本記事は、濱本 志帆氏の著書『リーダーの傾聴 なぜ、部下の不満に気づけないのか』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
不満を話してもらうために必要なこと
理解できない部下のことを、ただの「変わった人」ということにして、そこで止まってしまうことがあります。
言い訳ばかりで行動しない、協調性がない。このような部下を「ヘンな人だから(しょうがない)」ということにすれば、気は楽になります。
しかし、もし上司がそのような態度だったら、信頼関係は築けず、不満を話してもらうことも期待できません。
不満を話してもらうには、上司が部下から信用される必要があります。
部下は「自分のことを分かってくれている」と思える上司に信頼を寄せます。
部下のことを理解するためには、本人に話してもらわなければなりません。そして、話してもらうためには、部下のことを「自分ごと」として捉えようとする姿勢が不可欠です。
「なぜ自分には話してくれないのか」を考える
ある会社に、主体性を持って自分から行動しようとしない部下のことを「おれのせいじゃないぞ(本人の資質の問題)」という上司がいました。上司がこのような態度でいる限り、主体性を持った部下は育たないと思います。
また別の上司は、1on1ミーティングでなかなか思っていることを話してくれない部下に対して、「何でも話せる友達はいますか?」と聞きました。上司としても、「なぜ何も話してくれないのか」というもどかしさがあったようです。
けれども本来は、「なぜ自分には話してくれないのか」を上司自身が振り返ることのほうが、信頼関係につながったのではないでしょうか。
自分ごととして考える最初の一歩は、部下をフラットに知ろうとすることです。
理解できなくてもいいのです。まずは、「この人(部下)はそのように思っているのだな」とあなたは知った、それが部下に伝われば十分です。
「自分の考えていることを受け止めてくれた」と感じたら、部下の承認の欲求は一部でも満たされ、徐々に信頼につながっていきます。
下手(したて)に出て上手(うわて)を取る
問題行動を改めさせる必要に迫られた場面においては、上司は「〇〇しなさい」、「〇〇してはいけない」と言いたくなりますよね。
部下の気持ちに耳を傾ける余裕がなくなり、どうやって説得しようか、あるいは、いつもの屁理屈が出たらこう言おう、などとシミュレーションをするかもしれません。
しかし、部下の不満を聞くときに勝ち負けを競う必要はありません。いえ、部下の不満を聞き出すことができたら勝ち、とはいってもいいかもしれません。ある社長は、そのような場面では、「下手(したて)に出て上手(うわて)を取る」と言います。
屁理屈を論破しようとするよりも、きっと上司とは違う現状の捉え方をしている部下の考えを聞いてください。もしかしたら、自分でも困っているけれど言えずにいるのかもしれません。そのつじつまを合わせようとした結果、問題行動に至ってしまったのかもしれません。
営業職の経験者として入社したものの、半年以上過ぎても売上が伸びない社員がいました。本人の口から出るのは「マニュアルが悪い、システムが悪い」という言い訳ばかり。
しかし、「困っていることはない?」と声をかけて根気強く話を聞いてみると、そのシステムを習得する研修先で講師と衝突してから研修に参加しづらくなり、マニュアルやシステムそのものを否定するようになったのでした。
もし表面的な態度だけを取り上げていたら、「成果が出せない人に給料は払えない」と厳しい対応が検討されていたかもしれません。
上司が態度の裏にある事情を理解したことで、社員にも問題があったことを指摘し、また話すことができた社員自身も納得感からモチベーションを取り戻しました。
不満を聴くときは水掛け論になりやすい
困ったことになると負の感情に飲み込まれてしまうことがあります。
特に不満を聴く行為は相手の感情にフォーカスするので、言った・言わないの水掛け論や、売り言葉に買い言葉で引っ込みがつかなくなる場面に遭遇します。
「あぶない」と思ったら、上司としてのタスクを思い出してください。
会社組織は全員がそれぞれタスクを担っています。部下が違う動きをしているなら、軌道修正してあげなければ上司のタスクがこなせません。
回りまわって自分のためであるなら、「自分ごととして考える」を試してみていただきたいと思います。
職場でのパワハラ・セクハラや月100時間以上のサービス残業、労災隠し、不当解雇を経験したことから、「会社が労働者を大切にできるための支援」を志し、社会保険労務士資格を取得。
顧問業務を行いながら、会社と労働者のトラブル解決に携わる過程で、本来的に職場トラブルを防ぐ方法を考えるようになる。
その後大学院に進学し、組織心理学とトラブル発生のメカニズムを研究。MBAを取得。大学院での研究と実務経験から、問題行動の背景には処遇に対する社員の不満があり、その8割は「不満を聴く」ことで解消していることに気づく。
これを紛争解決に取り入れたところ、多くの困難事例を早期解決できるように。
現在は特定社労士の試験でグループ研修のグループリーダーを7期務める。
裁判になる前に職場トラブルを早期解決する実務家として15年の経験をもとに、特定社労士実務家の育成セミナーや、企業内ハラスメント研修、経営者向け研修など講師実績も多数。
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