工作機械大手の牧野フライス製作所に対し、同意なき買収を提案しているモーター大手のニデックによるTOB(株式公開買い付け)が4月初めに始まった(5月8日にTOB撤回を発表)。その陰に隠れる形になったが、同じ工作機械業界で海外投資ファンドが関与する大型の資本業務提携があった。

米タイヨウ、スター精密に36%出資

自動旋盤を主力とする工作機械中堅のスター精密は、米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズから36%強の出資を受け入れると発表した。タイヨウはスター精密の第三者割当増資を約250億円で引き受け、筆頭株主となる。

調達資金は国内工場の新・増設に約140億円、医療機器事業への新規参入のためにM&Aを含めて100億円を充てる。

M&A Online
(画像=スター精密のロゴ看板(東京・日本橋)、「M&A Online」より引用)

スター精密は2030年に売上高1000億円を目標に掲げる。これを見据え、現行の中期経営3カ年計画(2025年1月~27年12月)で、工作機械、特機(小型プリンター)に続く第3の柱として医療機器を育てる方針を打ち出している。

スター精密とタイヨウは20年超の関係があり、これまで100回を超える面談を行うなど建設的な対話を継続してきた間柄という。

タイヨウは電子楽器大手のローランドの株式の非公開化(2014年)や再上場(2020年)を主導したほか、昨年には同社とかつて親子関係にあったインクジェットプリンター大手のローランド ディー.ジー.の非公開化を支援した実績を持つ。

日テレHD、IP事業拡大へ

日本テレビホールディングス(HD)はCM、映画・ドラマなど映像制作大手のKANAMEL(旧AOI TYO Holdings、東京都品川区)の株式22.1%を4月30日付で取得し、持ち分法適用関連会社とした。IP(知的財産)事業の拡大が狙いだ。

日テレHDは今年2月、「海外ビジネス拡大戦略の基本方針」を発表。世界に通用するコンテンツ製作力の構築を加速させるとし、M&Aにアクセルを踏み込む姿勢を打ち出していた。

KANAMELは2021年に米投資ファンドのカーライル・グループと組んで株式を非公開化した。現在、再上場を目指して事業領域の変革を進めている。

日テレHDは2023年、宮﨑駿監督率いるアニメ制作のスタジオジブリ(東京都小金井市)を子会社化。24年7月には縦型ショートドラマ制作のGOKKO(東京都港区)に出資した。