
総括
FX「祝日経最高値も35年間で4千円だけ上昇。日本の豊かさの遅れ」
ドル円=145-150、ユーロ円=170-175、ユーロドル=1.14-1.19
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨6位(5位)、株価14位(14位)、㊗日経最高値、ただ35年で4千円の上昇、20倍の米国株との差が大きい」
(今年の円相場は落ち着いている)
世間は米大統領を中心に騒々しいが、今年の円相場は落ち着いている。過去4年の独歩安的な円相場と比べ、年間では12通貨中6位と強くもなく弱くもない。G7のイシューにもならない。
株価(日経平均は最高値を更新したが、あのバブルの高値からは35年かけて約4千円の上昇は寂しい。同時期にNYダウは20倍上昇している。日本も20倍になっていたら日経は80万円程度か。これが日米の豊かさや国富の差かもしれない。
インフレ抑制では効果のなかった利上げ円高を叫ぶ声も出ているようだが、歴史的な検証を怠れば、一人当たりGDPで40位近くにいる日本と海外の差が再び拡がるだろう。
(需給は拮抗している)
原油安による貿易赤字の縮小と関税に向けての駆け込み輸出で4月までは円高が進んだが、5月、6月、7月と外貨投信への資金流入が凄まじく、円高を抑制している。5月は6.2兆円、6月は4.4兆円、7月は4.6兆円の増加。今後も短期的にはトランプ大統領の揺さぶり発言と米国指標で動くが、中長期的には貿易と外貨投信をチェックしたい。
(次回、日銀政策決定会合は9月19日)
次回の日銀政策決定会合は9月19日でFOMCが17日。約1か月あり。4-6月期のGDPの改善もあり、利上げ観測が高まっていくだろうし、恒例の大手メディアのリーク合戦もあるだろう。
ただ、内閣府は、政府経済見通しの年央試算と中長期試算を公表し、2025年度の実質成長率を従来(1月)の1.2%から0.7%へ大幅に下方修正した。トランプ関税による内外経済の下押しや物価高による消費抑制を織り込んだ。一方、税収増などにより25年度と26年度の国・地方の基礎的財政収支(PB)見通しはそれぞれ引き上げ、26年度は黒字幅が拡大する。
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)15位(15位)、ドルは強いというが今年は最弱(除くトルコ)」
(ドルは劇的に弱いわけではないが、トルコリラを除けば最弱)
今年の米ドルは劇的に弱いわけではないが、トルコリラを除けば最弱だ。米国の不確実性による不安からの資金逃避が主な要因で、株価を見れば明らかなように欧州株が米株より強い。10年国債利回りは4.32%、7月雇用統計とCPIで低下したが、PPI上昇で戻している。
(二大イベント)
さてイベントは多い。月曜日に米ウクライナ首脳会談、順調に進めば22日に米露ウクライナの3か国首脳会談の観測もある。その22日にはジャクソンホールでのパウエル議長の講演がある
(パウエル議長は)
雇用統計でのNFPの大幅下方修正で、9月の利下げ予想が強まっている中(フェッドウオッチでは92%の確率で0.25%利下げ)でのパウエル議長の講演となる。ただ物価は下がっていない。僅かに上昇している。8月クリーブランド連銀CPIは前年比2.84%、コアは3.05%。7月は2.7%とコア3.1%。輸入物価上昇率は前月比で0.4%上昇。まだ中国、カナダ、メキシコ、インドブラジル、スイスなどとの関税協議は続いている。ソニー、任天堂、フジフィルムなどは値上げを表明している。不確実性のなかでの利下げは難しい。新たなFRB議長においても。
(ゴールドマン・サックス、関税影響分析を曲げず「関税が消費者の財布直撃」と警告
トランプ大統領が関税の経済的影響を否定的に捉えた「ゴールドマン・サックス」のアナリストの交代を求めたことを受け、同行のエコノミストは屈せず、関税が米消費者の財布に直接打撃を与え始めるとの従来の見解を堅持した。
ゴールドマン・サックスのエコノミストは、米国の消費者が関税コストの22%を負担しており、今後の関税が初期に課された関税のパターンを踏襲する場合、消費者の関税コスト負担割合が67%に上昇すると試算していた。これまで関税負担は主に企業が担ってきたが、今後は消費者に転嫁されるというこの報告内容は、トランプ大統領の公然たる批判を招いた。
*ユーロ「通貨1位(1位)、株価4位(4位)DAX)、 ユーロは通貨最強を維持。独が心配」
(ユーロは通貨最強を維持。独が心配)
ユーロは米経済の不確実性を受けて年初来で通貨最強を維持してる。欧州各国の株価も強い。独の10年国債利回りは米PPIを受けて2.79%へ上昇、8月の高値圏にある。
欧州全体より、かつては欧州の牽引車であった独の経済の弱さと政治の不安定さが目立つ。
(小売売上改善)
ユーロ圏の6月の小売売上高は前年比3.1%増と、予想(2.6%増)を大幅に上回った。
貿易を巡る不確実性の中でも、内需回復を背景に域内経済が底堅さを維持していることが改めて浮き彫りとなった。
(9月も政策金利据え置きか)
ECBは9月の理事会で政策金利を前回に続いて2%に据え置くとの予想が過半数に達した。EUは米国と貿易交渉に合意したが、その後もユーロ圏の経済見通しが概ね変わっていないためだ。
米国による対EU製品への15%関税で成長が圧迫され、物価上昇圧力が弱まる可能性はあるが、ドイツを筆頭にした財政支援や先行き不透明感の後退で、経済は安定した成長軌道を保つと予想している。インフレ率は既にECBの目標である2%に達し、政策当局には安心材料となっている。
ユーロ圏の経済成長率の予想は今年が1.1%、26年が1.2%、27年が1.4%で、いずれも6月以来、概ね変わっていない。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価10位(7位)、英中銀も気迷い症状)」
(中銀意見が分かれる「しぶとさ」がある)
米経済の不確実性よる欧州への資金シフトでユーロほどではないが底堅い。物価や成長も中銀の予想ほど弱くならず、中銀も気迷い症状がみられる。ポンドは年初来4位で対円1.41%高、FT株価指数は11.82%高。10年国債利回りは主要先進国では一番高い4.7%
(迷える中銀が僅差で利下げもインフレ目標引き上げ)
英中銀は、政策金利を予想通り4.25%から4.0%に引き下げた。しかしインフレ懸念から、9政策委員のうち4人は据え置きを求め、利下げ局面の終了が近い可能性を示唆した。
ベイリー総裁は金利が依然低下する道筋にあるとしつつも、「金利の方向性について真の不確実性がある。その道筋はより不確実になったと思う」と述べた。
インフレ見通しについて、9月ピーク時点の水準を3.7%から4%に上方修正。
3Qの経済成長率を0.3%と予想、2Qの0.1%を上回ると予想した。
(2Q・GDPは予想を上回る)
2Q・GDPは前期比0.3%増と米国の関税や労働市場の低迷にもかかわらず、予想を上回る成長となった。
エコノミストや英中銀は、0.1%の増加を予測していた。発表後ポンドはドルに対してわずかに上昇した。
(利下げ先送りの可能性)
英中銀のチーフエコノミストのピル政策委員は、物価上昇圧力が今後弱まる可能性が高いとしながらも、もしもインフレ率拡大が長期的な行動の変化を反映している場合には利下げを先送りする可能性があるとの見解を示した。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価12位(12位)、ドルより強いが中国景気減速で伸びず」
(米関税による不確実性と中国景気減速の中で豪ドルは年初来8位)
米関税による不確実性で弱いドルよりは強い。ただ中国景気の減速もあり、豪の景気も過熱しない。豪ドルは年初来8位で対円1.55%安、株価(全普通株指数)は9.4%高。10年国債利回りは4.27%。
(RBAが0.25%利下げ、インフレ低下で)
豪RBAはインフレ鈍化と労働市場の減速を理由に今年3回目となる利下げを実施、政策金利を0.25%引き下げ3.6%とした。経済が勢いを一部失っており、インフレと雇用の目標達成には一段の政策緩和が必要になる可能性を示唆した。
RBAは「基調的なインフレ率が2-3%のレンジ半ばに向けて低下し続け、労働市場の状況も予想通りわずかに鈍化していることから、さらなる金融緩和が適切と判断した。需給の双方について不確実性が高まっていることを踏まえ、見通しについて慎重な姿勢を崩していない」とした。 決定は全会一致。
(インフレ率は目標下限)
2Q消費者物価が前期比で0.7%上昇。上昇率は前期から0.2%低下。前年同期比では2.1%で、前期から0.3%低下し、約4年ぶりの低水準となった。また、インフレ率は4四半期連続でげる目標圏内(2~3%)に収まった。
(雇用はまずまず)
7月の雇用統計によると、失業率は4.2%と、前月比で0.1%低下した。就業者数は1464万1400人と、前月から2万4500人増加。予想の2万5000人増をやや下回った。一方、失業者数は64万9000人と、前月から1万0200人減少した。雇用は懸念されたほど悪化しなかった。
(企業信頼感指数は改善)
7月の企業信頼感指数はプラス7と6月のプラス5から上昇し、約3年ぶりの高水準となった。サービス業と建設業が堅調だった。
*NZドル「通貨7位(6位)、株価19位(19位)、国を離れるNZ国民」
(通貨は強くもなく弱くもないが、株が弱い)
NZドルは、不確実性からくるドルの弱さもあって年間で7位(対円-0.91%)と弱くはないが、株価は弱い。主要市場で唯一のマイナス圏だ(-1.69%)。10年国債利回りは4.43%。主要国では英国の4.7%次いで高い。
(今週は利下げか。高い失業率も考慮)
NZ中銀は、今週さらなる利下げを行うと予想されており、低迷する経済の活性化に向けた措置となる。政策金利を0.25%引き下げ、3.0%とすると予想されている。
インフレが鈍化する中、労働市場が軟調となっており、経済を支援する。2Qのインフレ率は2.7%で、目標の1-3%の範囲内にあり、インフレ期待も低下傾向にある。
一方、2Qの失業率は5.2%に上昇し、2020年後半以来の高水準となった。
(国を離れる国民)
NZの人口流出は経済状況悪化で13年ぶりの高水準に達し、移民の3分の1以上が30歳未満となっている。2025年6月までの1年間で7万1800人のNZ国民が国を離れた。これは、その前の12か月間の6万7500人から増加したが、2012年2月までの1年間に記録された7万2400人というこれまでの記録からは減少している。
(ラクソン首相も利下げを望む」
ラクソン首相は、経済状況についてコメントした。「4月の米国による追加関税発表以来、世界中で深刻な信頼感の喪失とセンチメントの低下が感じられています。過去3ヶ月は非常に困難な時期でした。世界情勢の変化が当然ながら懸念を引き起こしたからです」と述べた。また「製造業の活性化に尽力しており、そのために投資促進のため加速償却政策を導入しました。クリスマス前に発表した60億NZドルのインフラ投資に見られるように、多くの雇用機会につながる建設・開発セクターにも注力しています」と述べ、「今後、更なる利下げを期待しています」と付け加えた。