不動産売買の買付証明書とは?提出後にキャンセルできる?法的効力を解説
  1. 買付証明書とは?役割や目的、記載内容を解説
    1. 買付証明書の役割・目的|購入申込書との違い
    2. 買付証明書の記載内容
  2. 買付証明書を提出するメリット
    1. 売主と優先的に交渉できる
    2. 仲介会社との関係を築ける
    3. 後日購入できる可能性が残る
  3. 買付証明書を提出するうえでの注意点
    1. 投資家としてマナーある対応を心がける
    2. 記載内容を十分に確認する
    3. 買付証明書を提出しても必ずしも購入できるとは限らない
    4. 買付証明書の内容は正確に記載する
    5. 安易な気持ちで買付証明書を提出しない
    6. 有効期限は余裕をもって設定する
  4. 買付証明書には法的拘束力はなく、提出義務もない
    1. 買付証明書を提出した後も契約をキャンセルできる
    2. 契約が進んでいるとキャンセルできない場合もある

買付証明書とは、不動産の購入希望者が仲介会社や売主に対して物件の購入意思を伝える書面のことで、「買付証明書」のほかに「購入申込書」と呼ばれることもあります。買付証明書に法的な拘束力はありませんが、提出により優先的な交渉権を得られることもあるなど、不動産売買で重要な役割を果たします。

本コラムでは、買付証明書の意義や記載内容、メリットや注意点のほか、買付証明書を提出する際の注意点を詳しく解説します。

買付証明書とは?役割や目的、記載内容を解説

はじめに、買付証明書に関する基本的な知識を解説します。具体的な記載内容等は仲介会社や物件の種類等によっても異なるため、不明な点があれば必ず確認するようにしましょう。

不動産売買の買付証明書とは?提出後にキャンセルできる?法的効力を解説
(画像:PIXTA)

買付証明書の役割・目的|購入申込書との違い

買付証明書とは、不動産の購入を希望する買主が、仲介会社や売主に対して購入の意思を明確に伝えるための書類です。購入の意思は口頭で示すことも可能ですが、不動産取引は高額な取引であるため、後々のトラブルを防ぐ目的で作成されます。

買付証明書は「買付」と略されることもあり、他にも「購入申込書」や「買受証明書」などと呼ばれることもあります。中古物件の取引で不動産会社が仲介に入る場合に「買付証明書」、新築物件で売主(一般的には不動産会社)が直接買主を募る場合に「購入申込書」と呼ばれることが多いです。

一般的に、買付証明書は物件の内見後など購入の意思が固まったタイミングで、仲介会社や売主に対して提出します。

買付証明書の記載内容

買付証明書の記載内容はある程度共通しているものの、決まった書式はありません。記載内容にはある程度の共通点があり、例えば、購入希望者の氏名・住所などの情報や物件を特定するための情報、希望取引条件などが記載されます。

買付証明書の記載内容(例)
・購入希望者の氏名・住所、勤務先・収入・捺印などの情報
・購入希望物件を特定する情報(所在地・建物の構造・規模・面積・部屋番号など)
・購入希望金額
・手付金・中間金の金額
・購入条件(融資や抵当権の有無・契約時期・支払い方法や時期など)
・買付証明書の有効期限

また、買付証明書には有効期限が設けられることが多く、この期間中は買付証明書を提出した順番に応じて優先的な交渉権を獲得できます。

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※上記は買付証明書のサンプルです。

買付証明書を提出するメリット

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(画像:PIXTA)

ここでは、買付証明書を提出するメリットを解説します。取引をスムーズに進めるためにも、買付証明書の役割を確認しましょう。

売主と優先的に交渉できる

買付証明書は、仲介会社や売主に対して「この物件を購入したい」という意思を明確に示す書類です。そのため買付証明書を提出し売主側が受領すると、他の購入希望者よりも優先的に交渉が出来るようになります。

特に、人気の物件では複数の申し込みが入ることもあるため、早い段階で買付証明書を提出し、他の希望者よりも優先的に交渉できる権利を得ておくことが重要です。ただし、あくまで優先的に交渉できるというだけで、確実に購入できるわけではありません。

仲介会社との関係を築ける

買付証明書を提出することは、仲介会社との信頼関係を築くうえでも有効です。

仲介会社は買付証明書を提出する購入希望者を「本気度の高い顧客」と認識します。そのため、希望条件に合致する物件情報をより早く伝えてくれたり、売主との交渉において優先的なサポートを受けられたりと、信頼関係を築くことが期待できます。またその一方で、後述しますが、誤った対応をしてしまうと信用を失う場合もあるため、注意しましょう。

後日購入できる可能性が残る

買付証明書を提出すると、仲介会社は、提出の順番や提示条件を総合的に判断し、交渉権に順番をつけます。人気の物件では複数の申し込みがあることもあるため、必ずしも一番先に提出したからといって最も高い順位の交渉権を獲得できるわけではありません。

しかし、買付証明書を提出しておくことで、自分よりも上位の購入希望者との交渉が成立しなかった場合に、次の交渉相手として繰り上がる可能性があります。そのため気に入った物件があり購入を希望する場合は、買付証明書を提出しておくことをおすすめします。

買付証明書を提出するうえでの注意点

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(画像:PIXTA)

ここまでは買付証明書を提出するメリットを紹介しましたが、買付証明書を提出する際には、いくつかの注意点があります。無用なトラブルを避け、スムーズな取引を実現するためには、まずは買付証明書がもつ意味をしっかりと理解し、慎重に対応することが重要です。特に不動産投資初心者は、以下に紹介する点に留意しましょう。

投資家としてマナーある対応を心がける

法的拘束力はないものの、複数の物件に対して同時に買付証明書を提出したり、提出した後にキャンセルしたりすると、仲介会社や売主からの信用を失う可能性があります。

仲介会社は買付証明書を受け取ると、売主への連絡や契約準備、他の購入希望者との調整など、さまざまな業務を進めます。そのため、購入希望者からの一方的な都合でキャンセルされると、それまでの労力が無駄になり、会社側も売主側も多大な迷惑を被ることとなります。

一度信用を失うと、本当に購入したい物件が出た際に優先してもらえなくなるなど、今後の物件探しに悪影響が出てしまう可能性があるため、投資家としてのマナーある対応を心がけましょう。

記載内容を十分に確認する

買付証明書は書面で意思を示すため、一度提出すると簡単には修正できません。内容に曖昧な表現や誤解を招く記載、虚偽の記載があると、後のトラブルにつながります。例えば希望購入価格や引渡し時期、契約条件などが不明確だと、売主との認識の違いが生じて、契約が不成立となってしまうこともあります。

そのため買付証明書を提出する際は、記載内容を十分に確認し、自身の希望を明確に、かつ誤解のないように記載することが重要です。

買付証明書を提出しても必ずしも購入できるとは限らない

買付証明書を提出したとしても、それだけで物件の購入が確約されるわけではありません。他にも購入希望者がいる場合、売主は買付証明書の提出の早さや価格、条件などを総合的に判断して、最も条件の合った買主との交渉を優先します。

そのため、買付証明書はあくまで「購入の意思表示」に過ぎず、売買契約が成立するまでは、売主には取引相手を自由に選ぶ権利があることを理解しておきましょう。

買付証明書の内容は正確に記載する

買付証明書に法的な拘束力はありませんが、売主にとっては買主の本気度を測る重要な資料です。売主は買付証明書の記載内容をもとに交渉に進むかどうかを判断するため、記載内容に虚偽や誇張があった場合、仲介会社や売主からの信用を損なうこととなります。

特に、購入希望額や引渡し希望日など、重要な取引条件については、現実的かつ実行可能な内容を記載することが重要です。根拠のない高額な希望額や、非現実的な引渡し条件を提示することは避け、真摯な姿勢で交渉に臨むことが大切です。

安易な気持ちで買付証明書を提出しない

買付証明書が提出されると、仲介会社や売主はその内容をもとに、具体的な手続き・交渉を開始するため、気軽な気持ちで提出すると、取引相手に無用な手間や期待をかけてしまうこととなります。また、場合によっては前述した「契約締結上の過失」の法理により、損害賠償請求を問われるリスクもあります。

そのため、「とりあえず出しておこう」といった安易な気持ちで提出することは避け、あくまで購入の意思がしっかりと固まり、その後の責任も伴うことを理解したうえで提出するようにしましょう。

有効期限は余裕をもって設定する

買付証明書には通常、有効期限が設けられます。この期間が極端に長いと、売主や仲介会社に「本当に購入する気があるのか」と疑念を持たれる可能性があります。一方で期限が短すぎると、期限内に交渉がまとまらなかったり、住宅ローンの審査が間に合わなかったりするリスクが生じます。

これらのバランスを考慮し、おおむね1〜2週間程度を目安に、最大でも1ヵ月程度の有効期限を設定するのがおすすめです。この有効期限はあくまで目安になり、有効期限自体にも法的な拘束力はありませんが、円滑な交渉を進めるためにも、有効期限の設定は慎重に行うようにしましょう。

買付証明書には法的拘束力はなく、提出義務もない

買付証明書は、あくまで買主が「この物件を買いたい」という意思を一方的に示すための書類に過ぎず、法的な拘束力はありません。契約締結時に行う売買契約書は、買主と売主の双方が契約内容に合意して結ぶ契約書類になるため、法的効力が発生するものになり、買付証明書とは異なります。

また、買主からの買付証明書の提出に対し、売主からの応諾として売渡証明書や受託承諾書などが提出されたとしても、やはり売買契約が成立したことにはなりません。

そのため、買付証明書を提出した後も、原則として契約をキャンセルすることが可能です。ただし、場合によっては法的な責任を負うこともあるため、買付証明書を提出した後のキャンセルには注意が必要です。ここでは、買付証明書に関連する法的なポイントについて解説します。

買付証明書を提出した後も契約をキャンセルできる

買付証明書には法的な拘束力がないことから、買付証明書を提出した後であっても、売買をキャンセルすることが可能です。仮に撤回したとしても、罰則や違約金の支払いを求められることは基本的にありません。

しかし、買付証明書が購入の意思を明確に示すものである以上、軽率な提出や一方的な撤回は、仲介会社や売主からの信頼を損なう原因となります。

契約が進んでいるとキャンセルできない場合もある

単に買付証明書を提出しただけでは、いまだ売買契約の締結には至っていないため、売買をキャンセルすることはできますが、他の要因でキャンセルが認められなかったり、損害賠償請求を受けたりする可能性があります。

例えば、買付証明書の提出後に何度も売買契約書の文言を調整していたり、購入を前提としたリフォームを実施させていたりした場合が該当します。一方的なキャンセルは売主との信頼関係を破壊し、売主の期待を棄損させるものとして、売主からの損害賠償請求が認められたケースがあります。このような法理論を「契約締結上の過失」といいます。

もっとも、どのようなケースがこの「契約締結上の過失」に該当するかの判断は難しいため、買付証明書を提出した後に売買をキャンセルしたい場合には、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

(提供:manabu不動産投資

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