前田道路、フジタを上回る買収規模

実は、建設業界の買収でこれまで最も規模が大きかったのは道路舗装分野。2022年、持ち株会社のインフロニアに移行前の前田建設工業が約860億円を投じて、持ち分法適用関連会社の前田道路を敵対的TOBの末に子会社化した。

清水建設も同じく持ち分法適用関連会社だった日本道路に2022年と今年の2度にわたりTOBを行い、完全子会社化した。買収額は合計で約770億円だった。

ゼネコンを対象とする事例は2012年にさかのぼる。住宅大手の大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを約500億円で買収した。買収とは異なるが、2013年にはハザマと安藤建設が合併して「安藤ハザマ」を発足させた。

これらのケースを上回るのが今回の大成建設とインフロニアによる買収だ。金額面で1位と2位に並ぶ。

人手不足・資材高で再編機運の高まりも

建設業界に再編・淘汰の大波が押し寄せたのはバブル崩壊後の1990年代。受注の大幅減と不良債権問題のダブルパンチが直撃した。なかでもゼネコンは準大手・中堅クラスが総崩れの様相を呈した。

建設投資は1992年度の84兆円をピークに達したが、2010年代初頭には半分まで落ち込んだ。その後、東日本大震災からの復興需要や都心部の大規模再開発建築工事、インフラの老朽化対策などに伴う投資の増加を背景に2024年度は73兆円まで回復。

しかし、豊富な仕事量とは裏腹に、建設現場では人手不足が常態化し、資材高騰の追い打ちで事業環境が厳しさを増す中、改めて再編機運が高まりを見せている。

実際、大成建設は2023年、首都圏を中心に高級住宅や伝統建築を手がける佐藤秀(東京都新宿区)、高速道路のリニューアブル工事やコンクリート橋梁を強みを持つピーエス三菱(現ピーエス・コンストラクション)を相次いで傘下に収めるなど、M&Aにアクセルを踏み込んでいる。

◎建設業界の主なM&A 

2025年 大成建設 海洋土木大手の東洋建設を買収(8月、TOB開始)
インフロニアHD 三井住友建設を買収(8月、TOB開始)
清水建設 日本道路をTOBで完全子会社化(親子上場解消)
2024年 インフロニアHD 日本風力開発(東京都千代田区)を買収
2023年 大成建設 ピーエス三菱(現ピーエス・コンストラクション)を子会社化
2022年 清水建設 持ち分法適用関連会社の日本道路をTOBで子会社化
インフロニアHD <不成立>東洋建設の子会社化を目的にTOBを実施
大豊建設 麻生(福岡県飯塚市)の子会社となる
2020年 前田建設工業 持ち分法適用関連会社の前田道路を敵対的TOBで子会社化
2019年 日特建設 麻生(福岡県飯塚市)の子会社となる
鴻池組 積水ハウスの子会社となる
2017年 大林組 大林道路を完全子会社化(親子上場解消)
熊谷組 住友林業が筆頭株主となる
2013年 ハザマ 安藤建設と合併し、安藤ハザマを発足
2012年 フジタ 大和ハウス工業の子会社に
2009年 大成建設 大成ロテック(旧大成道路)を完全子会社化(親子上場解消)

文:M&A Online