日本建築検査協会株式会社御中
(画像=日本建築検査協会株式会社御中)
山﨑 哲(やまざき あきら)――代表取締役
1980年:日本大学生産工学部建築工学科卒業
1980年:山下設計勤務
1990年:個人設計事務所を設立し設計業務を行う。同時に、自走式駐車場工業会等の建築確認申請業務をサポート。
2005年:日本建築検査協会(JCIA)を設立し代表取締役に就任。確認検査機関として国土交通省第17号の指定を受け業務を開始。
2025年:JCIA設立20周年を迎える。
建築確認検査業務、住宅性能評価業務、建物診断業務、構造判定業務、主にこの4種の事業をメインに行っている。建物の上流(新築建物の確認)から下流(古い建物の調査・評価)までを一貫してJCIAで対応可能。今後は、新しい建物審査より、築40年以上経過した建築物が日本全国250万棟あり、この日本の資産をどの様に有効活用するか、を調査・レポートする建物診断業務が拡大する可能性が高いが、その業務を会社設立と同時に行い、日本では1,2位を誇っている点が強み。

目次

  1. これまでの事業変遷
  2. 自社事業の強みやケイパビリティ
  3. これまでぶつかってきた課題や変革秘話
  4. 今後の事業展開や投資領域
  5. メディアユーザーへ一言

これまでの事業変遷

—— 御社のこれまでの事業の変遷についてお聞かせください。設立時の思いやエピソードを交えて教えていただければと思います。

日本建築検査協会株式会社 代表取締役・山﨑 哲氏(以下、社名・氏名略) ありがとうございます。当社は2005年に設立しました。我々はみなし公務員の立場で、国土交通大臣の指定を受け、建築確認検査業務を開始しました。設立から20年が経ちますが、その間には姉歯事件やリーマンショックなど、さまざまな出来事がありました。

—— 設立からすぐに姉歯事件がありましたね。その影響についてはいかがでしたか?

山崎 設立から1ヶ月後に姉歯事件が発生し、確認検査機関という業界の会社としては大きな影響を受けました。幸運にも当社は設立したばかりで影響は少なかったのですが、同業他社が業務停止になり、当社に多くのお客様が来ることになりました。当初は4人でスタートしましたが、すぐに30人体制に拡大しました。

—— その後、リーマンショックがありましたが、どのように対応されたのですか?

山崎 リーマンショックでは、売上が急激に減少しました。当社は外資系の投資銀行からの仕事が多かったため、影響が大きかったです。しかし、すぐに国内の安定した建物の仕事にシフトし、業務を安定させました。

—— みなし公務員としての立場についてもお聞きしたいのですが、どのような競争環境で事業を行っているのですか?

山崎 みなし公務員でありながら、競争は激しいです。株式会社として利益を追求しますが、建物の安心安全を重視しています。価格設定は自由競争の中で行われ、一部は国が決める金額もありますが、基本的には自社で決めています。

—— 会社を設立された背景や思いについても教えてください。

山崎 私は大学で建築を学び、大手設計事務所で経験を積みました。その後、個人で設計事務所を始め、行政に書類を提出する中で建築基準法に詳しくなりました。民間会社が行政の仕事を担うようになり、業界団体や国の外郭団体からの要請で会社を立ち上げました。

—— 小泉政権時代の民営化の流れも影響したのでしょうか?

山崎 当時は行政のサービスが遅く、民間の力で改善しようという流れがありました。私たちもその一環として、業界の流れを良くするために民間企業としての役割を担っています。

自社事業の強みやケイパビリティ

—— 御社の事業上の強みやケイパビリティについて教えてください。

山崎 同業他社についてですが、全国には各県が設立した機関が47都道府県に存在します。また、国土交通大臣が設立した当社のような会社が20数社、担当整備局長や北海道の局長が設立した会社が30数社あり、全国で約110社ほどの会社があります。

ほとんどの会社は新たに建物を建てる仕事をしていますが、当社と他に2、3社だけが異なる業務を行っています。それは、上場REITや私募REITのような投資、証券、文化、ビジネスに関わる仕事です。特に外国の投資銀行や投資家、資産家が国内のビルやマンションを一棟ごとに購入するという仕事が増えており、当社もその一環として多くの案件を扱っています。

これが当社の強みであり、利益の中心でもあります。公的部門は利益があまり出ないため、この部分で強みを発揮しています。

—— REITや外資の仕事が御社に集まる理由は、技術的な強みなどがあるのでしょうか?

山崎 姉歯事件が起きた時に、投資家や銀行が特定の機関には出せないというコンプライアンスが生まれました。それが当社にとっては好機となり、モルガンやドイツ銀行、UBSなどの銀行が当社を選びました。それが20年後の今も続いています。

—— 私も金融機関にいたのでREITのことはよくわかります。横のつながりが強い業界ですよね。

山崎 検査部署がない建物は銀行の融資や売買が難しいです。違法な物件の可能性もあるため、売買や融資ができません。そのため、当社が建物を調査し、法の不適合箇所があれば是正することで、市場に出して評価を得ることができるようにしています。これが私たちの最初のスキームでした。

—— 他にも興味深いスキームがありますか?

山崎 はい、財務省で作った法定耐用年数に対する形で、経済的耐用年数という概念を作りました。これは、建物が30年、40年経つと資産価値がゼロになるという考え方を変えるもので、50年、70年、100年経っても資産価値がある建物が存在することを考慮しています。この考え方を基に、銀行が経済的耐用年数を用いるようになりました。

—— 地銀もエンジニアリングレポートを重視していますよね。

山崎 私が最初にアイデアを出し、特許も申請しましたが、特許は通りませんでした。しかし、今ではどの銀行も私が作った経済的耐用年数を使っています。これにより、不動産の流動化が可能になり、築古物件の売買も活発化しました。

—— 確かに、築古物件のファイナンスがつかなければ、売買が難しくなりますね。

山崎 そうです。築古物件の設備を増強して償却で年収対策を提案し、富裕層の方に案内することもあります。これにより、不動産業界は大きく変わりました。

—— 業界が変わったのは山崎さんの功績ですね。

これまでぶつかってきた課題や変革秘話

—— これまで直面してきた課題についてお伺いしたいと思います。それをどのように乗り越えてこられたのか、教えていただけますか。

山崎 一般の方にはあまり知られていないかもしれませんが、私たちはみなし公務員の立場です。国民は当社や同業他社を無料で訴えることができるのです。例えば、大きなマンションが建つとします。その許可を私たちが与えるわけですが、北側の地が日陰になったり、景色が見えなくなったりする被害を受けるケースがあります。近隣の方が建物を作らせないために訴えることができるのです。

—— それは大変ですね。

山崎 はい、当社は幸いにもあまり大きな訴訟に巻き込まれることは少ないのですが、年に一件か二年に一件訴えられることがあります。裁判のような形で二、三年かかることもあり、持ち出しが大きいです。今まで大きく負けたことはありませんが、法に不備があって間違って許可を下ろしてしまった場合などは負けることがあります。そういった場合、損害賠償が何十億、何百億になることもあり、一つのビルが建たなくなることもあります。訴えられると、私もその対応に集中せざるを得なくなります。

—— そういう課題に対する解決策はまだ見つかっていないのですか。

山崎 国の法律ですので、国民が国や行政を訴える権利を変えることはできません。これが現状です。

—— ところで、リーマンショックの時に経営利益が大きく減少したと伺いましたが、その時のご苦労について教えていただけますか。

山崎 確かに、外国の投資家の仕事が大幅に減少しました。売上の半分が公的な仕事で、その影響は少なかったのですが、エンジニアリングレポートの仕事が五分の一になった時は大変でした。しかし、公的機関の仕事を普通に受け入れ始めたことで、売上が戻ってきました。しばらくは順調に推移しました。

今後の事業展開や投資領域

—— 今後の事業展開や投資領域について、どこに力を入れていくのか教えていただけますか。

山崎 建設業界や設計事務所、どこも人手不足が深刻です。当社のような確認機関でも同様です。今後はITや機械化を進め、工事の遅れを解消し、サービス化を進めていきます。また、公共インフラの老朽化も深刻で、これまで役所からの依頼で調査や診断を行っていましたが、今後はもっと積極的に関与していく必要があると考えています。これが今後の投資領域になると思います。

—— 建築系から土木の方にもシフトしていく可能性があるということですね。

山崎 はい、その通りです。中古のビルをリノベーションして再販するビジネスも増えてきています。弊社のお客様からのニーズも高まっており、建物診断部の仕事も増えています。しかし、人手不足で対応しきれない部分もあります。

—— それは大変ですね。人材の採用についてもお伺いしたいのですが、ゼネコンの定年退職者を積極的に採用されていると聞きましたが。

山崎 はい、弊社では70歳定年制を導入しており、シニア従業員が全体のおよそ4割を占めています。ゼネコン出身者は一級建築士を持っている方が多く、彼らのスキルをそのまま活かせる環境を提供しています。

—— それは素晴らしいですね。経験豊富な方々が活躍できる場を提供することは、会社にとっても大きな強みですね。

山崎 はい、75歳以上でも働いている方がいますし、体力がある限り活躍していただける環境を整えています。70歳以上は一年契約で働けるようにしており、スキルや希望に応じて柔軟に対応しています。

—— それにしても、設立当初は山崎さんお一人で始められたと伺いましたが、今の持ち株比率はどうなっているのでしょうか。

山崎 設立時は私一人で始めましたが、リーマンショックの影響で持ち株比率が変わりました。現在、50%を私が持ち、残りは友人知人や社員持ち株会が持っています。社員持ち株会は全体の約15%を占めています。

—— 社員の方々も会社の成長に貢献しているんですね。ありがとうございます。

メディアユーザーへ一言

—— 山崎さん、今日はお時間いただきありがとうございます。読者の皆様にメッセージをお願いできればと思います。

山崎 日本建築検査協会株式会社では、古いビルの構造計算書がなくて安全性が分からない場合でも、構造計算の復元や法の不適合箇所の修正を行い、ビルの価値を上げ、売買ができるようにしています。困ったことがあれば、当社は日本一対応ができると自負しています。

—— 不動産会社からの依頼も多いのでしょうか?

山崎 はい、エンジニアリングレポートは売主さんからの依頼が多いです。大手企業や外国の不動産ファンドからも依頼があります。

—— 外国の投資家も多いのですね。

山崎 外国の投資家も多く、ソフトバンクグループの関連企業からも依頼があります。需要が多すぎて、一部は断らざるを得ない状況です。

—— それだけ需要があるということは、御社のサービスが時代に合っているということですね。

山崎 はい、建物に関するサービスを川上から川下まで提供できるのが当社の強みです。これからの時代、大事に建物を使っていくことが求められます。私たちはそのニーズに応えていきたいと思っています。

—— 本日は貴重なお話をありがとうございました。

氏名
山﨑 哲(やまざき あきら)
社名
日本建築検査協会株式会社御中
役職
代表取締役

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