
2016年 東京本店長に就任
2021年 常務取締役に就任
2022年 代表取締役に就任
創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み
—— 創業から事業の変遷についてお聞かせください。
ナイガイ株式会社 代表取締役社長・淺井 康雄氏(以下社名、氏名略) 当社は創業から100年の歴史を持つ企業で、当初は断熱工事と断熱材の製造の二本柱でスタートしました。しかし、時代の流れとともに製造業からは撤退し、現在は工事業に特化しています。
その後、建築の躯体に求められる耐火構造の法規制に対応するため、耐火被覆工事にも進出しました。具体的には、鉄骨にロックウールとセメントを混ぜた材料を吹き付け、構造体の耐火時間を延ばす工事です。
さらに約30年前、新潟支店でダクト工事もスタートしました。新潟は市場規模が小さく、断熱工事だけでは十分な収益が見込めなかったため、所長がダクト工事に挑戦し、新たな分野を切り開きました。
—— 新潟での成功を受けて、首都圏でも展開されたのですね。
淺井 15年前に新潟で培ったノウハウを東京に持ち込み、首都圏でもダクト工事を本格的に展開しました。現在では、断熱工事・耐火被覆工事・ダクト工事の三つを事業の柱としています。
また、千葉県野田市には自社工場があり、グラスウールの加工も行っています。
—— 野田でのグラスウール加工も、新分野への取り組みの一環と考えてよいでしょうか?
淺井 これまで工事業中心でしたが、製造業という異なるフィールドで得たノウハウを、他分野へ応用していけたらと考えています。
—— 御社の全国展開についてもお伺いしたいです。
淺井 建築関係で日本全国で専門工事業を展開している会社は非常に少ないので、これも一つの強みだと認識しています。
—— 全国展開に踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
淺井 この方針は、私というより前任の社長の考えが大きかったです。彼は「拠点を出せば売上はついてくる」という信念を持っており、実際それが実感できたのがリーマンショック後のことでした。当時は首都圏で千葉や横浜にも営業所がありましたが、景気の冷え込みで東京に集約しました。
しかしその後、需要が回復してきたタイミングで、再び横浜に営業所を設け、さらに埼玉に関東支店を新設しました。
—— 拠点を再設置することで、具体的にどのような変化がありましたか?
淺井 やはり、需要の回復に応じて売上の増加を感じました。歴代の経営者も同様の考えを持っていたのだと思います。こうして徐々に全国に拠点を広げていきました。
承継の経緯と当時の心意気
—— 会社での承継の経緯についてお聞かせください。
淺井 当社はもともと同族会社でしたが、現在ではそうした要素はまったくありません。資本関係も、創業家である小林家とのつながりはほとんどなくなっています。私は十代目の社長ですが、創業家が関わっていたのは二代目までで、それ以降の7人の社長はすべて創業家とは無関係です。私も前任の社長から直接指名を受けるかたちで就任しました。
—— それは興味深いですね。では、社長になる前の心境はどうでしたか?
淺井 正直に言うと、社長になる2年ほど前に、前任の社長から「ナンバー2として会社を支えてほしい」と言われていたので、社長になることはあまり意識していませんでした。そんな中、ある日突然「引き継いでくれ」と言われたときは本当に驚きました。心構えもできておらず、その後の1年は戸惑いながら過ごした記憶があります。
—— 社長になってからはどのような変化がありましたか?
淺井 就任直後の1年間は、それまでとはまったく異なる世界でした。それまで私は技術や営業を中心に携わっていたため、経理や業務など、内部の管理業務にはほとんど関わったことがありませんでした。最初はわからないことばかりで不安でしたが、周囲の支えもあって、少しずつ理解を深めていきました。まさに学びの連続というスタートでしたね。
これまでぶつかってきた課題や変革秘話
—— 環境の変化に伴い、これまで直面してきた課題や、それをどう乗り越えたかについてお聞かせください。
淺井 社長に就任した3年前、改めて「会社としてどうあるべきか」を真剣に考え始めました。業界全体が厳しい状況ではなかったものの、自社の中身を見つめ直す必要があると感じたのです。最初に取り組んだのは、就業規則の見直しでした。100年の歴史の中で継ぎ足しで作られてきた規則は、もはや何が正しいのか分からない状態に。法改正も進んでいたため、社労士と相談しながら一から書き直しました。
次に着手したのが、社員の給与制度と評価体制の見直しです。時代の流れもあり、社員が納得感を持てる「見える評価」が求められていました。これまでは会社側から一方的に評価して終わり、という形でしたが、新たに評価基準を策定し、フィードバックの仕組みも整えました。
外部への事業拡大よりもまずは、会社内部の体制整備に重点を置いて取り組んできたというのが実情です。
—— 組織が変わろうとしている姿勢が見えるのは、社員にとっても心強いことだと思います。
淺井 当社では「会社は社員のために、社員は会社のために」というスローガンを掲げています。この言葉が一人ひとりに根付いていけば、自然と良い会社になっていくと信じています。
—— ホームページを拝見した際、主要株主の一番上に従業員持株会が記載されていたのが印象的でした。
淺井 弊社では課長職以上の社員に対し、持株会への参加を推奨しています。会社と従業員がともに成長していくための仕組みです。一定数の株を積み立てた後は、個人名義に移すこともできるようにしています。こうした取り組みを通じて、社員が「会社の一部である」という意識を持てるようにしています。
今後の事業展開や新規投資領域
—— 今後の事業展開や新規投資領域についてお聞かせいただけますか。
淺井 まずは、建設業で培ってきたノウハウを活かした事業拡大に注力したいと考えています。
断熱工事については、すでに北海道から九州まで主要都市に拠点を設けています。一方で、ダクト工事は現在、新潟・東京・大阪の3拠点にとどまっており、これを全国各地へと広げていきたいと考えています。
耐火被覆工事についても、現在は東京・大阪・北海道・東北の4拠点で展開していますが、今後はさらに地域を拡大し、全国対応できる体制を目指しています。まずは、この「断熱」「ダクト」「耐火」の三本柱を軸に、既存事業の拡大を進めていく予定です。
加えて、全く異なる新規事業への挑戦も視野に入れています。
—— 全国展開を考えるうえで、現在の拠点が限られているのはなぜでしょうか?
淺井 一番の課題はやはり人材です。弊社は施工管理を主としていますが、実際の施工は協力業者の皆さまにお願いしています。仮に仕事が取れても、協力業者がいなければ現場を回せません。このバランスが非常に重要です。
—— 顧客対応だけでなく、協力業者とのネットワークも不可欠ということですね。
淺井 まさにその通りです。事業展開には、受注体制と施工体制の両方が揃っていることが前提です。また、社員数の問題も大きいです。新たな地域に進出するためには、その土地で事業を担える社員が必要であり、人材の確保と育成が事業拡大の鍵を握っています。
—— 技術やノウハウはすでに蓄積されているわけですから、人材の課題がクリアになれば一気に展開が進みそうですね。
淺井 事業拡大に向けては、最終的に「人」がすべてだと感じています。
メディアユーザーへ一言
—— 最後に、メディアユーザーに向けて、一言お願いします。
淺井 経営者の立場から申し上げますと、現在、弊社が抱える大きな課題の一つは「人」に関する問題です。特に採用面においては、求人に関わるメディアの皆さまとの連携を非常に重要視しています。
メディアの皆さまから取材のご依頼をいただければ、積極的にお応えし、弊社の魅力をどんどん発信していきたいと考えています。とりわけ人材に関するメディアには強い関心がありますが、それ以外のジャンルのメディアからのご依頼にも前向きに対応してまいります。
弊社の取り組みや魅力を多くの方に知っていただくことで、結果としてより良い採用にもつながればと願っています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
- 氏名
- 淺井 康雄(あさい・やすお)
- 社名
- ナイガイ株式会社
- 役職
- 代表取締役社長