
総括
FX「不確実性拡大でドル不安」
ドル円=145-150、ユーロ円=169-174、ユーロドル=1.14-1.19
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨5位(6位)、株価14位(15位)、インフレ伸び率鈍化で日銀は?為替需給は」
(8月の円は2位、年初来では5位)
8月の円は2位、月末に一時ランドを抜いて首位に立つもNYで抜き返され2位となった。年間ではランドと同率5位で、強くも弱くもない推移となっている。日経平均は伸び悩み、19市場中14位で年初来7.08%高。
10年国債利回りは、財務省の30年国債発行減少報道もあり終盤低下して1.605%。
(インフレ伸び率鈍化)
8月の東京都区部消費者物価のコア指数は、前年比2.5%上昇と、伸び率は3カ月連続で縮小した。前月は2.9%上昇。 総合指数は前年比2.6%上昇し、伸びは前月の2.9%から縮小。
また日銀の消費者物価の基調的なインフレ率を捕捉するための7月の指標が揃って低下した。「刈り込み平均値」が7月に前年比2.0%上昇と前月の2.3 %上昇から伸びが縮小した。
「加重中央値」は1.1%上昇-前月は1.4%上昇、「最頻値」は1.5%上昇-前月は1.4%上昇であった。
(日銀氷見野副総裁講演、自民党は両院議総会)
日銀の氷見野副総裁が9月2日に講演する。年内の利上げ観測もあるが、実施時期のヒントを与えるかどうか。
自民党は2日にも両院議員総会を開く。大敗した参院選の総括を正式に取りまとめる見通しで、その後は臨時総裁選挙を実施するかどうかに焦点が移る。
(今年の貿易統計と外貨資産残高)
貿易赤字はかなり縮小し5年ぶりのドル円陰線に繋がっている。ただそれを抑制しているのは5月から急増している外貨投信の急増だ。この2つだけが為替相場を決めるのではないが与える影響は大きい。以下の貿易統計と外貨投信の表を参考されたし。


(目標は幻か?)
岸田前首相は「所得・資産倍増」、石破首
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)15位(14位)、ドルは引き続き弱い。不確実性拡大で」
(ドルは引き続き弱い。不確実性拡大で)
ドルは引き続き弱い。年初来11位、対円で6.48%安。株価も欧州など30%高となっている市場と比べると強いとはいえない。ダウが年初来7.05%高、ナスダックが11.11%高、S&Pが9.84%高。10国債利回りは4.226%。
(不確実性拡大とは)
・まだ関税率が確定しない中で、ワシントンの連邦巡回区控訴裁判所は、トランプ大統領の関税の大半が違法との判決を下した
・中国、メキシコなどとの関税交渉は延長
・ガザ地区、ウクライナの戦線は休戦どころか戦禍が拡大している
・治安維持のために政府軍をイリノイ州などに送り、州政府の不満が高まっている
・麻薬対策としてベネズエラなどに米軍を派遣し各国との軋轢が生じている
・大学との対立が続く
・FRBに利下げを指示
・FRBクック理事の解雇を命じ、逆にクック理事から提訴される
・ソロス氏を「組織犯罪対策法で起訴すべき」と主張
・NBCとABCの放送免許剥奪を示唆
・SCOなど反米のグループが結束し始めた
・49億ドルの外国支援を廃止
(7月PCE価格、コアは5カ月ぶりの大幅な伸び)
7月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比2.6%上昇した。伸びは6月と変わらず。コア指数は前年比2.9%と、2月以来5カ月ぶりの大幅な伸びを記録した。
ただ、労働市場の軟化を背景に、こうした国内需要の強さを示す兆候が今月の利下げを妨げることはないとの見方だ。
CPIナウのコアは3%越え、GDPナウは3.5%。すんなりと利下げできる状況ではないとも言える。
(雇用統計とCPIに注文)
今週9月5日は8月雇用統計の発表。予想は失業率が4.3%(前月4.2%)、NFPが7.0万人増(同7.3万人増)。
9月10日に8月PPI、11日にCPIの発表があり、17日にFOMCとなる。
*ユーロ「通貨2位(1位)、株価5位(4位)DAX)、米の不確実性拡大でユーロが支えられている」
(米国の不確実性でユーロ高も、仏政局不安は懸念材料)
ユーロはフランスの政局不安もあり、年間首位から2位へ後退した。引き続き米国発の不確実性は続きそこからのユーロ押上げ効果はある。独DAXは先週1.89%安、年間では20.06%高。仏CACは先週3.34%安、年間では4.38%高と冴えない。独10年国債利回りは2.72%。独の経済指標は7月IFO景況感、小売売上と弱かった。経済は強くないが、ユーロは強い2025年。
(独の消費者物価が上昇、今週はユーロ圏の消費者物価)
独の8月の消費者物価は、前年比2.1%上昇し、前月の1.8%上昇から加速した。予想の2.0%上昇を上回った。予想以上に伸びが加速し、過去数カ月続いたディスインフレ過程に終止符を打った。
変動の激しい食品とエネルギー価格を除いたコア指数は2.7%上昇で、伸びは前月と変わらずだった。
今週はユーロ圏8月消費者物価の発表がある。予想は前年比で2.0%上昇、コアは2.0%上昇。7月はそれぞれ2.0%、2.3%上昇。次回ECB理事会は9月11日。
(フランス政局)
バイル仏首相は大規模な歳出削減計画について9月8日に国民議会で信任投票を行うと発表。主要野党3党がこれを支持しない意向を示しており、政権は崩壊の危機に直面している。
(米国のデジタル課税緩和に対して)
欧州委員会のリベラ競争委員はトランプ大統領がEUにデジタル法制の緩和、あるいはEUに対する措置を要求するという脅しを実行に移すなら、EUは米国との貿易協定を放棄する覚悟をしなければならない。
EUはデジタル規制を撤回するつもりはないと述べた。
*ポンド「通貨4位(5位)、株価11位(11位)、トランプ大統領の「不確実政策による特需」で英金融市場はやや安定」
(トランプ大統領の「不確実政策による特需」で英金融市場は安定)
相変わらず、トランプ大統領の「不確実政策による特需」でポンドとFTに資金が流入して英金融市場は安定している。ポンドは4位で対円で0.92%高。FT株価指数は年初来12.41%高。10年国債利回りは4.73%。
(英金融株が下落)
英シンクタンク公共政策研究所は、8月29日、リーブス財務相に対し、秋の予算編成で、市中銀行が中銀から得ている準備預金の金利に課税するよう提言した。
これを受けて銀行株が売られ、ナットウエストは一時3.5%、ロイズ2.6%それぞれ下落した。バークレイズも2%下落した。
財務省報道官は、「財政を強化する最善の方法は経済成長を加速させることだと述べ、税制や歳出政策の変更だけがその唯一の手段というわけではない」と指摘した。
(今週は7月小売売上)
今週は7月小売売上の発表。予想は前月比で0.2%増、前年比で1.3%増で、6月のそれぞれ0.9%増、1.7%増から悪化する
(生産者物価上昇率、6月は2年ぶりの高水準)
6月の生産者物価上昇率は1.9%と5月の1.3%から加速し、2年ぶりの高水準となった。
(ベイリー中銀総裁)
ベイリー中銀総裁は、英国は新型コロナのパンデミック以降、基調となる経済成長の弱さと労働参加率の低下という「深刻な課題」に直面しているとの見解を示した。
「潜在成長率に関するこの問題に立ち返ると、生産性向上をさらに重視する必要がある。高齢化は近い将来に好転することはないだろう」と語った。 英中銀は失業率の長期的傾向ではなく、労働参加率の水準に注目するようになったと述べた。
*豪ドル「 通貨7位(7位)、株価12位(12位)、利下げしたらCPI上昇で豪ドルは先週の最強通貨」
(7日連続で豪ドル円が陽線)
豪ドルはCPIの上昇で先週、最強通貨となった。豪ドル円は7日連続陽線。年間では7位の対円で1.18%安。全普通株指数は年初来9.77%高。10年国債利回りは4.28%。
(7月CPI急上昇)
7月の消費者物価は前年同月比2.8%上昇し、伸び率は予想の2.3%を大幅に上回った。これは2024年7月以来の最高値で、住宅価格の上昇(6月の1.6%に対して3.6%)が要因。
一部の州で世帯が州政府および連邦政府エネルギー料金救済基金(EBRF)の割引を使い果たしたことや、7月の年次電気料金見直しに伴う値上げなどにより、電気料金が6月の6.3%の低下に対して13.1%上昇したことが要因である。 7月の年間トリム平均インフレ率は6月の2.1%から2.7%に上昇し、変動の大きい項目と旅行を除いたコアインフレ率は2.5%から3.2%に上昇。
(利下げ見通し)
7月CPI上昇で 市場が織り込む来月の利下げ確率は22%と、統計発表前の30%から低下した。
(今週はGDP発表)
今週の焦点は2Q・GDP。予想は前年比で2.1%増、1Qは1.3%増。前期比では0.5%増の予想、1Qは0.2%増
(8月利下げ時のRBA議事要旨は。RBAもたいへん)
8月利下げ時のRBA議事要旨は今後1年間に追加利下げが必要になる可能性が高いと判断したことを明らかにした。利下げペースは経済データ次第で緩やかになる可能性も、加速する可能性もあるという。
市場は9月に利下げを見送り、11月の会合で3.35%への利下げを実施すると予想している。2Qの消費者物価上昇率は前年比2.1%に鈍化し、コアインフレ率の指標として注目されるトリム平均値は2.7%と3年ぶりの低水準を記録した。一方、労働市場は緩やかなペースではあるものの、完全雇用水準から軟化している。
*NZドル「通貨8位(7位)、株価19位(19位)、利下げショックからは半値戻し」
(利下げした8月20日の急落からは半値戻し)
8月20日のNZ中銀の利下げと追加利下げ示唆でNZドルは大きく売られたが、その後は戻し雲の下限まで上昇している。月間ではドルより強い10位、年間では8位。株価は弱く、NZ50指数は年初来1.37%安。
10年国債利回りは4.35%。
(次の焦点は)
次の焦点は9月18日発表の2Q・GDP。9月は政策金利の発表はない。
(小売売上。企業信頼感指数が改善)
2Q小売売上高は前期比0.5%増、前年比2.3%増で、それぞれ予想の0.2%増、1.0%増を上回った。消費者が2024年半ば以降の大幅な金利引き下げに反応し始めていることを示唆している。
8月企業信頼感指数は49.7で前月の47.8、予想の49.0を上回った。ただ消費者信頼感指数は92.0で前月の94.7、予想の95.6を下回った。
(7月の求人数は減少)
求人広告の件数は10月以降ほとんど変化がなく、7月の件数は前年比2%減となった。7月はコロナ以前以来、最も緩やかな年間減少を記録。
ただ減少に歯止めがかかっており、特定の分野、業界、地域では前年比で非常に有望な成長が見られている。南島では、住宅や建設活動の増加により労働者の需要が伸び続けており、求職者の関心も高まっている。11月以降着実に増加していた情報通信技術分野の求人数も増加した。
(景気刺激策)
NZ政府は景気後退を防ぐために投資ビザの拡大、銀行の自己資本比率の引き下げなどを行っているが、さらに外国人富裕層の一部を対象に高級住宅の購入を認める方向で検討している。外国人による不動産購入を禁止する措置に例外を設け、富裕層の誘致を図る狙いがある。