本記事は、宇根 尚秀氏の著書『最後に勝つ投資術』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

最後に勝つ投資術
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GPIF完全トレース4資産均等投資を実践する

「GPIF簡易ポートフォリオ」にもう少し手を加えたいのであれば、「② GPIF完全トレースポートフォリオ」がおすすめです。
投資の分野では、「どの株やファンドを買うか」よりも、「どの資産クラスに投資するか」が重要だといわれます。つまり、そもそも株に投資をするか、債券に投資をするかといった、大きな枠組みから考えることが重要だということです。

多くの場合、資産クラスの配分法が投資成果の大半を左右します。そのため、まずはGPIFと同じ4種類の資産クラスに均等投資するのをベースとします。
4資産均等型を実践する方法としては、三菱UFJアセットマネジメントの投資信託「eMAXIS バランス(4資産均等型)」が業界内でも有力です。この投資信託を買うだけで、簡単にGPIFのポートフォリオをまねすることができます。
4資産均等型を実践するには、この投資信託だけで十分だと思われますが、この商品は超人気というわけではありません。信託報酬などのコストがやや高いことから、投資家の満足度が低い可能性があります。
ちなみにオルカンの信託報酬が年率で税込0.05775%以内なのに対し、「eMAXISバランス(4資産均等型)」は同0.55%以内(いずれも2025年7月18日現在)と、10倍近く高いです。

この点が気になるのであれば、自分で4資産均等投資をするのも一手です。
つまり、日本株式・外国株式・日本債券・外国債券と4種の資産に該当するETFや投資信託を買うことでコストを抑えつつ、GPIFと同様の4資産均等投資のポートフォリオをつくるのです。

基本的なアプローチとしては、株式と債券の比率を半々、円貨と外貨の比率を半々、日本と外国の比率を半々とするGPIFのアロケーション(資産配分)をまねします。
実際に投資するには、外国のETFを取り入れることで投資の自由度は大きく向上します。
証券会社で外国株式・ETFの取り扱い口座を開設し、外国通貨を用意する必要がありますが、そうした準備さえできれば、外国債券への投資として米ETFのナスダック上場「iシェアーズ・コア米国国債7-10年ETF(IEF)やNYSE Arca上場「iシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF(LQD)などをポートフォリオに入れることで、株式と債券の投資比率、円貨と外貨の投資比率、日本と外国の投資比率を、それぞれ調整できるようになります。

株式の割合は「100マイナス年齢(%)」が目安

株式と債券の比率については、GPIFが採用している半々の配分が基本となりますが、もし手間をかけることができるのであれば、年齢に応じて調整するのが望ましいです。
高齢者の場合、株式の下落リスクは債券に比べてとても大きいことから、株式を多く持つのは少々危険です。すでに述べたように、過去には大暴落時に株価が半値まで下落し、その後価格が回復するまで7〜8年かかったことがあります。これは年齢を重ねている人にとっては、間違いなく耐え難い状況です。
日本の株式市場を見ると、TOPIX(東証株価指数)が1989年につけた最高値を34年以上かけて更新したという事実もありますから、国別に投資をする場合は、ここまで回復に時間を要することもあり得ます。
一方、若い人の場合、もし株価が下落しても回復までの時間的余裕がありますから、結果としてリターンを得やすくなります。働くことで労働収入を長く得られる強みもあるので、より大きなリスクをとることができるはず。
こうした年齢差を考慮すると、年齢が進むにつれて徐々に株を売却して利益確定し、債券比率を増やすのが合理的なのです。

実際、30〜40代でリスク許容度の高い人は、株式の投資割合を80〜100%にしているケースが少なくありません。若いうちは働いて将来の収入や投資資金をさらに得られるため、現時点では投資のリスクをとって期待リターンを最大化したいということです。
この傾向をアセットアロケーションの戦略に活かすならば、「100−年齢(%)」を株式に割り当てる方法がおすすめです
例えば、30歳の人であれば「株式70:債券30」、25歳の人であれば「株式75:債券25」といった具合です。
このように、GPIFの「株式50:債券50」の戦略にこだわりすぎず、若さに応じて株式への配分を高めることで、長期的な投資成績を高めることも期待できます。
多くの人は「100−年齢(%)」の考え方で十分対応できるため、ぜひ実践を検討してみてください。

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宇根 尚秀(うね・なおひで)
1975年生まれ。インベストメントLab代表取締役。1998年東京大学工学部化学システム工学科卒業。2000年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。エクイティ部門デリバティブトレーディング部でアジア地区のトレーディングチームを率いる。2009年同マネージングディレクター就任。2015年200兆円超を運用する世界最大級の機関投資家、ゆうちょ銀行市場部門執行役員を経て、2016年同行市場部門戦略投資部執行役員部長として投資戦略改革に参画。運用企画・投資資産配分・人材採用を含む組織体制の整備に深く関与。2018年から同行市場部門常務執行役員・経営会議メンバーとして組織全体の経営・世界中のファンドの投資選定に関与。2019年JP インベストメント最高執行責任者(COO)兼務。早稲田大学ファイナンス学科修士課程(MBA)修了。人生の折り返し地点をすぎた2020年に残りの職業人生において自分の経験と知識を活かして社会課題解決に貢献するべく起業。現在ベンチャー投資をするベンチャーキャピタルと上場株に投資をする上場株ファンドを運営している。

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