阪南倉庫株式会社
(画像=阪南倉庫株式会社)
堀畑 浩重(ほりはた ひろしげ)――代表取締役社長
1971年6月22日堺市で生まれ、地元の小中高などを卒業し、神戸学院大学を経て入社。入社後は、物流を深く理解するために英国クランフィールド大学に留学。2年の修士課程を経て帰国。帰国後、当社の現場を知ることから始める。2017年に代表取締役社長となり、創業時からの伝統を受け継ぎつつ、多様化の時代に即応できる企業へと取り組み中。
1914年の創業から、様々な国内危機を乗り越え、「預かる倉庫から流す倉庫」、「流す倉庫から情報倉庫」、そして、「情報倉庫から設計倉庫」へと変革を重ね現在に至る。 この間、物流が経済にもたらす効果を顧客に理解してもらい、社是でもある「共栄」の信念で機械化、システム化を中心に、顧客満足度の向上とダイバーシティ経営を追求し続ける。 今や、従業員の半数以上を女性が占めており、加えて若手の活躍を推進中であり、社会課題の解決にも尽力中。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み
  2. 承継の経緯と当時の心意気
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
  5. メディアユーザーへ一言

創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み

—— 創業からこれまでの事業変遷と、御社の強みについて教えてください。

阪南倉庫株式会社 代表取締役社長・堀畑浩重氏(以下、社名・氏名略) 当社は1914年に大阪府堺市で創業しました。堺は戦国時代から商業港として発展し、明治時代には繊維産業が推進される中で物流拠点として成長しました。当社もその流れの中で地域の要請を受け、物流や保管を支える役割を担ってきました。

—— 創業の歴史を背景に、長い年月を経て成長を続けているのですね。

堀畑 100年以上の歴史の中で、戦争や経済の変動を乗り越えながら事業を進化させてきました。基本理念は「信義・誠実・共栄」で、守るべき価値観を大切にしつつ、お客様のニーズに応じて柔軟に変化し、革新を続けています。

倉庫業は物を保管するだけでなく、温度・湿度の管理、品質保持、在庫管理といった付加価値が求められます。当社は単位調整機能や、小売店が対応できない作業の補助などのサービスを提供し、競争力を維持しています。

—— システムや人員の管理はどのようにされていますか?

堀畑 30年前にシステム開発部門を立ち上げ、必要なシステムを自社で開発しています。これにより、コスト削減と柔軟な対応が可能になっています。また、ロボット化を進めることで作業効率を向上させる一方、人材の雇用と育成にも力を入れています。技術革新と人材育成を両立し、持続的な成長を目指しています。

承継の経緯と当時の心意気

—— 承継の経緯と当時の心意気について教えてください。

堀畑 事業を引き継ぐ決意をしたのは大学時代です。当時、大手流通業者でアルバイトをしており、ちょうどバブル崩壊後の1990年代中頃でした。流通業界全体が大きな転換期を迎え、店舗ごとの独立運営とセントラルキッチン方式による供給体制の間で方向性を模索している状況を目の当たりにしました。その経験を通じて、流通の面白さに魅了されました。倉庫業も物的流通の一部であり、「物流」に携わることが面白い仕事になると感じ、父に会社に入社したいと相談しました。

—— 入社後の取り組みについて教えてください。

堀畑 入社後、倉庫業を深く学びたいと考え、日本には専門教育機関がなかったため、イギリスの物流名門校に留学し、大学院で修士を取得しました。帰国後は、3年間かけて全事業所を回り、現場での課題を学びながら、お客様や社員との関係を築きました。その後、父の提案で役員に就任し、経営に関わるようになりました。

—— 研修経験は現在の経営に活かされていますか?

堀畑 全ての部署を回ったことで、現場の課題を直接把握でき、社員との信頼関係も築けました。現場視点と経営視点の両方を持つことで、会社運営の幅広い視野を得られたのは非常に大きな財産です。

—— 株式承継などの問題はどうでしたか?

堀畑 株式の移転計画は父が主体的に進めており、私は事業運営に集中しています。計画的に進めており、大きな問題は起きていません。事業承継は重要な課題ですが、税制や株式移転に関しても対応を整えています。

ぶつかった壁やその乗り越え方

—— これまでにぶつかった壁と、その克服方法を教えてください。

堀畑 役員就任後、新規顧客の獲得や収益性向上を目指し営業を強化しましたが、新しい物流案件の入札では成約に至らないことが多く、壁に直面しました。

お客様からは「南大阪に拠点が集中しているため、関東方面への対応が難しい」「規模が小さくて不安」「知名度が低い」といった課題を指摘され、自社だけでは解決が難しい状況でした。

業界団体や勉強会に積極的に参加し、他社とアライアンスを組むことで弱点を補いました。これにより、協力体制を構築し、新しいビジネスモデルを生むことができました。

—— バブル崩壊やリーマンショック、震災やコロナなど、外部の影響でぶつかった壁もあったのではないでしょうか?

堀畑 オイルショックでは繊維メーカーが大きな打撃を受け、ニクソンショックでは円高の影響で日本製品の海外販売が低迷しました。当社は契約を分散させ、業種に依存しない体制を築くことで、こうした影響を最小限に抑えています。 阪神淡路大震災では倉庫に被害が出ましたが、迅速に対応することで顧客の信頼を維持しました。

今後の新規事業や既存事業の拡大プラン

—— 今後の展望について、新規事業や既存事業の拡大プランを教えてください。

堀畑 既存の6つのサービス(品質保持、価格価値転換、時間調整、単位調整、店舗補助、情報補助)を活かしつつ、新たな提案を進めています。現在の物流業界は、大手に任せれば安心という時代ではなくなりつつあります。例えば、大手運輸会社が運賃を500円から800円に引き上げるケースでは、顧客企業の経営に直接影響を与えることがあります。 中小の運送会社に切り替えた場合も、管理の手間や信頼性の課題が生じます。こうした状況の中で、私たちが目指すのは、プラットフォーマーとして中堅・中小の事業者を繋ぎ、顧客に最適な物流ネットワークを設計する「設計倉庫」です。

—— 「設計倉庫」というビジョンについて詳しく教えてください。

堀畑 これまで「保管倉庫」「流す倉庫」「情報倉庫」と段階を踏んできましたが、次のステップとして「設計倉庫」を目指しています。物流プラットフォーマーとして、顧客に合った最適な物流の形を提供する仕組みを構築中です。現在、新しいサービスを作り込み、顧客の多様なニーズに応えられる体制を整えています。

—— 複数の中小企業をネットワークで繋ぎ、効率化するということですね。

堀畑 その通りです。ただし、単に繋げば良いわけではありません。合理的に運用できる仕組みを作る必要があります。例えば、A社の情報システムと当社のシステムを連携させ、顧客が物流状況を即座に把握し、指示を出せる環境を提供することを目指しています。

この実現に向け、同業6社と共同で情報システム会社を設立しました。業界全体で連携し、より良い提案を可能にする基盤を整えています。

—— 大手物流会社が支配する現状に、新たな選択肢を提供するということですね。

堀畑 そうです。大手物流会社が収益性を重視し、委託先との関係を見直している今、中小企業と協力して効率的な物流ネットワークを構築するチャンスだと捉えています。倉庫会社としても、運送会社と手を組むことで、合理的で顧客に価値をもたらすビジネスモデルを提案できます。

—— 他社との連携を通じて、価値を最大化する戦略ですね。

堀畑 倉庫を増やせば売上が伸びるという考え方ではなく、他社との連携によって顧客への提案価値を高める戦略を重視しています。こうした取り組みを通じて、物流資産の回転率を上げ、倉庫の価値をさらに高めたいと考えています。最終的には、資産の価値を引き上げる設計を追求し、利益率の最大化を目指します。

メディアユーザーへ一言

—— 最後に、ZUU onlineユーザーに向けたメッセージをお願いします。

堀畑 事業者の皆様はそれぞれの分野でプロフェッショナルとして活躍されています。我々は、物流資産を最大限に活用し、効率化を実現する提案と実行を通じて、さらなる成果を支援します。数値化されたデータに基づき、具体的な改善策を提示し、実務まで含めてサポートするのが当社の強みです。

在庫の圧縮によりキャッシュフローを改善するケースや、共通システムを活用して顧客間で需要の波動を分散することで、運用効率を高める事例も多くあります。これにより、コスト削減と生産性向上を同時に実現することが可能です。資産を集約し、バランスシートを最適化することで、収益性を向上させる効果も期待できます。

—— 物流を任せることで、会社全体の業績向上が期待できるのですね。

堀畑 これはロジスティクスの考え方そのものです。単に物を運ぶだけでなく、仕入れ先や販売先の情報を集約し、全体のコストを最適化するプロセスを指します。もともと「ロジスティクス」は戦略的に物資を配置する概念ですが、経済においても同様に、経営者が市場で勝つための支援をする仕組みです。

我々は物流を通じて経営課題を解決するロジスティクス部門として、設計倉庫のビジョンを掲げています。物流を経営戦略の一環として捉えることで、会社全体の成長につながると確信しています。それが当社の提供する価値です。

氏名
堀畑 浩重(ほりはた ひろしげ)
社名
阪南倉庫株式会社
役職
代表取締役社長

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