平素より野村雅道氏のID為替レポートをご利用いただき、誠にありがとうございます。 誠に勝手ながら、2025年10月27日をもちまして本レポートの配信を終了させていただくこととなりました。これまで長らくご愛読・ご利用いただき、心より御礼申し上げます。
総括
FX「ID為替最終号です、来し方行く末」
ドル円=150-155、ユーロ円=175-180、ユーロドル=1.14-1.19
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨8位(7位)、株価5位(8位)、円相場=2025年来し方行く末)」
(円相場=2025年来し方行く末)
今朝は米中貿易交渉進展のニュースが入っています
今年の円相場は1-4月は昨年7月の円買い介入の流れ、また貿易赤字の縮小で円高が続いていたが、5月から流れが変わり円安方向へ動いている。最も大きな要因は外貨投信の急増だ。5,6,7月と毎月4兆円を超える増加が続いた。8月は増加幅を縮小するも9月は再び増加している。一方、機関投資家の外貨投資は積極的でなく所得収支の黒字を相殺する程度のものだ。
今後も原油高動向によって揺れる貿易収支と外貨投信の流れが円相場の需給と方向性を決めるだろう。
(需給を知ることが大事、例=相場は仲値が決める)
需給を知ることが大事、例=相場は仲値が決める。これは常々言っていること、誇張されて居もしない投機筋を思うより実需を重視するのがID為替でした。
(円相場について高市新首相のブレーンの本田悦朗氏は)
安倍首相のブレーンであり高市早苗新首相のブレーンでもある元財務官僚の本田悦朗氏は日銀の利上げ時期に関して、今月の金融政策決定会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示した。一方で、今後経済状況が大きく悪化しない限り、現在の0.5%程度の政策金利を0.75%程度に引き上げても問題は生じないとみている。「マクロ経済環境によるが、今のような環境であれば0.25%上げても問題ない。仮に12月にやるとしても、米国は心配だが、そんなに混乱しなければ大丈夫だろう」と述べた。
昨年に出版された高市氏の著書「国力研究」で経済分野の執筆を担当した本田氏の発言は、積極的な財政政策と金融政策で経済成長を目指す高市氏の下でも、将来的な利上げは排除されないことを示唆している。それでも、市場が従来想定していた早期利上げは後ずれを余儀なくされそうだ。
「国力研究」で本田氏は「円安と国力は関係がない」と述べている。国力は構造的なもので為替レートはマーケットで日々動く。関連付けることがおかしいとし、国力が日々のマーケットで動くことはないとしている。国力の低下を示すのは「円安」でなくその根本原因であるデフレの継続であり、国内産業が空洞化し国力が低下すると述べている。
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)15位(16位)、2025年は低迷のドル」
(ドル相場の来し方行く末)
トランプ関税政策で米国の貿易赤字が縮小すればドル高になるとの見方はあったが、2025年のドルはここまで低迷している。関税政策による貿易赤字の縮小よりも、米国の政策の不確実性に焦点があたり、国際資金は米国一辺倒の投資から分散を始めている。ドル売り他通貨買いに繋がっている。株価では米国株もプラス圏は維持しているが、他国比上昇幅が小さいのは資金逃避が続いているのだろう。金価格の急騰もドルからの逃避を示している。貿易以外にも国内の政府閉鎖問題も不確実性を高めている。
関税政策では中国、カナダ、インド、ブラジルなどと難しい交渉が続いている。米株の下落などで米国の資金不足を解消するためのリパトリのドル買いは一時的にあっても、まだ不確実性が消滅するには時間がかかりドル低迷も続くだろう。
(ドルは強いの?)
今年は12通貨中10位、ニクソンショック後は4位、20世紀は4位、21世紀は6位。強いわけではない。貿易赤字を反映、ただ基軸通貨の強みでかさ上げ。
(米国格下げ)
欧州の格付け会社スコープ・レーティングは、米国財政の継続的な悪化とガバナンス水準の低下を理由に、米国ソブリン格付けを「AA」から「AA-」に引き下げるレポートを発表した。スコープ・レーティングは、米国財政の継続的な悪化は、主に高水準の財政赤字、利払いの増加、そして限られた予算の柔軟性に表れていると述べている。これらの要因が相まって、政府債務の継続的な増加を引き起こしている。レポートは、抜本的な改革が行われなければ、米国政府債務の対国内総生産(GDP)比率は2030年までに140%に上昇し、ほとんどの主権国家の水準をはるかに上回ると予測している。
*ユーロ「通貨3位(2位)、株価7位(6位)DAX)、米国の不確実性のお陰でユーロは上位維持」
(米国の不確実性のお陰)
2025年は米国の不確実性に起因する米国からの資金逃避でユーロ投資が増加しているようで、年初来ユーロは強く現在3位である。
(ユーロは成功ではないか)
ユーロ発足後26年、通貨が安定し、個別国の危機にも全体で対処(ギリシャ、フランスなど)しパニックに陥っていない。ただ南欧国が通貨の安定で成長が強まっていることに対し、かつての欧州の牽引車のドイツの低成長が目立つ。
(フランス格付け見通し「ネガティブ」に引き下げ)
ムーディーズは24日、フランスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。少数与党による弱体化した政府は予算案の成立に困難を抱えており、格付け見通し変更は財政赤字拡大に対する警告を強めるものとした。格付けは「Aa3」に据え置いた。
*ポンド「通貨5位(5位)、株価13位(12位)、前「基軸通貨」の弱さ引き摺る英ポンド」
(ポンド160年の弱い歴史、基軸通貨の来し方行く末)
ポンドは第二次大戦前は基軸通貨だった。現在の基軸通貨ドルと同様に弱い。ポンドは1860年代は米国の南北戦争での有事のポンド買いで一時1ポンド10ドルに近づくも現在は1ドル台。そのドルも対円で360円から一時75円、現在は152円。ポンドもドルも基軸通貨は弱い。基軸通貨の条件は国力が強いこと、購買力がある。経済的な発想力、独創力はあるが生産は他国に任せがちだ。それゆえに貿易赤字国となり
通貨が弱くなる。
(財政問題で騒いでいるが気のせいだ)
米英ともに財政赤字が問題となり、米国は政府閉鎖、英国は時に債券売りで市場が荒れる。ただ政府の累積債務率は日本の約240%と比べると米国が約半分、英国はそれ以下だが、市場の反応は、債務王国の日本と比べると騒々しい。数字では冷静になるべきだが、感情が先に立ち市場は時にしてパニックになる。それはそれぞれの国で債務の約束事がありそこを越えると市場がパニックになるだけで資金繰りは問題はないのだろう。日本は債務の上限ルールはないので債務が増え続けても冷静だ。利息を払えるうちは大丈夫だろう。
*豪ドル「通貨6位(6位)、株価16位(14位)、英国次第から中国次第へ)」
(英国次第から中国次第へ変わった経済)
豪やNZは1973年、英国の欧州共同体(EC、現在のEUの前身)加盟により、英国間の特恵関係が消滅し輸出市場の転換を迫られた。その結果、英国の輸出シェアが減少し、アジアなど他の地域への輸出拡大を進めることになった。英国への輸出シェアは、1960年代から1970年代にかけて半減以下になった。ただこの変化は、オセアニアがアジア諸国との経済関係を強化するきっかけとなった。
この輸出市場の転換と並行して、移民政策の緩和も進み非ヨーロッパからの移民増加を促すため、「同化政策」から「多文化共生政策」へと転換した。
2000年前後からの中国経済の拡大により、オセアニアはますます中国への経済依存度が高くなっている。今年のように中国経済が減速するとオセアニア経済も減速し通貨も株価も欧州通貨と比べると弱い。
(米豪、重要鉱物協定)
米国と豪はレアアース(希土類)および重要鉱物に関する協定に基づき、豪企業7社に対し総額22億ドル超の資金を提供する。両国が今後6カ月間にそれぞれ少なくとも10億ドルを採掘・加工プロジェクトに投資し、重要鉱物の最低価格を設定するとしている。
*NZドル「通貨9位(10位)、株価19位(19位)、今年は弱い豪の後塵を拝す」
(中国依存の経済)
NZも上述の豪と同様に、1973年の英のEC加盟により経済の中国依存度が進んでいる。ただNZは農業経済だけに景気に力強さはない。経済は中国に依存、軍事は米国に依存だ。
(移民政策の舵取りが難しい)
人口が533万人、国土は日本の本州程度でゆったりと暮らす。自然環境にも恵まれ世界からの移民人気は高い。特に2000年以降は中国移民が殺到し、経済は強くなったが、住宅価格は高騰、インフレも高まった。そこで政府は経済の過熱を抑えるために移民の条件を厳格化し、非居住者の土地購入を制限した。これで経済は逆に冷え込んでしまい、昨年あたりから移民流入の緩和、非居住者の投資ビザの緩和んに転換している。小規模の経済だけに移民政策の舵取りは難しい。