株式市場から一旦、「退出」
フジテックは物言う株主の経営介入を招いた末に、買収・非公開化に追い込まれる格好だ。経営の安定化とフリーハンドを取り戻すためには、一旦、株式市場(東証プライムに上場)から「退出」する以外に選択肢がなかったといえる。
一方、オアシス側はフジテック株の大量取得に動いてすでに3年半。投資資金の回収を意味するエグジットの機が熟しつつあった。
フジテックの発表資料によると、非公開化に向けたEQTとの協議は昨年7月頃に始まったという。EQTは昨年、「進研ゼミ」など教育大手のベネッセホールディングスで創業家と組んで2000億円規模のMBO(経営陣による買収)を手がけ、日本でも一躍知られるようになった。
EQTはフジテックを非公開化後に、その持ち株会社に創業家から約15%の出資を受け入れる。経営にはタッチしないものの、創業家は少数株主として残る。内山元会長が長年培ってきた顧客との関係性や事業に対する深い知見を、今後は株主の立場から生かしてもらうとしている。
再上場で問われるガバナンス体制
問題はその先だ。フジテックを買収後、EQTも投資ファンドとしていずれはIPO(株式公開)か売却か、出口戦略のタイミングを迎える。
フジテックの場合、3~5年後の再上場が有力視される。その時、創業家が何らかの形で経営に関与し、“復権”を果たすのか。それとも創業家は「君臨すれども統治せず」の立場を貫くのか、ガバナンス体制のあり様が試されることになる。
文:M&A Online