創業23年、中古マンション買取再販事業を主力に年間約770戸を販売するリノベーション総合企業・株式会社エフステージ。仕入れから販売、ブランド構築まで一貫して内製化する「総合力」を強みとし、「ARISE」ブランドでデザイン性と「購入後の安心感」を追求。大手競合ひしめく首都圏市場で、リノベーションマンションを求める一次取得者層に焦点を当て、トップシェアを目指し、お客様が安心して選択できる住宅市場の実現に貢献している。
不動産価格が上がり続ける中でも、マイホームを欲する消費者は増えている。果たして今後、不動産市場はどうなっていくのか。同社を率いる代表取締役社長の藤島昌義氏に、市場について、そして同社のこれまでの戦略と、これからの展望について聞いた。
企業サイト:https://www.fstage.co.jp/
目次
仲介業者との連携を強化するブランド戦略
── 創業からこれまでを振り返り、ターニングポイントはありましたか?
藤島氏(以下、敬称略) 創業は2002年、今から23年前です。創業当初は東京都内を中心に中古マンションの仲介業を展開。2、3年で実績を積み、2006年に現在の主力事業である中古マンション買取再販事業へシフトしました。以降、社員数増加とともに年々売り上げを伸ばしています。2019年には、同業者向けのフランチャイズ事業「ワンリノネットワーク」を始め、現在の加盟店は約60社です。
最大のターニングポイントは、創業5年目に仲介業から買取再販事業へ切り替えたことです。これは会社の成長における大きな転換点でした。
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍など、さまざまな危機に直面。そのたび、社内で改善を図り、体力を強化して乗り越えてきたことが、次の成長につながっています。
── 大きな壁を乗り越え、今の課題は何ですか?
藤島 中古マンション仲介業に長く携わり、業界歴はたいへん長いため、おおよそ予測が可能、危機時には国のサポートや中小企業向け融資支援などを受けられました。さきほどの三つの危機は大きな壁でしたが、比較的早い段階、半年ほどで乗り越えることができました。
現在直面する壁は、拡大する中古マンション・リノベーション市場における激しい競争です。トップ10のほとんどが上場・大手企業の中、非上場である当社がこの規模で競い、負けないように事業を進めることが、今後の大きな課題です。
── 2023年のブランドコンセプト刷新は、そのためですか?
藤島 はい。ブランド作りは、中古マンションの買取再販において重要です。新築マンションでは野村不動産のプラウドや三菱地所レジデンスのザ・パークハウスのように、ブランドで販売するのが当たり前です。
しかし、中古マンションの買取再販は、1戸ずつリノベーションして販売するため、ブランド名を付けて販売する会社はほとんどありませんでした。
そこで、当社は差別化を図るため、10年以上前からこの戦略に取り組んでいます。物件を販売していただく仲介業者や、その先の最終顧客に、より分かりやすくコンセプトを伝え、「当社の物件はこういうコンセプトで、こういうブランド名でやっています」とアピールするためです。それがARISEです。このブランド戦略は十数年前から取り組んでいて、定期的にリニューアルしています。
── ブランドに力を入れている他社は少ないとのことでしたが、そこにいち早く取り組んだと。どのような気づきや理由があったのですか?
藤島 一般の方が中古マンションやリノベーションマンションを購入する際、ほとんどの場合、仲介会社に問い合わせをします。大手の三井のリハウスや東急リバブルなどです。当社が直接販売することはほとんどありませんでした。最近は当社も直接販売を行っていますが、徐々に増えてきたところです。
重要なのは、仲介会社の間で当社の認知度をどう上げるかです。仲介会社に「エフステージのリノベーションマンションはこういうものだ」と認知してもらうため、あえてブランド名を付けました。「当社は保証が充実しています」とか、「アフターサービスはこういった対応をしています」、内装の仕様は「こういったものです」ということを分かりやすく伝えるためにブランドを作ったのです。
── 仲介会社の理解度がそのまま競争優位性につながり、いかに紹介してくれるかが事業に直結するというわけですね。
藤島 そのとおりです。他の会社がブランドを持たない中で、仲介会社がお客様に説明するにあたって、「このマンションは『ARISE』というブランド名が付いていて、この会社のリノベーションマンションは保証が充実している」とか、「物件ごとに仕様を変えるのではなく、しっかりコンセプトを持ったデザインや仕様になっている」と伝えやすいのです。それが当社の販売促進につながる差別化のポイントです。
内製化による「総合力」と首都圏市場でのマーケティング戦略
── 自社の経営戦略とその優位性についてさらに詳しく教えてください。
藤島 買取再販事業の多くの会社は、中古マンションを仕入れてリノベーションし、販売する流れの中で、リノベーションを外注することがほとんどです。もともと不動産会社が多い業界なので、施工の専門知識を持つ企業は多くありません。業界では、仕入れに特化している会社がほとんどです。
その中で当社の強みは、リノベーションも内製化していることです。内装工事も自社で行い、販売ブランドも構築しています。当社では「総合力」と表現しておりますが、仕入れから企画、施工、販売、そしてブランド作りまで、一貫して強化管理している点が当社の強みだと考えております。
── なぜ他社にはできず、御社にはできるのですか?
藤島 内装を自社で行うとなると、それなりの内装人員を揃える必要があり、コストがかかるからです。外注と内製化のどちらが良いかといえば、一般的には外注したほうが人件費も抑えられます。
しかし、ブランド作りや品質にこだわると、外注では限界があります。そのため、あえてコストがかかっても良いものを作りたい、しっかりと確立させたいという思いから、当社はあえてコストやリスクを伴う内製化をし、人員を増やしてきました。
一般的には、人員を増やすことや、もともと不動産会社が多い業界なので、得意分野以外の人員を増やすことを嫌う会社は多いです。同じ工務店とがっちり連携して行えば安定はしますが、さまざまな会社を使うと、やはり品質がばらつくことがあります。
それをリスクととらえるのではなく、差別化の強みとしていこうというところが、当社の取り組みです。
── 今後どのように顧客を増やしていく戦略ですか?
藤島 事業をどのくらいの規模で展開していくかによって、マーケティング戦略は変わってきます。当社は直近で年間約770戸を販売しており、売上高は336億円を超えています。この規模になると、全国展開をする会社が多いです。
東京はすごく競争が激しく、多くの競合がいます。購入者もたくさんいますが、その中で件数や売り上げを伸ばすのはなかなか難しいです。そのため、リスク分散として大阪や名古屋などに展開する会社が多いのですが、当社はあえて東京を中心に首都圏で総合的に売り上げを伸ばしていく戦略をとっています。
当社は一都三県で事業を展開していて、本社は文京区にありますが、首都圏の千葉、埼玉、神奈川にも支店を出しています。ターゲットとしては一次取得者層、つまり賃貸から持ち家を購入する方々です。我々は「ボリュームゾーン」と呼んでおり、中古マンション・リノベーションマンションの購入者が最も多い層です。 ここは競争が激しいですが、購入者も多いため、あえてこのようなお客様をターゲットの中心に据え、物件の仕入れ、企画、施工、販売を行っております。
品質と機能性を追求する商品戦略
── 具体的に、今後マーケティングで力を入れていくのはどんな施策ですか?
藤島 この二十数年間事業を行ってきて、商品である物件のリノベーション品質が進化し、非常に良くなりました。当社は自社でプランニングから施工まで行っていますので、品質にはものすごくこだわっています。デザイン性ももちろんですが、やはり「安心」が重要です。
中古マンションは、どうしても昔のイメージだと「購入後の不安」や「汚い」といった不安を抱く方が多く、「少し高くても新築が良い」という考えがあります。
そのようなお客様に、安心して中古マンション・リノベーションマンションを購入いただけるよう、デザイン性だけでなく、安心面を強化しております。これは自社で施工管理を行っているからこそ実現できることです。
── ブランドをいかに浸透させていくかが重要ということですね。
藤島 ブランド名自体の浸透もそうですが、安心面をアピールしたいと考えています。一般的には、皆様「〇〇駅から何分以内、広さや間取りは3LDK、予算はこれくらい」といった探し方をされる方が多いです。
しかし、当社が力を入れている「しっかり保証が付いている」といった点や、「しっかり検査してある」といった点には、お客様は最後の最後で注目されますが、物件探しの段階では、まだそういったニーズは少ないのが現状です。
ブランド名というよりも、一般の方に「購入後の安心感」や「売主がどのような会社なのか」といったことも、物件探しの条件に加えてほしいと考えています。
── 商品やサービスのブランドの改善において考えていることは?
藤島 当社のリノベーションマンションという商品作りにおいて、こだわっている点は、あまり奇をてらわないことです。
デザインは個人の好みが分かれるため、あまり奇をてらわないことが重要です。部屋の色味やクロス、フローリング、キッチンの色などについて、当社が提供するものは「さりげないおしゃれ」を心がけています。お客様には家具などで個性を出していただきたいと考えています。
水回りなどの設備については、メーカーと相談しながら定期的にリニューアルを行っています。どちらかというとデザイン性よりも機能性を重視しており、清掃のしやすさや、フローリングの傷のつきにくさなどを追求しています。
また、品質の仕上がりにもこだわっています。実際に物件を見比べていただくとかっていただけるのですが、内装の仕上がりは業者によってだいぶ違います。
たとえば、クロスに割れ目が出てきたり、フローリングの幅木に隙間があったりといったことです。当社では、こういったお客様の目に留まるところを徹底的に検査し、きれいに仕上げています。これは、丁寧な工事がされていると感じていただけるようなところです。
検査をきっちり行うことで、お客様が気になる点をなくす作業にはかなり力を入れています。奇をてらわず、王道のナンバーワンを取りに行くイメージです。
組織の「総合力」と多様な人材を束ねる連携力
── 組織面での強みと課題を教えてください。
藤島 当社を含む買取再販業界では、メインは仕入れの営業部隊、つまり営業です。内装を自社で行う場合は、内装のプランナーや現場の施工管理などが加わります。組織的に見て、当社の他社との違いは、より差別化を図り、なるべく内製化したいという思いから、ブランド事業部や情報システム部といった部署を設けている点です。
IT化、デジタル化にも力を入れていて、情報システム部門を強化しています。開発会社をM&Aでグループ会社にし、IT系の社員もかなり増やしています。また、販売も直販を始めました。事業の核は「買って、作って、売る」ですが、それに付随するさまざまなところに力を入れている。総合力が高まることで、差別化がどんどん進んでいくと考えています。
一方で課題としては、当社にはさまざまな人員、営業、内装施工系、IT系と、ある意味「人種」が異なる人材がいますので、部署間の連携をいかに効率よくスムーズに行い、互いに助け合い、うまく連携していかないと、コストアップにつながってしまうことです。
── 多様な人材を率いていくのは難しいですよね。観点や考えていることもだいぶ変わってくると思います。
藤島 それぞれの部署は専門性が高く、たいへん優秀な人材がいますが、これらを連携させ、包括的に見ていく人材が必要です。
今、私がそれを担っていますが、たとえばIT人材を営業と連携させ、営業の効率性を上げるためにどうしていくか。IT人材は営業のことはあまり知りませんし、営業はITのことはよく分かりません。ここがうまく連携していくことで、営業が効率の良いシステムを作っていく、導入していくことにつながります。それぞれの持つ強みを包括的に見ることができる人材が、やはり必要です。
財務戦略の要「事業回転率」と未来への展望
── これまでの資金調達と今後の計画も教えてください。
藤島 不動産を扱うので、物件ごとに数千万円の借り入れが発生し、借り入れ額は多いです。そのため、買取再販事業を始めた当初から、財務面で専門の人間を置いたほうが良いということで、財務課を設けています。財務課が財務内容をしっかり分析し、どこの数値を良くしたら良いか、ただ利益を上げるだけでなく、どういう数値を上げていくかということを私にアドバイスしながら、事業を進めています。
これらをしっかり行っているため、金融機関からは高く評価いただいています。当社が金融機関の信用を得るために強化しているのは、事業の回転率です。少ない資金でどれだけ年間回転させていくか、という点を最も重要な戦略と位置付けています。ここは業界の中でもおそらくトップクラスではないでしょうか。
仕入れから販売までの期間、平均の事業期間は各社さまざまですが、当社は短いです。中古の買取再販では、工事が完成してから販売する会社も多いのですが、当社はしっかりブランドコンセプトを持って事業を行っているため、工事中にもたいへん多く売れます。最近では工事中でも5割から6割が売れるほどです。内装が完了したらすぐに決済、つまり売り上げになりますので、この回転率を意識しています。
── 経営者としてのこだわりや、社長がこれまで大切にされてきたことについて教えてください。
藤島 常に危機意識を持つことです。前期が良かったとしても、今期が良いという保証は何もありません。今期、前期以上の成果を出すには、やはり前期よりもさまざまな改善や努力をしていかなければならない、ということを毎年毎年繰り返しております。それが今の当社の姿です。
現状維持ではステージが下がるだけですから、常に課題点を探し、改善するという意識でやってきた結果が、成長につながっていると考えています。
── 今後の展望、今後の経営についてのビジョンを教えてください。
藤島 現在の住宅市場、特にマンション市場は、新築マンションがとても高くなっています。資材価格の高騰などもありますが、売れないからといって価格が下がる要因もないので、当社の業界、中古マンション業界の市場が重要になってくるでしょう。
東京の新築マンションは平均で1億円を超えていますが、 1億円は一般の方には手が届きません。当社の平均販売価格は直近で約5,000万円です。千葉、埼玉、神奈川あたりだと約4,000万円で、初めて家を買う方が買いやすいリノベーションマンションを提供しています。
目指すところは、やはりお客様が安心して選択できる住宅市場を作ることであり、それはすなわち「安心して買える住宅」を販売することです。当社の物件を支持してくださるお客様がどんどん増えていくことで、周りの業者も真似をするようになり、そういった市場ができると考えています。
いわゆる富裕層向けの物件を扱う業者もいますが、私たちは初めて家を買う方々が安心して買いやすい物件を中心に販売していきます。家賃並みで買えるくらいの価格帯は、市場の影響を大きく受けづらいからです。不景気だからといって、家賃を払い続けるのはもったいないという発想がありますので、この価格帯は、割と安定して売れやすいです。
当社は、この安定した市場の中で、特に日本の中でも東京という一番市場が大きいところでトップシェアを取りたいと考えています。
- 氏名
- 藤島 昌義(ふじしま まさよし)
- 社名
- 株式会社エフステージ
- 役職
- 代表取締役社長

