動画配信期間:公開日から2週間

動画の内容をギュッと要約

## 為替市場の現状
- 日本円、スイスフラン、ユーロが強くなっている現象が見られる
- 歴史的に見ると、これら3通貨が同時に強くなる時は世界的な株安や金融危機が発生する兆候
- 変動相場制以降、円は通常強い通貨だが、21世紀に入ってからは若干弱くなっている
- 現在の特異点は、スイスとユーロの株式市場は上昇しているが、日本株だけが下落している状況

## 資金フローと市場動向
- アメリカの関税政策や地政学的緊張により、資金がアメリカから逃避している
- その逃避資金の受け皿となっているのがユーロやスイス市場だが、日本には向かっていない
- 日本の政策金利引き上げの基調や昨年からの円高政策が影響している
- アメリカのドル安・株安、ユーロやスイスの通貨高・株高、日本の円高・株安という構図が形成されている

## 日本経済への影響
- 円高は企業収益を悪化させ、その結果として税収も減少する可能性がある
- 税収減少は「減税のチャンス」を失い、逆に増税へつながるリスクがある
- 日銀の利上げは現在凍結状態にあり、パウエルFRB議長同様に様子見姿勢
- 植田日銀総裁はインフレ(特に米価上昇)に対応しているが、これは金利政策だけでは解決しない問題
- 金利を上げてもお米の価格は下がらず、JAの流通改善や輸入拡大が必要では

## 貿易収支と原油価格
- 日本の貿易赤字は縮小傾向にある(2022年20兆円→2023年10兆円→2024年5兆円)
- 原油価格の下落は日本の貿易収支改善に大きく貢献している
- 1981年から2010年までの約30年間、日本は貿易黒字を継続し、その間に円高が進行(ドル円は340円から75円へ)
- 日本の貿易収支は原油価格に大きく左右される構造にあり、今後も原油価格が重要な変数となる
- 原油価格が50ドル以下になれば、日本の貿易収支が黒字に転換する可能性がある

## 関税戦争の影響と展開
- トランプ政権の関税政策が世界貿易に混乱をもたらしている
- アメリカの貿易赤字は年間1兆ドル(輸出2兆ドル、輸入3兆ドル)
- アメリカの輸出額は世界2位、中国(3.4兆ドル)に次ぐ規模で、日本(7,000億ドル)を大きく上回る
- 報復関税によるアメリカ経済への打撃も懸念される
- 石破首相はトランプ政権の関税政策への対応を迫られている

## 経済合理性の観点
- 一人当たりGDPを比較すると、アメリカ8万5千ドル、日本3万5千ドル、中国・メキシコは1万〜1万5千ドル
- 生産コストの観点では、賃金の低い国への生産シフトは経済合理性がある
- トランプ政権の関税政策は経済合理性に反する面があり、歪みを生み出している
- この「変則的」な状況は長続きせず、何らかの問題が発生する可能性が高い

## 各国の経済状況と政策
- アメリカ:GDPは第1四半期マイナスだったが、第2四半期は2%成長に回復
- FOMCは金利据え置き予想、6月に0.35%利下げの可能性が30%程度
- ニューヨーク連銀のサプライチェーンインデックスはまだマイナス圏
- ユーロ圏:投資家センチメントは改善するもマイナス圏(-8.1)、ECBは利下げ継続見込み
- ドイツの消費者信頼感は-26(前回-24.3)と低迷
- イギリス:対米関税10%で交渉しやすい状況、インドと貿易協定締結
- オーストラリア:中国貿易依存度が高く、雇用指標が強い、選挙で労働党が圧勝
- ニュージーランド:景気回復の兆し、投資ビザ条件緩和で外資誘致

## 政治的側面
- カリフォルニア州(GDPは日本を上回る)の知事が関税に強く反対、カリフォルニア独自に関税を課さない方針
- トランプ大統領はこれに反発し、カリフォルニアの新幹線計画への連邦資金使用に反対
- イギリス、カナダ、オーストラリアの選挙ではトランプ派とされる候補が敗北する傾向
- しかしイギリスではファラージ党首率いるリフォームUKがトランプ大統領と親交があり、地方選で勢力拡大

## 今後の注目点
- 5月16日発表の日本の第1四半期GDP
- 原油価格の動向
- 関税交渉の行方(イギリスとアメリカの関税協定が間もなく締結との噂も)
- オーストラリア:5月20日のRBA理事会で0.5%の利下げ予想
- イギリス:明日(5月8日)の政策金利発表、0.5%利下げ予想

## 為替見通し
- 連休明けの今日(5月7日)はドル買い需要が強い
- しかし需給面では円買いに傾いており、セメントも円高方向
- 円は140円台半ばから143円近くまで上昇(円安)する動き
- 関税戦争の長期化による不確実性継続で、円高・日本株安傾向が続く可能性

## 結論
関税戦争の長期化が世界経済に不確実性をもたらし、資金フローを変化させている。アメリカからの資金逃避はユーロやスイスに向かい、日本には流入していない。日本は円高・株安という厳しい状況に直面し、企業収益や税収への悪影響が懸念される。日銀は利上げを凍結し、貿易赤字は縮小傾向にあるが、コメ価格上昇などインフレへの対応が課題となっている。今後は5月16日の日本GDP発表、原油価格動向、各国の金融政策、関税交渉の行方が重要な指標となる。政治的対立も含め、関税政策による経済の歪みがもたらす影響を注視する必要がある。

野村雅道
野村雅道氏
FX湘南投資グループ代表 1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。 87年米系銀行へ転出。外資系銀行を経て欧州系銀行外国為替部市場部長。外国為替トレーディング業務ヴァイスプレジデントチーフディーラーとして活躍。 財務省、日銀および日銀政策委員会などの金融当局との関係が深く、テレビ・ラジオ・新聞などの国際経済のコメンテイターとして活躍中。為替を中心とした国際経済、日本経済の実践的な捉え方の講演会を全国的に行っている。現在、FX湘南投資グループ代表。

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