本記事は、宇根 尚秀氏の著書『最後に勝つ投資術』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

最後に勝つ投資術
(画像=cherdchai/stock.adobe.com)

グローバル分散・パッシブ投資が基本

「儲かる株を教えてください」
「まとまった資金を運用したいのですが、どうすればいいですか?」
「証券会社や銀行のオススメを信用できないので、中立的な意見がほしいです」


私は仕事柄もあって、金融業界以外の友人から、このような相談をよく受けます。
金融業者に相談すると手数料が高い金融商品をすすめてくるので、利害関係のない専門家の私の中立的な意見を求めたいのでしょう。
そんな相談を受けたときには、「これさえやれば絶対に大丈夫」などとセンセーショナルなことはいえませんが、投資に関する私の思考プロセスは伝えられます。
結論はいたってシンプルです。私が友人から助言を求められたら、まずは「グローバル分散・パッシブ投資」をすすめるのです。

グローバル分散・パッシブ投資とは、世界中のさまざまな国や地域に分散しつつ、市場全体の株式指数などに連動した運用成績を目指す投資手法です。
かつては、一般の人が実践するのは簡単ではありませんでしたが、今は誰にでもできます。具体的には、全世界株式に分散投資する投資信託を利用すればいいだけのこと。もうお気づきかもしれませんが、シンプルに「オルカン」を買っておけばいいのです。

「オルカン」というのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の資産運用会社「三菱UFJアセットマネジメント」の大ヒット投資信託「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の通称です。
この投資商品1つだけで、世界47か国、約2,900銘柄に投資されます。つまり、オルカンを買えば、これだけの国と銘柄に自動的に分散投資することになるのです。
オルカンは、設定時の2018年10月から2025年7月16日時点までの7年弱で、基準価格が1万8,477円も上昇し、純資産残高が5兆円を突破するほどの人気となっています。
国内の投資信託(ETFを除く上場投資信託)で、純資産残高が6兆7,000億円以上に達しています。全世界の株式にかなりの低コスト(信託報酬を含む管理費用=年率は税込0.05775%以内)で投資できることから、新NISA(少額投資非課税制度)でも大人気なのです。
「オルカン」に似た全世界分散投資型の投資信託は、さまざまな会社から出ており、投資信託の純資産総額ランキングの上位を占めるようになっています。

私自身は10年以上前から、日本を除く主要先進国の株式に投資する「ニッセイ外国株式インデックスファンド」と、株式と債券へ半分ずつ投資することでリスクを抑えながら安定したリターンの獲得を目指す「セゾン・グローバルバランスファンド」という2つの投資信託に投資をしています。
「ニッセイ外国株式インデックスファンド」は、2014年の開始時点で基準価額が1万円だったのが、2025年には4万6,030円(7月18日時点)となっており、信託報酬のコストを引いた後で約4.6倍以上に値上がりしています。
「セゾン・グローバルバランスファンド」の信託報酬は、私が投資を始めた頃は今では想像できないほど高かったのですが(現在は良心的な水準まで下がっています)、それでもコストを引いた数値を見ると10年間の運用で2倍以上に増えています。

オルカンは全世界の株式に分散投資をすることによって、好パフォーマンスを出せています。

かつて注目されていた、中国株やロシア株などの地域特化型のファンドや、株に比べて安全性が高いとされる債券のファンドについては、過去5年ほどのパフォーマンスは不調に終わりました。
やはり、多くの国に分散しておくほうがよいのです。
多くの人が投資をする動機は、「老後のための資産形成」でしょう。そして、大多数の人は、投資にそれほど時間を費やすことができず、深い専門性があるわけでもありません。
こうした状況を踏まえると、大多数の人にとって、簡単かつ比較的勝率の高い投資手法として、長期グローバル分散・パッシブ投資がふさわしい。
つまり、投資の王道は「オルカン」といっても過言ではないのです。

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宇根 尚秀(うね・なおひで)
1975年生まれ。インベストメントLab代表取締役。1998年東京大学工学部化学システム工学科卒業。2000年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。エクイティ部門デリバティブトレーディング部でアジア地区のトレーディングチームを率いる。2009年同マネージングディレクター就任。2015年200兆円超を運用する世界最大級の機関投資家、ゆうちょ銀行市場部門執行役員を経て、2016年同行市場部門戦略投資部執行役員部長として投資戦略改革に参画。運用企画・投資資産配分・人材採用を含む組織体制の整備に深く関与。2018年から同行市場部門常務執行役員・経営会議メンバーとして組織全体の経営・世界中のファンドの投資選定に関与。2019年JP インベストメント最高執行責任者(COO)兼務。早稲田大学ファイナンス学科修士課程(MBA)修了。人生の折り返し地点をすぎた2020年に残りの職業人生において自分の経験と知識を活かして社会課題解決に貢献するべく起業。現在ベンチャー投資をするベンチャーキャピタルと上場株に投資をする上場株ファンドを運営している。

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