株式会社 P・C・Gテクニカ

創業60年を迎える配管更生工事のトップランナー・株式会社P・C・Gテクニカ。2024年1月に二代目社長に就任した藤井要氏は、独自開発の「FRPライニング工法」を軸に、マンション・ビルの排水管問題を解決し、持続可能な社会に貢献している。

美容事業から始まった意外な創業秘話から、売り上げ高30億円に迫るまでの成長の軌跡、そして未来を見据えた経営戦略まで、その深層に迫った。

藤井要(ふじい かなめ)──代表取締役社長
1977年、愛知県生まれ。23歳で家業に入社し東京営業所所長に就任。2024年1月、創業者である父から事業を継承し代表取締役に就任。2代目として、独自開発の『FRPライニング工法』をはじめとする革新的な排水管更生技術の普及と代理店拡大に取り組んでいる。
株式会社P・C・Gテクニカ
1964(昭和39)年3月24日創業の配管更生工事専門企業。創業60年を迎える"配管更生のトップランナー"として、マンション・ビルの排水管更生事業を全国展開。独自開発の12の特許工法を保有し、特に「FRPライニング工法」は配管を取り替えずに内側から再生する革新技術。居住者負担を大幅軽減し、廃棄物とCO2削減を実現する環境配慮型工法でSDGs目標達成に貢献している。
企業サイト:https://www.pcgtexas.co.jp/

目次

  1. 美容事業から始まった配管更生への道
  2. 危機を乗り越え、成長をリードした若き日の挑戦
  3. 独自の工法がもたらす圧倒的な優位性
  4. 2027年末までには50億円の達成を
  5. 揺るぎない財務基盤とM&Aの難しさ

美容事業から始まった配管更生への道

── 創業当初はエステ事業だったとか。

藤井氏(以下、敬称略) はい。当社の創業は1964年、私の父と母が始めました。最初の事業は、現在の建設業とはまったく異なり、美容のエステでした。山野愛子さんのドロンコ美容などが最初の事業です。

なぜ現在の仕事に変わったかというと、ドロンコ美容で石膏などを使っていたため、毎日排水として配管に流しているとパイプが詰まることがあり、業者を呼んでつまりを解消してもらうと、大がかりな作業ではないにもかかわらず、お客様として非常に助けられたと感じたからだそうです。「こんなにお客様に感謝されてお金をいただける仕事は、自分でやったほうが良いのでは」という発想から、美容事業を閉め、配管メンテナンスの仕事へと転換しました。

当時は、つまりを抜くといった配管のメンテナンスが主な業務でした。その後、単につまりを抜くだけでなく、お客様から「長年使っている配管が劣化していくのをどうにかできないか」という相談が増えました。

最も簡単な方法は、古いものを撤去して新しいものにつなぐ「取り替え」ですが、それでは他の会社と同じです。当社ならではの独自性や新しいものを追求する中で、今使っているパイプの中をクリーニングし、その内面を塗装する「ライニング」という技術があることを知りました。

創業者の父は人と同じことを好まない性格でしたので、原理原則は理解したうえで、自社で一から開発できないかと考えました。そうして、P・C・Gテクニカ独自のライニング技術を開発したのです。

ライニングを始めてから50年以上が経ちますが、私が子供のころから見ていた当社の規模は、年商3億円から良い時で5億円程度でした。良い技術を持っていることは感じていましたが、新しいものを開発することは得意でも、いわゆる「商売人」としてはあまり積極的ではなかったかもしれません。

市場で困っていることに対し、「これをやったらきっと良いのではないか」という新しい技術の開発は得意でしたが、それを事業として大きく展開することには、なかなか手が回っていませんでした。

危機を乗り越え、成長をリードした若き日の挑戦

── 家業に入社した経緯を教えてください。

藤井 いずれは父の会社に入ろうという気持ちはありましたが、大学卒業後は一度他の会社で5年ほど働いてから入社しようと考えていました。

しかし、大学3年生で就職活動を始めるころ、会社が一番苦しい時期を迎えていました。家族経営でしたので、家族会議が開かれ、「会社をたたむかたたまないか考えているが、お前はどうしたいか」という話がありました。将来働こうと思っていた会社がなくなるのは困ると思い、続けてほしいと伝えました。それが、私が入社するきっかけとなりました。

大学4年生の2月、試験が終わるとすぐに会社に入り、仕事を始めました。本社は愛知県名古屋市ですが、当時東京にも事務所がありました。私が大学に入ったころは十数人いた東京の事業所も、卒業するころには残り2人になり、その2人も退職する流れでした。さらに、東京の営業所をなくすかどうかの検討もされていましたが、「できれば東京にいたい」という私の希望で、東京の事業所を残してもらうことになりました。

大学4年の2月から働き始め、8月までの半年間は、OJTで営業や工事に同行し、その後は一人で東京に戻りました。最初の仕事は、退職した2人の机やコピー機など、事務所にあったものを引っ越しすることでした。レンタカーでトラックを借り、住んでいたマンションに机などを4セットほど運び入れ、一人事務所としてスタートしました。

それから4、5年は東京で一人で営業をして工事を受注し、東京には当社の従業員がいなかったので、協力業者さんや職人さんを集め、私が受注した工事の監督も自分で行っていました。創業に近いことを経験できたことが、今の自分につながっていると思います。

13年後の2013年には東京の事業所も10人以上になり、現在は首都圏本部という名称になっていますが、2023年12月までは私がそこの責任者でした。

また、5年前には阪神に事業所がなかったため、その立ち上げも私が担当しました。阪神の営業所の責任者というわけではなく、事務所の選定、営業活動、人材採用など、事業所の基盤づくりを行いました。

現在、P・C・Gテクニカ単体での売り上げは29億円に達しています。私が20代のころは3億円から5億円程度を推移していましたが、30歳を超えたころから売り上げが伸び始めました。

これは、創業者の父が技術開発を行い、私がそれを市場に投入するための営業活動に注力した結果です。新しい技術は、特に大手企業ほど実績がないと採用してくれません。そのため、30代前半までは私自身が営業として実績づくりに奔走しました。

その営業努力と実績が実を結び、今ではお客様に工事をお待ちいただくほどの状況になりました。お客様は、当社の実績を知っている建物やエリア、あるいは管理会社が管理している物件の近くでの実績を見て、「あそこでやっているなら問題ないだろう」と判断してくださいます。もはや、昔のように興味があるかどうか分からない方に積極的に開拓営業をするのではなく、基本的にお問い合わせいただいたものに対応するレベルにまで来ています。

今後、さらに事業を伸ばしていくためには、自社の従業員の採用・育成はもちろん重要ですが、協力業者さんにも成長してもらわなければなりません。主力工事は当社で手配できますが、建設の内装や配管の付帯工事は、建設業界全体が縮小傾向にあるため、協力業者の伸び悩みが課題です。

そのため、新しい代理店を開拓するだけでなく、将来的には自社でこうした付帯工事も手掛けていく必要があると考えています。ここ数年はM&Aも検討していますが、まだうまくいっていません。グループ全体で内装工事の職人も採用・育成し、成長させていく動きを始めたところです。

── 以前、藤井社長が一人で5億円弱の売り上げを達成したという記事がありましたが、その状況について教えてください。

藤井 それは私が営業の最前線から退く最後の年のことです。年始めに各部署の数字の割り振りをするのですが、その年の目標達成には4億5000万円ほど足りませんでした。営業部長も誰も手を挙げなかったので、「私がやります」と宣言しました。最終的に、私が4億5000万円を売り上げ、20億円という壁を突破しました。その後は、私はまったく営業をしていません。会社全体で「20億円を切ってはいけない」という雰囲気ができたため、私が営業する必要もなく、順調に伸びてきています。

独自の工法がもたらす圧倒的な優位性

── 事業の特徴や強みについて教えてください。

藤井 当社のサービス、つまり工事手法は、建物の給排水管の更生工事です。リニューアルの中で一般的なのは、古いものを撤去して新しいパイプに取り替える「取り換え更新工事」です。

お客様には、時間と資金に余裕があるのであれば、取り替えたほうが良いとお伝えしていますが、実際にはマンションは人が暮らしており、ビルは商業施設やテナントビルとして使われている中で、限られた時間で改修を進めなければなりません。

そこで当社が行っているのが、古くなった配管の内部に新しいパイプを形成する「更生工事」や「ライニング」と呼ばれる技術です。

築20年、30年と経つ建物は、建物自体の改修も必要ですが、給水管や排水管の改修も不可欠です。配管の内部に錆やスケールと呼ばれるものが付着し、ひどい場合には穴が開いてしまうこともあります。そうした配管を、まず錆こぶを除去してクリーニングします。クリーニングだけでは劣化は進んでしまうため、その内部にもう一本新しいパイプを作るのが、ライニングや更生工事です。

── どういったメリットがあるのですか?

藤井 取り換え工事と比較して、内装の解体・復旧が限りなく少なく済むことです。

マンションの例で言えば、取り換え工事では、1つの部屋の配管は上下階すべてつながっています。配管は壁や床下、天井などに隠蔽されているため、取り換えようとすると、まずそこを解体して配管が見える状態にしなければなりません。古い配管を撤去し、新しいものにつなぎ直し、さらに内装工事を元に戻すため、非常に時間がかかり、費用もかさみます。マンションの1部屋あたり、5日間ほどかかるのが一般的です。

当社のライニング手法であれば、構造にもよりますが、長くても2日間ほどで工事が完了します。

取り換え工事の場合、同じ日に工事を行う上下階の住民全員が5日間合わせて休みを取り、工事に立ち会う必要があります。しかし、ライニングであれば2日間で済むため、住民の方々も調整してくださいます。このような時間的なメリットと、調整の煩わしさがないというメリットで、現在多くの仕事を受注できています。

2027年末までには50億円の達成を

── 営業エリアは三大都市圏がメインでしょうか。

藤井 はい。福岡などの大都市圏以外では、当社のライニング技術を導入していただいた代理店を紹介しています。水回りのことなので、工事後に何か問題があった際に、やはり地元の工事会社が対応できる体制が重要です。北海道でも沖縄でも出張して工事はできますが、アフターケアを考えると、地元に根ざした会社のほうがいい。

── これまでの実績で、特に大きな転機となった出来事があれば教えてください。

藤井 現在、毎年どこかのエリアで大型物件が入っており、工事が1年以上になるような千世帯規模の物件も安定して受注できています。

昔のニュータウン構想で各地にできたような団地で、初期のころは100世帯規模のマンションで実績を積んでいましたが、今は規模が大きくなっています。

たとえば、今年は年内いっぱいかけて川崎の団地で947世帯の工事を行っています。以前は団地のような大型物件は、大手企業による取り換え工事が主で、当社のような中小企業は受注できませんでした。

しかし、年々大型物件の実績が増え、今では千世帯規模の物件も「前にこれくらいの規模のところで実績があるのか」と聞かれ、「ここでやっていますよ」と話せるようになり、大型物件も受注できるようになりました。

── 会社経営で一番難しかったことは何ですか?

藤井 今もそうですが、やはり人のことです。思い通りにはなりませんからね。ただ、私は会社をたたむかどうかの瀬戸際からスタートしているので、振り返ってみても、良くなることはあっても悪くなることはずっとないと言えます。

── 今後の経営や事業の展望について教えてください。

藤井 今までは実績づくりや営業受注の増加に注力し、私自身も多くの時間を使ってきました。もちろん、人材採用も並行して行いますが、今年から力を入れているのが技術開発です。

当社はもともと技術が優れているという自負がありますが、今の技術がゴールではありません。そこで、他社を定年退職された方から、今年は技術系の専門家を2人採用しました。

工事にはエラーや不具合がつきものですが、今までは現場の人間が「きっとこれが原因だろう」と済ませてしまうことが多かったのです。それを細かく検証し、技術的な裏付けを取り、今後の改善ポイントを探るために、技術系の人材を増強しています。

また、最近、総務部に部長代理職として新しい人材が入社しました。DX推進もそうですが、バックオフィスの平準化にも力を入れていきます。各事業所でバラバラになっている業務を統一し、将来的にM&Aで会社を買収した際にも、総務経理部門は本社で一元的に扱えるよう、今から準備を始めています。M&A後すぐにすべてを統一することはできませんが、基本的な業務フローを確立しておくことが重要だと考えています。

── 5ヵ年計画を立てて、5年後に売り上げ50億円を目指すそうですが、進捗はいかがですか?

藤井 今年の12月の着地は32億円前後になる見込みです。これまでの2年間は114%の成長を遂げていましたが、今年は111%程度の成長になるでしょう。予定通りに進めば、再来年には50億円を達成できると考えています。そのためにも、先ほどお話しした技術的な課題に資金と時間を投入し、2026年、2027年には50億円を達成できるよう、今取り組んでいます。

この5ヵ年計画は、社長になってから始めたわけではなく、もう8、9年前から行っているので、とっくに50億円になっていなければならなかったのですが、今は営業と工事が自走できるようになり、私が細かく口出しする必要がなくなりました。ただ、どのような人材が不足しているかという情報は私が吸い上げ、教育方法の調整などを行っています。2027年末までには50億円を達成したいと考えています。

揺るぎない財務基盤とM&Aの難しさ

── M&Aは積極的に進めるとのことですが、今後の資金調達の計画はありますか?

藤井 資金調達については、当社は過去5年ほど、金融機関から「貸したい」と言われる相手なので、必要ないにもかかわらず、運転資金として積極的に融資していただいています。

私が就任する前から7年ほどかけて、金融機関との交渉で変動金利から固定金利への変更や、より有利な条件での借り換えを進めてきました。金融機関が融資を提案してきた際も、固定金利でいくらになるのかを提示してもらい、相場を見てこれ以下なら借りよう、そうでなければ不要だと判断しています。基本的には5年以上の固定金利で、ほぼ無担保で借り入れています。

また、両親が設定していた不動産の担保などもすべて外しました。担保がないと貸せないなら「要りません」と伝えています。金融機関は当社のBSやPL、事業内容、担当者の情報などに基づいて融資の判断をしているためです。

今年は、いずれ人が増えたときを見越して、会社の近くに3階建てのビルを1億4400万円ほどで購入しました。現金はありますが、金融機関に「借りてほしい」という思いがあるのなら、運転資金という名目で、何に使っても良いという条件であれば借りています。

東海地区はトヨタ自動車の関係もあり、長期金利が他の地域よりも安いという有利な面もあります。通常の会社であれば、この規模になると本社を東京に移すことを検討するかもしれませんが、当社は東海地区の金利を前提に経営しているので、愛知県内に本店がある金融機関と取引をしています。

会社経営の中で私が気にしているのは、PL上の現金や有価証券などの数字をなるべく厚くすることです。今後、東海地区で地震などの災害が起こり、何が起こるか分かりませんが、現金をしっかり持っていれば会社は潰れませんし、時間を稼げます。

── M&Aは具体的な案件まで進んでいますか?

藤井 この5年で10社ほどと会いました。当社が欲しいのは、買収先の企業が受けている仕事を減らし、当社のグループの仕事にシフトできるところです。

そうすると、今順調に回っている会社の従業員は反発するでしょう。ですから、本当は少し苦しいくらいか、赤字の会社の方が当社としてはありがたいのですが、M&Aの会社は赤字の会社の話は持ってきません。そのため、その辺りがうまく合致しないですね。

あと、中小企業で話をした10社ほどのうち3分の1は、後々賃金や残業問題で揉めるだろうという案件でした。その処理をしてくれないと先に進めません。たとえ「前オーナー時代の問題で、当社とは関係ない」と説明しても、今後の当社の成長の足を引っ張ってしまう可能性があります。そのため、良いなと思ったところがあっても慎重に考えています。

── 建設業にはさまざまな業界課題がありますが、今後の展望はいかがですか?

藤井 建設業はどこも人手不足だと言われていますが、新しい技術や独自性があれば、人材採用は可能です。自分のところにしかない独自性を磨くことが重要です。

また、中小企業だから採用がうまくいかないと言われますが、社長が自ら動き、若者に夢を語れば、彼らは興味を持ってくれます。まったく異なる業種で就職活動をしていた学生も、当社に目を向けてくれることがあります。

そのためには、経営者が人のことは任せっきりにするのではなく、自ら動くことが大切です。若い世代と話し、積極的に採用に取り組むことで、建設業のみならず、どの業界も良くなると私は信じています。

氏名
藤井要(ふじい かなめ)
社名
株式会社P・C・Gテクニカ
役職
代表取締役社長

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