本記事は、宇根 尚秀氏の著書『最後に勝つ投資術』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=takasu/stock.adobe.com)

儲かる投資法を見定める2つの視点

世の中に投資法は数多くありますが、その良し悪しを判断するには、次の2つのことを確認する必要があります。

① 収益がなぜ生まれるのか
② トラックレコード(運用実績)

「①収益がなぜ生まれるのか」を確認することは、投資法に「再現性」があるかを調べるのに役立ちます。まぐれ当たりではなく、同様の方法でリターンを積み重ねられるのかを確認しておくことが大切です。
さらに「②トラックレコード(運用実績)」を確認することで、過去の運用実績をもとに将来のリターンをある程度予測できるようになります。

では、この2つの観点から、「金融商品全部買い投資≒グローバル分散・パッシブ投資」について考えてみましょう。
①収益がなぜ生まれるのかについては、すでに説明しました。人口増加や技術革新によって世界経済の成長が起きると、その結果としてオルカン投資などからリターンを期待できます。世界経済の成長とグローバル分散・パッシブ投資のリターンには相関関係があり、投資収益に再現性があるといえそうです。

次に②トラックレコードについてです。実際の数値を図表で確認してみましょう。
このシミュレーションは金融庁が金融教育の資料として公開しているもので、誰でも理解しやすいように、シンプルに設計されています。
このシミュレーションが示しているのは、1985年以降、保有期間20年間(あるいは比較のために5年間)、その期間中に毎月同額ずつ、総額100万円分の国内外の株式・債券の買い付けをすると仮定したシミュレーションです。

保有期間20年間ということであれば、100万円÷(20年間×12か月)で、毎月4,200円ほどの積立投資になります。この毎月4,200円を、日本株式・外国株式・日本債券・外国債券に25%ずつひもづけた投資信託(パッシブ投資)にあてます。
保有期間20年間というのは、1985〜2005年の場合もあれば、2000〜2020年の場合もあるように、考えられるすべてのタイミングを考慮しています。
20年の保有期間が経過した時点で運用結果を見てみると、100万円の投資元本は最低でも178万円になっており、最高326万円になっていることがわかります。
20年の投資で投資の元手が1.8〜3.3倍になった計算で、どのタイミングから始めても投資元本を増やせています。

一方、投資期間を5年間で切ってしまった場合(途中解約した場合など)、総じて収益が上がっているものの、元本割れしてしまうケースも出ました。最も損をしたケースでは、100万円の投資元本が5年後に81万円にまで減っています。
この結果からすると、投資リターンを確実に得るには5年では不十分で、20年ほどの長期で投資を続けた場合、世界経済の成長の果実を確実に享受できるということになります。

最後に勝つ投資術
(画像=最後に勝つ投資術)

もちろん、この統計は過去のトラックレコード(運用実績)によるもので、今後も必ず長期投資が成功するとは断言できません。それでも、高い成功確率で長期グローバル分散投資がうまくいくとはいえるのです。

最後に勝つ投資術
宇根 尚秀(うね・なおひで)
1975年生まれ。インベストメントLab代表取締役。1998年東京大学工学部化学システム工学科卒業。2000年東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。エクイティ部門デリバティブトレーディング部でアジア地区のトレーディングチームを率いる。2009年同マネージングディレクター就任。2015年200兆円超を運用する世界最大級の機関投資家、ゆうちょ銀行市場部門執行役員を経て、2016年同行市場部門戦略投資部執行役員部長として投資戦略改革に参画。運用企画・投資資産配分・人材採用を含む組織体制の整備に深く関与。2018年から同行市場部門常務執行役員・経営会議メンバーとして組織全体の経営・世界中のファンドの投資選定に関与。2019年JP インベストメント最高執行責任者(COO)兼務。早稲田大学ファイナンス学科修士課程(MBA)修了。人生の折り返し地点をすぎた2020年に残りの職業人生において自分の経験と知識を活かして社会課題解決に貢献するべく起業。現在ベンチャー投資をするベンチャーキャピタルと上場株に投資をする上場株ファンドを運営している。

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