エレベーター大手のフジテックがスウェーデンの投資ファンドEQTによる買収提案を受け入れ、株式を非公開化する。別の投資ファンドで、物言う株主として知られる香港オアシス・マネジメントと決別し、経営の安定を取り戻すのが狙いだ。

フジテックでは創業家とオアシスが対立し、これをきっかけとする混乱が3年以上に及んでいる。

香港オアシス、出口戦略を実行へ

フジテックの株式はオアシスが筆頭株主として29.94%を保有するほか、米投資ファンドのファラロン・キャピタル・マネジメントも6.65%を持つ。オアシスと対立してきた創業家は約10%を保有する。

EQTは2026年1月をめどにフジテックに対するTOB(株式公開買い付け)を始める予定。買付価格は1株5700円。買収金額は4078億円に上る。

オアシスとファラロンは保有する全株式をTOBに応募し、出口戦略(エグジット)を実行に移す形だ。

一方、創業家は一部をTOBに応募し、8.37%の保有割合を維持。TOB後にETQ側に保有株式を譲渡するのと引き換えに、フジテックの持ち株会社に約15%を再出資する。

エレベーター業界でフジテックは三菱電機ビルソリューションズ、日立ビルシステム、東芝エレベータの総合電機系と並ぶ国内大手4社の一角を占め、独立系としてトップ。1948年に大阪で富士輸送機工業(1974年に現社名)として創業したのが始まりだ。

フジテックと物言う株主との対立が表面化したのは2022年。オアシス側が創業家と会社との間で不透明な取引があったと主張し、真相解明を求めたことが発端となった。

オアシスはこの年の3月、フジテック株式7%超を新規取得し、大株主に浮上したことが判明した。

創業家出身の内山会長を解任

2022年6月の定時株主総会では賛否を諮る予定だった創業家出身の内山高一社長(当時)の取締役再任議案を総会開始直前に、会社側が撤回。ところが、取締役を外れたばかりの内山氏を、総会後の取締役会で会長に指名した。

態度を硬化したオアシスは、こうした人事が株主への背信行為でガバナンス改善のためには取締役会の刷新が必要だと痛烈に批判。内山氏は取締役在任が40年以上、社長歴も20年に及んでいた。

翌2023年2月の臨時株主総会と同6月の定時株主総会を経て、オアシスが推す取締役が取締役会の半数を占める形となり、この間の3月に内山氏は会長職を解かれた。

内山氏は「オアシスを追い出し、経営が正常化するまで戦う」と主導権の奪還を宣言した。しかし、オアシスが事実上経営権を掌握したことで、同氏の影響力は低下。今年に入ると、オアシスは保有割合が29%を超えるまでフジテック株を買い増した。