本記事は、中野 晴啓氏の著書『貯め方・使い方の不安がスッと消える! 女子が自分らしく生きるためのお金計画』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています。
購入後に届く資料の見方がわかりません
(女性)投資信託を買うと、定期的に資料が送られてきますよね。
(中野)投資家に交付することが義務づけられている「運用報告書」のことですね。
(女性)でも中身を見ても、正直よくわかりません。どこを見ればいいのでしょうか?
(中野)書いてある内容は、一般の人には難しい場合も多いですからね。まずは運用報告書がどういうものなのかを説明していきます。
運用の結果を伝える資料の種類
どの投資信託にも、「運用報告書」という開示資料が毎年公表されます。これは、その投資信託がどのように運用されて、どのような結果が出たのかなどを投資家に伝えるためのものです。
2014年12月の決算以降は、運用報告書が2種類に分かれました。1つは「交付運用報告書」、もう1つは「運用報告書(全体版)」です。このうち、交付運用報告書に重要なポイントが記載されています。これは、証券会社や銀行などの販売会社を通して投資家に郵送やWebによって開示されます。
運用報告書(全体版)も、投資家に交付することになっています。以前は紙媒体で届いたのですが、今はデジタル化されているケースがほとんどです。ネット上で確認するためには、基本的に事前の申し込みが必要になります。何か通知することがあればメールなどでお知らせが届くので、見逃すこともありません。デジタルのほうがメリットが大きい、と感じる人も増えていますね。
交付運用報告書の伝え方をチェック
交付運用報告書は法的に定められた資料なので、どうしても形式的で表現もかたくなる傾向にあります。専門家が書くので、難しい言葉も使われますから、一般的な投資家でも簡単に読み解けない場合もあります。
また、記載事項に決まりがあるので、交付する運用会社による違いが出にくく、正直つまらないと感じることもあるでしょう。
もちろん、工夫すれば読んでいる人が興味を持つような運用報告書になりますが、実際に書くとなると手間や時間がかかります。そのため、とりあえず決められたことを書いておこうという、最低限のことだけを機械的に書いた報告書になりがちです。
そのような性質がある交付運用報告書でも、中には書いている人の思いや投資家に対する優しさが伝わるようなものもあります。例えば、基準価額の推移や費用などを数字だけでなく、一般の投資家にもわかりやすい言葉を選んで丁寧に書いていたり、文章に温かみがあったりする運用報告書です。機械的に書かれているのではなく、人間味が出ているならば、それは書き手の努力と投資家への思いやりがあるからです。そのような運用会社は、投資家を大事にしている姿勢があると判断できます。
アクティブファンドは運用者の思いが重要
「アクティブファンド」は、運用者によって内容に個性が出てくる投資信託です。だからこそ、報告書の伝え方に着目する必要があります。アクティブファンドを買うとなれば、どのくらいのパフォーマンスが出ているのかが気になるものですが、数字だけで判断してはいけません。「運用者がどのような考えで運用しているのか」にも、きちんと着目しましょう。
しかし、先ほど説明した通り、テンプレートに即した数字ばかりの運用報告書が多いのは事実です。その中でも、運用者の熱意や個性が伝わってくるアクティブファンドに出会えたら、購入の判断基準の1つになると思ってください。
運用報告書の時間軸、今を気にしすぎない姿勢も大事
ここまで、運用報告書の読み方について解説してきましたが、一番大切なのは、報告書の内容に左右されすぎず、自分の信念を貫くことです。例えば「これから20年投資を続ける」と決めたなら、たとえ運用報告書の内容がネガティブでも「これは今の話」と思って気にする必要はありません。
運用報告書では、その時点の状況や結果が書かれます。それは皆さんが目標にしている将来の成果とはまた別の話です。もし記載された運用結果が思わしくないとしても、長期的に見る必要があります。そのために必要なのが、運用者自身が結果に対してどう考えていて、今後の運用をどうしたいのかを見極めることです。短期の動きに一喜一憂せず、自分の信念に基づいて運用報告書にある運用者の「思い」や「熱意」を読み取ってみてください。
また、各投資信託は月次で運用レポートを公開しています。こちらの内容は自由度が高く、運用会社や運用者の性格や哲学・理念なども受け止めやすいでしょう。月次レポートで、顧客への誠実さを見極めてみましょう。
1987年、明治大学商学部卒業。旧セゾングループ内投資顧問会社にて外債ポートフォリオを中心に資産運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立、2023年6月に代表を退任。同年9月なかのアセットマネジメント株式会社を設立、2024年4月にアクティブ運用の長期投資ファンド「なかの日本成長ファンド」「なかの世界成長ファンド」の2本の運用をスタートさせた。全国各地で講演やセミナーを行い、長期投資の普及に尽力するとともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。 公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
- どれくらいの知識があれば投資を始めていいのでしょうか?
- 収入が低くて投資資金が作りにくい…いくらから挑戦できるのでしょうか?
- 投資信託購入後に届く資料の見方がわかりません…
- 投資信託を買うタイミングはいつがベスト?
