ファンラーニングで「日本人の英語コンプレックス」をなくす──ゲーム・アニメ活用のAIアプリで英語教育を変えるミントフラッグ

AIとエンタメを融合した“ファンラーニング”で、日本の英語教育に革新をもたらすミントフラッグ。多くの日本人が抱える英語への苦手意識を払拭し、「楽しいから学ぶ」という新しい学習体験を提供している。学校で流行中のAI英語アプリ「マグナとふしぎの少女」は、小学生でも、ゲームやアニメを通して英検2級レベルの語彙習得を可能にし、注目を集めている。

東京学芸大学との共同研究や有力な個人投資家からの支援を追い風に、日本の英語教育の常識を覆えそうとしている同社の挑戦に迫った。

山中裕斗(やまなか ひろと)──代表取締役副社長COO
1978年、東京都生まれ。ソニー(現・ソニーグループ)経営企画部門にてキャリアをスタート。ソニー中国に赴任および北京大学EMBA修了。 2014年に楽天(現・楽天グループ)に参画し、副社長直下にてグループ戦略などをリード。孫泰蔵氏率いる社会課題解決を目指すVC・Mistletoeへ移籍し、教育スタートアップへの投資を担った。 2018年、ファンファンラーニングを設立し代表に就任。2023年7月、ミントフラッグと経営統合し現職。
ミントフラッグ株式会社
AIとエンタメを使った”ファンラーニング”で、英語教育のアップデートを目指すスタートアップ。学校で大流行のAI英語アプリ「マグナとふしぎの少女」とオンライン英会話事業を運営。ゲームやアニメを楽しみながら、小学生のうちから英検2級合格、数千単語の語彙を習得する「結果につながるファンラーニング」がメディアで注目。TBS、フジテレビなどでの特集多数。アプリユーザー数は24万を突破(2025年9月時点)。

企業サイト:https://mintflag.com/

目次

  1. ミントフラッグが挑む「英語コンプレックス」の克服
  2. 楽しいだけじゃない“ファンラーニング”の学習効果
  3. 仲間と共に切り拓く、教育の常識を変える道
  4. アプリと講師のハイブリッドで実現する継続学習
  5. 資金調達・IPO……世界展開を見据えた戦略

ミントフラッグが挑む「英語コンプレックス」の克服

── 最初に御社の強みや特徴、現況について教えてください。

山中氏(以下、敬称略) 最近、「マグナとふしぎの少女」という英語学習ゲームアプリについて、「学校で大流行の英語ゲームアプリ」という切り口でのメディア取材が続いています以前は『がっちりマンデー!!』(TBS系)で、2025年の8月には『ノンストップ!』(フジテレビ)やTBSの情報番組で取り上げていただきました。

日本人の9割が英語に苦手意識を持っていると言われています。私たちはほとんど全員が英語を勉強し、大学に進学すれば10年以上英語を学ぶわけですが、それでも9割が苦手に感じ、話せるようになる人は3%から4%程度と言われています。

英語の成績はよかったのに、会議で外国人と話すとなると避けてしまう。そんな経験のある方も多いかもしれません。これほど報われない学問があるでしょうか?

こんな日本人の英語コンプレックスを解消しよう、というのが私たちの挑戦です。そのために、AIとエンタメを融合したファンラーニングでほとんどの日本人が完璧でなくても意思疎通できる時代にしてしまおう、と。

それを実現するため、ファンラーニング型のアプリ開発とオンライン英会話スクールの運営を行っています。

楽しいだけじゃない“ファンラーニング”の学習効果

── 学校で流行ということですが、教材として使われているのでしょうか?

山中 小中学校、特に小学校で多く使われています。文部科学省の取り組みにより、小中学生は全員タブレット端末を持っていて、公立学校の端末で弊社のアプリが使えます。授業の冒頭にこのアプリを使う学校も多くあります。

「マグナとふしぎの少女」は、英語を発音して敵を倒すバトルゲームです。必殺技を使うときには英語が表示され、それをうまく発音するほど必殺技の威力が大きくなるため、子供たちは楽しみながら発音を頑張ります。

ミントフラッグ

もう一つの人気の秘密は、ゲームの途中に流れる約5分のアニメーションです。全70話以上あり、ドラマでいうと2クール分以上のボリュームです。

ミントフラッグ

また、バトルに勝つためにはキャラクターを集めてチームを作る必要があります。織田信長やマリー・アントワネットなど歴史上の人物をモチーフにしたキャラクターを集めて育成するためには、英単語を覚えたり、AI英会話で学習する必要があります。英語を勉強するとポイントがもらえ、それを使ってキャラクターを集めたり育てたりします。学校で友達と、家で家族と、対戦バトルができるため、「友達に負けたくない」という気持ちが英語学習へのモチベーションをさらに高めるわけです。

「ファンラーニング」と言うと多くの方は「単なる遊びでしょ?」そんな風に思われると思うんです。

でも違うんです。英語学習ガチ層も満足頂ける学習コンテンツを揃えています。ゲーム内で3000語以上の単語(英検2級相当)と日常会話に頻出と言われる中学文法の1800以上のフレーズを学べるようになっていて、小学生でも英検2級合格者などが続々とでています。

ついつい、お遊びアプリと思われがちなのですが、私たちのプロダクト・コンセプトは「結果につながる、ファンラーニング」。

既存の英語サービスは、どれも「何単語覚えられる」「AI英会話のロールプレイが何シーンできる」そんな機能競争ばかり。けれどそういったサービスを続けられるのは、既に英語にやる気のある人だけなんです。

「やる気になって、英語力もつく」そんなサービスが最強だと思いませんか?

これであれば大半の日本人の英語コンプレックスを解消することができるし、新たな大きな市場も作れ、ビジネスとしても大きなチャンスがあると思っています。

ミントフラッグ
ミントフラッグ

── 小学校が中心になりますか?

山中 はい。学校端末を家に持ち帰ることができる自治体では、家庭でも積極的にマグナの利用を推進しています。また、持ち帰りができない場合でも、学校で進めた学習内容は自宅のスマートフォンやタブレットに引き継ぎ、連携して学習を続けられます。

── オンラインスクールとアプリは、利用者数や売り上げではどちらが中心ですか?

山中 利用者数でいうと、アプリが圧倒的に多いです。テレビの影響もあり、アプリの利用者数はどんどん伸びており、現在約24万ユーザーです。

仲間と共に切り拓く、教育の常識を変える道

── 苦手意識の強い英語を好きになってもらうのは、大変な道のりのように感じます。

山中 私たちが戦っているのは、実は「学び」に対する人々の認識を変えることです。

日本人は勉強に対して、“苦行”というイメージを強く持っているのではないでしょうか。「頑張らなければいけない」「辛くても勉強だから仕方ない」という意識が根強い。

私たちはこの認識を覆そうとしています。勉強が得意な人たちや、恵まれた環境の方だけが、英語を話せればよいのであれば、従来の英語学習を頑張り、留学するといった方法を提供するだけでよいでしょう。

しかしそんな人たちは一握りですよね。多くの方たちは、英語学習にそこまでの意欲はありませんし、資金的にも限られています。私たちは、すべての日本人が、発音も文法も完璧じゃなくていい、けれど堂々と臆することなく話せるようになることを目指しています。そのためには、従来の真面目なやり方だけでは不十分です。そこで提唱しているのが“ファンラーニング”という新しい学び方です。はじめは英語自体に意欲がなくてもOK。最初はゲームの楽しさから入り、続けるうちに英語力の成長する楽しさに気づき、夢中になって学んでいくというものです。

特徴としては、「遊んでいるうちに英語ガチ層も満足の学習内容も学べてしまう」点にあります。冒頭にお伝えした英検2級相当の単語学習、日常会話に必須と言われる中学の文法が学べる1,800のフレーズに加え、AI英会話などです。

一般的なAI英会話は、英語だけで話そうとすると話題がなくて続けられないと言われるのですが、マグナのAI英会話は、日英ちゃんぽんでの会話も可能な初中級者向けから、英語オンリーでのディスカッションが楽しめる上級者向けまであらゆるレベルの方に楽しめるようになっています。

ミントフラッグ

これらは教員養成の名門校である東京学芸大学の高山芳樹教授・木村守教授と共にと2018年〜共同研究を行い作り込んできました。開発には何年も掛かりましたが、「ファンラーニングというと遊びでしょ?」という人々の認知を変えるには、学習結果がきちんと出るぞ、ということを示す必要があると思ったんです。

また、官庁・公的機関のサイトやプログラムでも紹介してもらっています。たとえば経済産業省の「未来の教室」、文部科学省の「たのしくまなび隊」などです。

共同研究パートナーである東京学芸大学の先生方や株主の方々など、多くの仲間が支えてくれています。創業から成長に至るストーリーは、この株主の方々なしには語れません。

最初に支援してくださったのは、ガンホーの創業者である孫泰蔵さん。続いて、楽天の共同創業者である杉原章郎さん、そしてビズリーチの最初のエンベスターを務め日本で最も成功しているエンジェル投資家と言われる島田享さんなどビジネス界の錚々たる方々が応援してくれています。

また、教育インフルエンサーである竹村詠美さんや、文部科学省の中長期の日本の教育政策を議論する中央教育審議会委員の熊平美香さん、大学教授など、教育界からも多くの方々が「マグナのようなファンラーニングが日本の英語教育を変える。壮大なチャレンジだが、実現できたら大変面白い」と応援してくれています。そうした方々がマグナのアプリ導入候補先となる学校を紹介くださったりもしています。

弊社のウェブサイトには、多くの投資家のお名前と写真が掲載されています。これほど多くの個人投資家の方々が顔を出している会社は、あまりないのではないでしょうか。我々にとって投資家の方たちは、ファンラーニングを一緒に広めていく仲間です。さまざまな業界、立場の方々が日本の英語教育に課題意識を持ち、変えようと動いて下さっていることが見て頂けると思います。

アプリと講師のハイブリッドで実現する継続学習

── サービスを今後さらに拡大していくうえで考えていることや、それ以外にも最近の関心事などがあれば教えてください。

山中 繰り返しになりますが、私が最も注力していることは、日本人の9割が抱える英語への苦手意識を克服することです。英語は誰もが勉強するのに9割が苦手で、話せる人は数パーセントしかいない状況を、ファンラーニングを使ってどうゲームチェンジするか、です。

私たちの基盤となるサービスはアプリです。オンラインスクールも、このアプリを使って日々英語を学ぶものです。

週に1回のオンラインレッスンと毎日の学習はマグナのアプリで行う、ハイブリッド型のサービスです。

英語に限らず、ピアノなども週1回レッスンを受けるだけでは、上達しないですよね。大切なのは、毎日こつこつ練習することですが、英語学習はそれが難しく、ほとんどの人が続けられないんです。その点、弊社のアプリはゲームなので楽しく、毎日こつこつ自然と続けられるんです。

とはいえ、マグナのアプリといえど、一人で何ヵ月もずっと続けるのは大変なので、週に1回講師と話す機会を設けています。講師から「上達しているね、次はこれをやってみようか」「アプリもこんなに進んだんだ、すごいね」と褒められたり、提案を受けたりすることで、さらにモチベーションが上がる。このように、人とアプリを組み合わせたハイブリッドサービスを提供しているのが弊社の特徴です。考え方として一貫しているのは、“ファンラーニング”です。強制されて英語を学ぶのではなく、楽しいから自ら学んでいくことです。

さらに、学校で友達と、家で家族と、一緒に学ぶアプリとして、その独自性が際立ってきています。この独自性をさらに研ぎ澄ませることが重要だと考えています。

たくさんの方にアプリを無料で使ってもらい、まずは“ファンラーニング”を体験してもらう。楽しいから英語を学ぶという体験を通じて、もっと学びたいと感じたら、オンラインスクールを利用してもらいたいですね。そして今後は、もっとアプリで学びたいという方が、課金頂くと利用できる特別な学習コンテンツなども準備を進めていますので楽しみにしていてください。

── これだけ色々なことができるアプリが今は無料なのですね。驚きました。

山中 そのとおりです。そして子供だけでなく、大人も利用できます。特に親世代の方の利用が多いです。子供がアプリで遊んでいるのを見て、「私もこれならできそうかも」と感じられるのでしょう。また、親子で一緒に利用すると効果が高いです。アニメやゲームを親子で一緒に楽しむことで共通の話題ができますからね。

このように、家族や友達と「誰かと一緒にやる」という点が、学習継続の大きな力になります。家庭のみならず、学校でも、授業だけでなく、友達と切磋琢磨する要素が加わることで、学習が続けやすくなるわけです。

資金調達・IPO……世界展開を見据えた戦略

── これから新しい事業を開始する構想や、既存事業をさらに拡大するための経営戦略、またIPOやM&Aといった資本戦略について教えてください。

山中 現在、アプリのユーザーが月数万単位で増えており、まさに急成長です。ユーザーを一気に伸ばしていこうと考えています。これまでは個人投資家の方々を中心に資金調達を行ってきましたが、いよいよスケールフェーズに入ったため、今後は事業会社やVCからの資金調達を進める予定です。その第一弾として、VCからはみずほキャピタルさん、SMBCベンチャーズさんがご出資くださいました。

私たちのテーマは「学校で友達と、家で家族と、一緒に学ぶアプリ」です。そのため、ファミリービジネスを展開されている事業会社や、学校と深い関係を持つ事業会社と、パートナーシップを組んでいきたいと考えています。場合によっては資本提携も含めての連携も考えたいです。将来的にはIPOを目指しています。

── 現在英語のみのサービスですが、今後、中国語など多言語での展開も視野に入れていますか?

山中 多言語展開は十分にありえます。また、日本のコンテンツは海外でたいへん人気がありますので、外国人が日本語を学ぶというパターンにも応用できます。そのような海外展開、国際戦略も見据えています。

私たちはファンラーニングを通じて、日本の英語教育をゲームチェンジしようとしているチームです。将来的には世界にも挑戦していきたいと考えています。この私たちのチャレンジ、挑戦に共感いただける事業会社様や個人投資家の方、あるいは「このアプリを使ってみたい」と感じてくださる方は、ぜひ一度手に取っていただき、一緒に、日本の英語教育、そして世界の言語教育を、面白いものに変えていきましょう。

氏名
山中裕斗(やまなか ひろと)
社名
ミントフラッグ株式会社
役職
代表取締役副社長COO

関連記事