
総括
FX「世界はリラへ、トルコはドルにユーロに向かう」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価最下位)
予想レンジ トルコリラ/円3.4-3.9
*リラ安の主因=トルコの外貨預金は全体の39%。日本は0.5%。
*規格外のトリプル安続く
*政策金利46%に据え置き
*トルコ中銀、リラへの移行を支援するための変更を発表
*「ホットマネー」のリラへの流入を阻止する措置をとる
*EU大使、トルコ人にビザを要求するな
*インフレ期待は改善
*4月の小売売上高は急増
*トルコ中銀と中国人民銀行、通貨スワップ協定を更新
*新憲法論議で野党を抑圧
*静かなる弾圧、野党議員を含む数十人を逮捕。ただ支持率は野党がリード
*外貨準備残高が増加中(リラ売りか)
*米国の相互関税は10%
(規格外のトリプル安続く)
リラは年初来最弱で対円16.74%安、対ドルで11.61%安(現在1ドル39.70リラ)。株価(イスタンブール100指数)は年初来7.01%安、10年国債利回りは31.14%と依然高い水準にある。
(政策金利46%に据え置き)
トルコ中銀は、政策金利を46%に据え置いた。昨年12月に金融緩和を開始した後、今年3月にエルドアン大統領の政敵とされたイスタンブール市長の逮捕で市場に動揺が広がると、4月に政策を転換して政策金利を42.5%から46%に引き上げていた。
中銀は「持続的なディスインフレを通じて物価の安定を達成するまで、引き締め的な政策スタンスを続ける」と強調した。
一方で5月の基調的物価上昇率が減速し、先行指標からは6月もディスインフレ基調になることがうかがえると説明した。
(トルコ中銀、リラへの移行を支援するための変更を発表)
トルコ中銀は、「トルコリラへの移行を支援する」ための新たな措置を発表した。
個人向けリラ預金シェアの伸び目標を、シェアが60%未満の銀行については引き上げ、シェアが60%から65%の銀行については月間0.4%の伸び目標を導入したと発表した。
また、外貨担保預金口座、いわゆるKKMの準備金比率が33%から40%に引き上げられたと発表した。
同様に、KKM 口座に適用される最低金利も政策金利の 50% から 40% に引き下げられた。
預金者をリラ安から守ることを目的としたKKM制度は2021年後半に導入されたが、当局は経済政策のより広範な転換として、段階的に廃止し、預金を通常のリラ口座に移行させることを目指している。
(トルコの預金は?)
国内での預金のうち(6月13日付)外貨預金は全体の39%。
日本は約0.5%なので、如何にトルコの外貨預金の大きさが分かる。これがリラ安の要因であるとともに、国民のインフレ回避の方法だ。
(「ホットマネー」のリラへの流入を阻止する措置)
トルコ当局は、世界で最も利益の高い通貨の一つであるリラへの投資に反対している。中銀はリラ市場を厳しく統制し、通貨の緩やかな下落を容認しているものの、トレーダーらは最近、市場の動きが予測しにくくなっていると指摘している。
政策金利が50%近くまで上昇したことで、トルコは、いわゆるキャリートレーダーにとって魅力的な投資先となっている。事情に詳しい関係者によると、当局は短期キャリートレードの急速な解消によるボラティリティの急上昇を懸念し、その抑制に努めているという。
今年3月、トルコを20年以上統治してきたエルドアン大統領の最大の政敵であるイスタンブール市長イマモール氏が衝撃的な拘束を受け、リラはわずか数時間で10%急落した。シムセク財務大臣は当時、この売りは主に外国人投資家によるリラ保有の解消が引き起こしたと述べた。
当局は短期キャリートレードによる資金流入をあまり引き付けようとしていない。当局は、こうした取引の巻き戻しの急速な資金流出の中で、為替レートと外貨準備高が大きく変動するのを目の当たりにしているからだ。