M&A市場でソフトバンクグループ(SBG)の存在感が際立っている。3月に1兆円近くで米国半導体設計企業、10月初めには8000億円超でスイス企業からロボット事業の買収を発表。それぞれ日本企業関連のM&Aで今年の金額2位、3位を占めるが、SBGは1兆円あるいはこれに迫る「メガ級」のM&Aを過去にも連発している。

ASI実現へメガ案件が相次ぐ

SBGは10月8日、スイス重電大手ABBのロボット事業を買収すると発表した。買収総額は53億7500万ドル(約8187億円)。2026年中の買収完了を見込む。SBGはAI(人工知能)を活用したロボット事業を成長領域の一つに位置付けており、その展開を加速する狙いだ。

ABBは産業用ロボットでファナック、安川電機、ドイツKUKAと並ぶ世界的大手。ロボット事業の2024年12月期売上高は約23億ドルで、ABBグループ全体の約7%を占める。

SBGは人間の知性を超える未来AI技術とされるASI(人工超知能)の実現を掲げる。構想実現に向けてAI半導体、AIロボット、AIデータセンター、電力の4分野で積極的な投資を進める方針を打ち出している。

今年3月には、65億ドル(約9730億円)を投じてAI向け半導体設計の米国アンペア・コンピューティングを買収すると発表。こちらもASI構想をにらんでの布石だ。

SBGは1月、米オープンAIや米オラクルなどと共同で、データセンターや発電施設などのAIインフラに4年間で最大5000億ドル(約78兆円)を投資する「スターゲート・プロジェクト」を立ち上げた。SBIが繰り出した一連の大型買収もこうした動きとも軌を一にする。

英アーム買収は歴代3位

日本企業関連で今年最も大きいM&Aはトヨタ自動車の源流企業である豊田自動織機をめぐる4.7兆円規模の買収・非公開化(6月に発表)。金額に開きはあるものの、これに続くのがSBGが手がける米アンペアとスイスABBからのロボット事業の買収だ。

豊田織機に対するトヨタグループのTOB(株式公開買い付け)は2026年2月にも始まる。豊田織機による自己株式取得(約1兆円)を含めた買収総額4.7兆円は国内企業がかかわるM&Aとして歴代2位。武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの6.2兆円買収(2018年発表)に次ぐ。

歴代3位はどこかというと、他ならぬSBGだ。2016年に英国半導体設計大手のアームを約3.3兆円買収した。JTが2007年に約2.18兆円を投じた英たばこ大手ギャラハーの買収を抜き、当時、日本企業のM&Aでトップに立った。

今年3月に買収を決めた米アンペアにはアームの設計力を補完する役割が期待されている。