社名変更をめぐり、NTTとセブン&アイ・ホールディングスの間で明暗が分かれることになった。ビジネスの多様化に伴い、社名変更を悲願としてきたNTTは正式社名の「日本電信電話」から、7月1日をもって通称としてきた「NTT」に改める。一方、セブンはカナダ同業大手による買収提案への対応に追われる中、「セブンーイレブン・コーポレーション(仮称)」への社名変更を延期した。

NTT、民営化以来40年ぶり

NTTは5月9日、2025年3月期決算の発表に合わせ、社名変更を明らかにした。6月末の株主総会に議案提出し、承認を得たうえで7月1日から新生「NTT」としてスタートする運びだ。

NTTは1985年、旧日本電信電話公社(電電公社)の民営化に伴い発足。日本電信電話会社の英文社名ニッポン・テレグラフ・アンド・テレホン・コーポレーションの頭文字であるNTTを通称としてきた。

同社は1987年に株式を上場。売出価格の119万7000円に対して初値が160万円を付け、NTT株フィーバーを巻き起こし、バブル景気の初期を象徴する出来事となったことは今に語り継がれる。

M&A Online
(画像=再開発に伴い解体された日本電信電話公社の旧本社(旧日比谷電電ビル、東京・内幸町)、「M&A Online」より引用)

今回の社名変更は昨年4月の改正NTT法施行で可能になった。民営化から40年が経過し、社名と事業の実態にギャップが生じていたことから、国際的に通じる社名への変更をかねて悲願としていた。

実際、事業の柱はすでに固定電話から携帯電話を中心とするITサービスに移行し、国内外では次世代通信規格「IOWN(アイオン)」の展開加速に躍起だ。

決算発表前日の8日には、約2兆3700億円を投じてNTTデータグループを完全子会社化し、親子上場を解消すると発表した。2020年にはNTTドコモを4兆円超で同じく完全子会社化しており、新生NTTの始動に合わせてグループ内再編も一段落する。

セブン、非中核事業売却も針路定まらず

セブン&アイ・ホールディングスは5月27日に開く株主総会に予定していた社名変更に関する議案提出を見送った。

セブンは昨年10月、業績低迷が続くスーパー事業などの非中核事業を新設した中間持ち株会社「ヨーク・ホールディングス」に移管する方針を発表。セブン自体は主力のコンビニ事業に経営資源を集中させる姿勢を鮮明にするため、「セブンーイレブン・コーポレーション(仮称)」に社名を改めるとして、この5月末の株主総会に諮ることにしていた。

非中核事業を束ねる中間持ち株会社については今年2月、米投資ファンドのベインキャピタルに約8100億円で売却することを決めた。

ただ、セブン本体は昨年8月に買収提案を受けたカナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールとの協議が続いており、提案を受け入れるのか、それとも単独での成長を目指すのか今後の針路が定まっていない。社名変更の先送りもやむなしとの判断のようだ。