株式会社クウゼン

「テクノロジーで、対話の可能性を広げる仕組みを創る」をミッションに掲げる株式会社クウゼン。同社は、企業のマーケティング効果最大化や業務効率化、DX化を支援する対話デザインプラットフォーム「クウゼン(KUZEN)」を開発し、導入数は累計600社を突破した。

生成AI技術の進化により対話型コミュニケーションの重要性が増す中、クウゼンはその最前線で新たな価値を創造し続ける。代表取締役CEOの太田匠吾氏に、創業から現在に至るまでの道のり、プロダクトへのこだわり、そして今後の事業戦略の詳細を聞いた。

太田匠吾(おおた しょうご)ー代表取締役CEO
東京大学大学院農学生命工学研究科を修了後、JPモルガン証券株式会社投資銀行本部にてM&Aアドバイザリー業務、株式・債券の資金調達業務に従事。その後、株式会社産業革新機構(INCJ)に移籍し、大企業のプライベートエクイティ投資やスタートアップへのベンチャーキャピタル(VC)投資を経験。金融領域でキャリアを築いた後、2016年に現・株式会社クウゼンを創業し代表取締役CEOに就任。
株式会社クウゼン
「テクノロジーで、対話の可能性を広げる仕組みを創る」というミッションを掲げ、企業のマーケティング効果の最大化や業務効率化、DX化を支援する対話デザインプラットフォーム「クウゼン」(KUZEN)を提供。外部のCRMやMAツールとの柔軟な連携や充実した運用サポートが特徴で、導入社数は累計650社を突破。
企業サイト:https://kuzen.io/

目次

  1. 「世界で知られる会社に」との思いから創業
  2. 「コンシェルジュ構想」が成長の原動力に
  3. コミュニケーションの多様化が自社の追い風に
  4. 早期からAIへの取り組みでアップデートにつなげる
  5. 世界水準になるためにさらなる展開を

「世界で知られる会社に」との思いから創業

── 創業のきっかけを教えてください。

太田氏(以下、敬称略) この事業を始めたのが2016年で、当時は株式会社コンシェルジュという会社名でした。その後、社名を株式会社クウゼンに変更しています。

事業の発想としては、「自分のためのコンシェルジュがいるかのような感動体験をすべての人に提供する」というコンセプトで、当初は社名もプロダクト名も「コンシェルジュ」としていました。しかし、始めてみるとあまりに一般的な言葉であるため、SEO対策などでの差別化が難しいと気づきました。

つまり、「コンシェルジュ」という会社だと、AIコンシェルジュやロボットコンシェルジュなど、さまざまなサービス名と混同されやすく、埋もれてしまいがちだったということです。これではいけないと、まずサービス名を「クウゼン(KUZEN)」に変更し、その後、社名も変更しました。

創業した2016年は、「チャットボット元年」ともいわれます。このとき、日本ではLINE、グローバルではFacebookメッセンジャーといったコミュニケーションアプリが、人と人とのコミュニケーションだけでなく、人とロボットによる自動応答にAPI連携できるようになったからです。

せっかく事業を行うのであれば、誰かがすでにやっていることの二番煎じではなく、世の中にないもの、世界でも例を見ないものを生み出したいという思いが強くありました。コンシェルジュというビジネスは、当時、世の中にない新しい形であり、非常に面白い立ち位置で事業を展開できるのではないかと考えたのです。

── もともとはJPモルガン証券でM&Aや資金調達業務に携わっていました。自身で起業したい、事業を起こしたいという気持ちは、いつごろから芽生えたのでしょうか?

太田 大学生のころからです。もっとも大学時代は、ビジネス経験もなかったため、何をやれば良いか具体的なイメージを持つための材料が少なかったのも正直なところです。

そこで、まずは何らかの経験を積んでから起業しようと考えました。せっかく経験を積むなら、社長や経営層の近くで仕事ができるM&Aのような業務が良いと、JPモルガン証券に入社したのです。

当時は周りにそのような考えを持つ人がほとんどおらず、かなり浮いていたように思いますが、起業したいという思いは変わりませんでした。

── そして、産業革新機構に移籍されていますが、そこでも起業への熱意は持ち続けていたのでしょうか?

太田 はい。産業革新機構に移籍したのも、起業に対する熱意があったからです。私の親が弁理士をしており、知的財産分野、つまり特許やライセンス関係の仕事に触れる機会がありました。

産業革新機構では、ちょうど知的財産ファンドを設立するというニュースがあり、これは自分のビジネスをやる上で良い経験を積めるかもしれないと考え、転職を決意しました。

── 金融領域でのキャリアを構築された後、2016年に現在のクウゼンを設立。社名は、日本語の「空前絶後」に由来しているとのことですが、どのような思いを込めたのですか?

太田 世界水準の会社をつくりたいというのが、私にとっての大きな目標です。寝ても覚めても熱量を持ち続けられるものは何かと考えたとき、やはり日本企業でいえばトヨタやソニーのように、世界へ行っても多くの人が知っているような企業を生み出すことではないかと思いました。

それが、社名の「クウゼン」という言葉にも関連しています。せっかくやるからには、今まで見たことのない素晴らしいプロダクトをつくりたい。それが世の中のたくさんの人に使われる未来を目指したいと考えています。

大きな目標を立ててそこへ向かう姿勢が、結果的に自分や社員の成長、そして幸せにつながると考えるからです。

「コンシェルジュ構想」が成長の原動力に

── 多くの企業、特にBtoC企業を中心に「クウゼン(KUZEN)」が導入されていますが、その成長を支えてきた大きな要因は何でしょうか?

太田 日本のお客様向けに打ち出しているのは、「LINEのインターフェースを使ったCRMの仕組みを提供する」ということです。しかし、その成長を支える考え方の根幹には、創業時にあった「コンシェルジュ構想」が関係します。

ホテルなどのコンシェルジュは、聞いたことに的確な答えを出してくれるだけでなく、聞かなくても先んじて情報を提供してくれます。非常にパーソナライズされた情報が、適切なタイミングで、不快な思いをさせずに提供される。そんなイメージではないでしょうか。

そのようなコンシェルジュが、私たちの構想の根本にあるものです。この構想があったからこそ、結果的に差別化につながったと考えています。

私たちのクライアントは、「自分たちのお客様を大切にしたい」と考えている企業です。そして、クライアントのエンドユーザーは、一度きりではなく何度もリピートする可能性やまたどこかで出会うかもしれないといった可能性を秘めた人々です。

ユースケースを挙げると、「田中さんはどうしているかな」「鈴木さんは最近見ないけど元気かな?」と顧客一人ひとりを思い浮かべながらアプローチしたい企業向けのサービスです。これをすべて人手でやるのは限界があるため、私たちの「クウゼン」が介在し、コミュニケーションの自動化、顧客満足度を向上、場合によっては受注につながるまでの時間を短縮するなどを目指します。

以上が、私たちが想定していた「コンシェルジュ構想」の活用方法であり、ようやく形になって使っていただいていると感じます。

── LINEを活用したCRMやマーケティングは多くの企業で展開されていますが、その中でも「コンシェルジュ」を実現されている点が、強みであり選ばれている理由なのですね。

太田 そうですね。お客様の声を聞いても、そこが最終的にうまくいっている理由なのではないかと感じています。

── コンペなどで選ばれる機会も多いのでしょうか。

太田 はい。お客様側も、実際に使わなければ分からないことも多いため、さまざまなサービスを比較検討された上で、私たちのサービスを選んでいただくケースが多いです。

コミュニケーションの多様化が自社の追い風に

── 現在の「コンシェルジュ構想」に基づいたLINEのCRMやマーケティング事業について、市場そのものの成長性をどのように見ていますか?

太田 大きな流れでいうと、BtoCの事業者は今、非常に困っています。電話やメールといった従来の手段では、コミュニケーションが取りづらくなっているからです。特に顕著なのは若年層で、電話に出ない、メールも見ないという傾向にあります。

そういった人たちに対して、デジタルツールの中でLINEのインターフェースを使うという判断になるのは、私たちとしては伸びしろであり、追い風だと受け止めています。

一方で、すべてのコミュニケーションがLINEだけで完結するわけでもありません。たとえばアパレル企業であれば店頭での接客、旅行会社であれば対面での相談など、さまざまなチャネルがこれからも存在します。

従来のものが引き続き残り、新しい手段も生まれ、お客様がチャネルの広がりを求める中では、プロダクトを進化させながら提供するのが重要です。その実現で、会社も自然と成長するのではないかと考えています。

── どのように顧客を開拓しているのでしょうか?

太田 特別な活動をしているわけではなく、当社対お客様のBtoBのマーケティングを地道に行っています。たとえば、Googleのリスティング広告や展示会、セミナーなどを実施し、そこからお客様が自然と広がってきました。

── 基本的にはウェブ上の施策でのマーケティングですが、営業担当者が積極的にアポイントを取り、商談を進めている状況でしょうか? それとも、問い合わせがあるのでしょうか?

太田 待っていても来るという側面も一定程度、あります。基本的にインバウンドの問い合わせは、お客様が「こういうことをしたい」ということが決まっていて、「この方法ではどうですか?」と答える形が一般的です。

私たちは「コンシェルジュ構想」を掲げているため、さまざまな方法を採ることが可能です。しかし、多くのお客様はさまざまな方法があると事前に想像した上で、話を始めるわけではありません。

私たちは、お客様の大きな取り組みに対して、より多くの貢献ができる状態で話をしたいと考えています。そのため、インバウンドの問い合わせだけではニーズを満たすことが難しい場合もあり、リアルの場でアウトバウンド活動を通して提案をしながら商談をつくるという、二つのパターンがあります。

早期からAIへの取り組みでアップデートにつなげる

── 今後、プロダクト自体をどのようにブラッシュアップ・改善する計画ですか?

太田 現在はLINEやウェブサイト、一部アプリに対応していますが、お客様の課題に入り込んでいくと、どの企業もさまざまなチャネルで毎日のマルチタスクをこなしていると、わかります。

それを、生成AIの技術を活用しながら効果的に業務を削減しつつ、最大限のパフォーマンスを出すことが可能になってきました。これはまだ一年も経っていない領域だと思いますので、技術的にもまだ進化できると考えます。

私たちとしては、プロダクトの進化とお客様への新たな付加価値の提供という形で、ニーズに応えたいと思います。

── 生成AIを組み込んでから、約一年ほど経つのでしょうか?

太田 一年以上経過しています。また、それよりも少し前から、PoC(概念実証)なども含めて試行錯誤していました。

── 生成AIが注目されるようになってからまだ日が浅いイメージですが、かなり早い段階から導入を進めていたのですね。

太田 「コンシェルジュ」という構想の時から、自然言語処理技術でロボットとの対話ができるかなど、さまざまなことを試みてきましたので、スムーズにアップデートできたという感覚があります。

── 顧客が増える中での組織としての強みと、今後の課題はありますか?

太田 優秀なメンバーが集まってくれていることは非常に良い流れであり、強みだと感じています。一方で、コンシェルジュ構想は非常に難しい取り組みであり、それをできる人が多くはないということが、少し悩ましい。採用してすぐに任せられるほど、簡単なことではないからです。

誰でもできるような形まで落とし込めるようになれば、我々のフェーズは一段階変わるのではないかと考えています。

世界水準になるためにさらなる展開を

── 外部からの資金調達も積極的です。

太田 創業当初からIPO(新規株式公開)を目指すことを明確にしていたため、スタート時より外部の投資家から出資してもらう方針はぶれていません。定期的に資金調達は行っていますが、エクイティとデットのバランスを考えながら進めてきました。

IPOに向けて、もう一度ファイナンスを考えなければならない時期が近づいてきていると感じています。

── IPOはいつ頃になりそうでしょうか?

太田 まだ対外的に発表できる段階ではありませんが、数年以内を想定しています。

── 今後の事業拡大にあたり、新規事業などは考えていますか?

太田 「世界水準の企業を創る」という目標の実現は、既存事業の延長線上だけでは難しいと考えています。そのため、さまざまな新規事業やM&Aも積極的に検討する必要があるでしょう。

一方で、既存のプロダクトをいかに拡張・進化させお客様に喜んでいただくかという観点も重要です。これからも、世の中にコンシェルジュ体験をより広く届けられるよう、アップデートを重ねていきたいと考えています。

氏名
太田匠吾(おおた しょうご)
社名
株式会社クウゼン
役職
代表取締役CEO

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