時にもすぐに修理できる体制を整えています。これが当社の強みの一つです。

—— 迅速なメンテナンス体制が重要なのですね。それが参入障壁にもなっているのでしょうか。

城田 その通りです。業務用のマッサージチェアは、出力や揉み方において家庭用と大きな違いはありません。そのため、ハードウェア自体の差別化は難しいですが、メンテナンスや運用面での差別化が大きな参入障壁になっています。全国にメンテナンス要員を配置し、迅速な対応を可能にするネットワークを構築するのは容易ではありません。これが、当社が業務用市場で優位性を持ち続けている理由の一つです。

これまでぶつかってきた課題や変革秘話

—— これまでに直面された課題や、それをどう克服されたのかを教えていただけますか。

城田 最大の課題は、業務用マッサージチェアの製造が、私たちにとっても相生電子にとっても初めての挑戦だったことです。最初のロットでは不良が多発し、納品直後に問題が発覚することもありました。しかし、改良を重ねた結果、不良率を大幅に低減することができました。

また、業務用と家庭用の違いを理解してもらうことにも苦労しました。中国の工場は「家庭用として何万台も販売している」と自信を持っていましたが、業務用として使うと耐久性の限界がすぐに訪れる。こうした違いを伝え、改善していく過程は、試行錯誤の連続でした。

—— その改良は、中国の工場と密にやり取りしながら進めたのでしょうか。

城田 基本的なフレーム部分は中国で製造していますが、プログラムや基板の設計といった重要な部分はすべて日本で行っています。中国で製造したハードウェアを仕入れた後、日本の業務用基準に適した仕様に改良する形です。製造を委託しつつ、日本の品質基準に合うようにブラッシュアップを続けています。

—— 会長から経営を引き継がれる際、ご苦労はありましたか?

城田 私はもともとSEとして働いており、システム開発を通じてお客様の課題を解決する仕事をしていました。2017年に入社した際、社内の業務が非常にアナログであることに驚きました。例えば、注文書はほぼすべてファックスでやり取りし、現金の回収記録も複写式の紙で管理するなど、改善の余地が多くありました。

そこで、業務の電子化に取り組みました。例えば、注文のやり取りを無料のビジネスツールに置き換え、業務効率を大幅に向上させました。

—— IoTやキャッシュレス化などの新たな取り組みについて教えてください。

城田 私が入社した当時、現金での運営が主流で、さまざまな課題がありました。遠隔地の現金回収には交通費や人件費がかかるうえ、回収後に機器が故障していてもすぐに気づけないという問題もありました。そこで、IoTを活用し、遠隔で収益状況や機器の故障を確認できる仕組みを構築したいと考えました。

その第一歩として、QRコード決済を導入しました。当時はキャッシュレスがまだ普及していませんでしたが、将来を見据え、決済データを基にマッサージチェアを稼働させる仕組みを試験的に構築しました。これにより今後、会員制サービスやダイナミックプライシング、遠隔での料金設定変更など、現金では実現できなかった新たなサービス展開が可能になります。

今後の事業展開や投資領域

—— 今後の事業展開や投資領域について、どのようにお考えですか?

城田 今後は、他社の参入障壁を高めるため、さらなる差別化を図っていきたいと考えています。例えば、製品のアップグレード時には新たな機能を追加するようにしています。過去には、音声出力機能を搭載したこともありました。

—— 音声出力機能ですか?具体的にはどのようなものですか?

城田 家庭用ではBluetoothで音楽を聴く機能が求められますが、業務用では逆の発想で「お金を入れてください」と自動的に音声案内を流す機能を搭載しました。さらに、長時間座り続けると音声が鳴り続ける仕様にすることで、ソファー代わりの使用を防ぐ工夫をしています。

—— IoTの展開について、自社で進めるのか、それとも他社との協業も視野に入れているのでしょうか?

城田 IoTに関しては、社内にエンジニアがいるため、基本的には自社開発を進めています。ただし、QRコード決済の導入時には、他社のパートナーと協力して進めました。資本業務提携までは行っていませんが、必要に応じて協業する形を取っています。

メディアユーザーへ一言

—— メディアユーザーへのメッセージをお願いできますか?

城田 私たちの業務用マッサージチェアは、もともと温浴施設からスタートし、ショッピングモールや空港、JRの待合室など、さまざまな場所に広がっています。私たちのミッションは、「マッサージチェアがあるとは思わないような場所」にまで、この文化を広げていくことです。

例えば、フィットネスクラブでは、今では当たり前のように設置されていますが、最初はある大手企業が導入したことがきっかけでした。その後、同業他社も次々と追随し、今では設計段階から組み込まれるようになっています。

このように、私たちは今後もマッサージチェアを新たな場所へと広げていきたいと考えています。例えば、オフィスの福利厚生としての活用といったアイデアもあります。まだまだ設置場所の可能性を模索している段階ですが、シナジーがありそうな企業と協業しながら、新たな展開を目指していきます。

氏名
城田 充晴(しろた みつはる)
社名
株式会社日本メディック
役職
代表取締役社長

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