株式会社三光白衣

ユニフォーム業界で約60年の歴史を持つ老舗、株式会社三光白衣。飲食店や医療機関向けの白衣・ユニフォームを主力商品に、都心ターミナル駅近隣に5店舗のリアル店舗を構える独自のビジネスモデルを展開してきた。一方、時代に即した変革を進めるため、外部から社長として招かれたのがユニフォーム業界での経験が豊富な臂幸宏(ひじ ゆきひろ)氏だ。

組織と従業員の意識が変わりつつある三光白衣は、2030年までの売上倍増を目標に掲げる。そのためのデジタル化への積極的な投資、リアル店舗の強みを活かした情報発信とインバウンド需要への対応など、市場を生き抜くための戦略を、臂社長に聞いた。

臂幸宏(ひじ ゆきひろ)──取締役社長
1957年、埼玉県生まれ。1979年、大学卒業後、大手製薬会社を経て、1981年、ユニフォーム製造販売会社に入社。1996年にはユニフォーム販売会社を設立し、独立。その後、三菱商事グループ子会社勤務、大手安全用品製造販売会社のアドバイザーなどを歴任し、2023年、三光白衣の取締役社長に就任。趣味は読書、音楽鑑賞、ゴルフ。
株式会社三光白衣
1963年、日東白衣として創業し、1968年に現社名へ変更。ユニフォーム販売事業者。本社は、東京都新宿区。飲食サービス業界やメディカル業界向けのBtoB(外販営業)事業と、山手線内のターミナル駅近繁華街に5店舗を展開する店舗販売事業を行う。飲食・メディカル向けのオリジナルPB(プライベートブランド)商品を開発し、小ロット・短納期が可能な国内製造インフラを有する。
企業サイト:http://www.sanko-hakui.co.jp/

目次

  1. デジタル化と組織改革で従業員の意識改革につなげる
  2. ユニフォーム業界に魅了された臂氏のこれまで
  3. 2030年までの売上倍増が目標
  4. ユニフォーム業界の変化に対応する

デジタル化と組織改革で従業員の意識改革につなげる

── 三光白衣がどのような会社なのか教えてください。

臂氏(以下、敬称略) 弊社は、ユニフォーム業界に属する会社です。ユニフォーム市場は、官公庁の制服などを除くと約5500億円の市場です。比較的安定した市場ですが、近年は少し上向きつつある傾向が見られます。

ユニフォームビジネスは大きく二つの形態に分けられ、大手企業が企画から製造・販売を行う形態と、カタログ販売を行うメーカーの形態の二つです。カテゴリー別にいうと、製造業向けのワークウェア、飲食サービス向けのサービスウェア、メディカル業界向けのメディカルウェア、オフィスウェア、学生服などが挙げられます。

私どもは、主にカタログメーカーの商品を取り扱い、仕入れてお客様に納品するという事業が主体です。一方、都内に店舗も展開しています。

創業の経緯をたどると、創業者が飲食店の衛生管理の観点から、新宿の三光町に白衣専門店を開業したのが始まりです。当時、個人経営の飲食店が多く、もちろん新宿も例外ではありませんでした。頭の先から足まで一括で白衣を揃えられ、また新宿で非常に利便性が高いため、行列ができるほど繁盛したと聞いています。

その勢いは今も続いており、フランチャイズを含めて10店舗まで拠点を拡大しました。近年では、クールジャパンを東京から発信したいという意図でオリジナル商品を刷新し、インバウンド向け需要にも応えています。

弊社の特徴は、BtoBの外販営業をしつつ、飲食サービス業界およびメディカル業界向けのオリジナルPB商品を有していることです。また、山手線内のターミナル駅近の繁華街に販売店5店舗を構えていることも、ユニフォーム業界では珍しい存在だと思います。

飲食サービス向けのユニフォームにおいては、小ロットでも国内工場で短納期で製造できるインフラを用意しており、好評です。さらに、店舗に来店された企業の購買担当者から名刺をいただき、会社への営業で店舗で購入された商品以外のユニフォームや安全靴、手袋、防寒服なども深耕開拓できる強みがあります。

── 臂社長が社外から三光白衣に招へいされ、行われた改革は何でしょうか?

 私が入社してから、大きな変革を進めています。

創業当初は、店舗にお客様が来てくださるのを待つビジネスモデルでしたが、時代が進むにつれてECサイトの台頭などにより、待っているだけでは立ち行かなくなりました。どこからでも商品が購入でき、価格比較も容易な時代になったからです。そこで、攻めの姿勢が必要だと考えました。

また、それまでのビジネスは属人的で個人の経験や勘に頼る部分が多く、効率の悪さや認識のずれによるミスも少なくありませんでした。この状況を改善するため、組織で動くこと、効率化、情報共有の重要性を訴えてきましたが、長年の習慣を変えるのは容易ではありません。

そこで、デジタル化を進める決断をしました。具体的には、基幹システム(顧客管理、仕入れ管理、在庫管理)の導入と、店舗のレジをPOSレジに変更。これにより、業務の可視化を進め、属人的な仕事から組織的な運営へと移行しています。

数字やデータが見えるようになると、社員一人ひとりが論理的に営業活動を行えるようになり、何が売れているのか、何を売るべきか、顧客の利益率はどうなっているかといった具体的な分析に基づいた行動が可能になりました。

つまり、社員の意識を変える大きなターニングポイントになったということです。

もう一つ、組織体制の再編も行いました。以前は、一人が店舗の販売員と外販の営業マンを兼務している状況でしたが、営業は外に出るべきという考えから、外販営業部門を独立させました。

営業本部を設置し、営業担当者をそこに集約することを今年の5月に完了しました。店舗は店長に任せ、それぞれのコア業務に集中できる体制を構築しています。これにより、業務効率が向上し、社員が自身の本業に集中できるようになったと考えています。

ユニフォーム業界に魅了された臂氏のこれまで

── 臂社長の経歴や強みを教えてください。

 大学卒業後、大手製薬会社に入社しましたが、2年で退職し、その後ユニフォーム製造販売会社に入社しています。当時は「ユニフォーム」という言葉を聞いて、スポーツウェアのようなものを想像していましたが、実際は作業服でした。

看護師や企業向けのユニフォームを扱う中で、働く人々が給料を得るための時間を「着るもの」で支えているということに、大きなやりがいを感じました。特に製造業においては、安全管理や働きやすさ、作業効率に直結するユニフォームが重要です。

それぞれの業界の仕組みや仕事内容を理解することで、知見が増え、世の中の動きがわかることが楽しく、ユニフォームの仕事は自分にぴったりだと感じました。

ユニフォームには、安全性、信頼性、機能性、連帯感など、さまざまなつくり手の思いが込められています。働く人に快適で機能的な服を提供することに誇りを感じ、この仕事を一生続けたいと思うようになりました。

しかし、一時的に円高が進み海外生産が主流となる中で、ユニフォームの価格が下がり、品質よりも価格重視の風潮が強まった時期がありました。

私は、働く人には機能的で快適な服を着てほしいという思いがあり、価格だけで判断される状況に納得できないという考えです。そうした思いを実現すべく、独立した時期もありました。価格だけでなく、企業に合った機能的なユニフォームの重要性を訴え、多くのお客様から理解を得られました。

── その後、独立のご経験を経て、三光白衣に参画された経緯と、その際の心境を教えてください。

 独立よりさらに後、三菱商事ファッション(現エムシーファッション)に勤務し、大手企業との取引で実績を積む中で、三光白衣の当時の社長と知り合いました。

スタートは、私が持っていた案件を三光白衣に預けるといった形の、お付き合いです。その後も、三菱商事ファッションでカタログ商品の卸売などを三光白衣から仕入れることもあり、忘年会や社員旅行に招待されるなど、徐々に関係が深まりました。

2022年、私が60歳になる年に、当時の社長から「会社を方向転換し、外販やECなど新しい取り組みを進めていきたい。そのためには、ユニフォーム業界への情熱と、大手企業での経験を持つ臂さんに会社を引っ張っていってほしい」という話がありました。

私自身、独立経験もあり、人を束ねて同じ方向へ導くことに抵抗はありません。また、ユニフォーム業界に貢献したいという思いもあります。DX化やAIの進展により、ビジネスのあり方が変化する中で、三光白衣も変化する必要があると感じ、このお話をお受けしました。

── 創業者の理念や、これまでの歴史の中で大切にされてきたことは、どのように継承されていますか?

 創業者の室井相談役とは、何度か話をしています。

創業者は、オリジナルユニフォームの品質、納期、そして店舗の知名度を重視する人です。また、創業のきっかけとなった飲食店での衛生管理の重要性についても、あらためて話を聞き、かつては飲食店で働く人々が帽子をかぶり白衣を着るのが一般的であったのに、近年はTシャツ一枚で済ませる店舗も増え、衛生管理の意識が薄れている現状に危機感を持っていました。髪の毛が落ちるリスクなどを考えると、食品を扱う上で帽子を着用しないのは本来おかしいという話に、私も強く共感します。

ユニフォームは、単なる作業着ではなく、働く人の安全や快適性、そして企業のアイデンティティを表現するものです。この「ユニフォームとは何か」という本質を追求し、お客様に提供するという考え方は、今後も継承していきたいと考えています。

歴史を継続することの重要性を認識しつつ、その中に改革と確信を取り入れる。この意識を社員全員に伝えています。

2030年までの売上倍増が目標

── 三光白衣、あるいは、ユニフォーム業界全体を見たとき、どのように生き残りを図る考えでしょうか?

 まず、ユニフォーム業界で生き残るためには、デジタル化が不可欠です。産業革命以降、技術革新が社会を大きく変えてきました。AIの進化も目覚ましく、他社も我々もそれに追いつくため、組織体制や考え方をアップデートする必要があります。

ウェブサイトを持たなかったり、後継者がいなかったりする代理店も多い中で、三光白衣はデジタル化を進め、数字の見える化を図り、顧客の受発注や在庫管理をクラウドで見えるようにするなどの仕組みを構築しています。デジタル化への投資は、不可欠です。

また、情報発信も経営の一部と捉え、積極的にPR活動を行いたいと考えます。

近年、インバウンド需要が非常に高まっており、今年の夏も売り上げを伸ばすことができました。日本は現在も観光立国を目指すさなかであり、今後もインバウンド需要は増加すると予想しています。店舗だけでなく、ホテルや観光ツアー会社などとも連携し、ストーリー性のある発信や企業活動を展開する必要性を感じています。

弊社の最大の強みは、都内に5店舗のリアル店舗を構えていることです。厳しい時代ではありますが、店舗の存在は大きな信用力となります。新宿、上野、新橋、池袋、渋谷といったターミナル駅近くに店舗があり、お客様から「すごいですね」と驚かれることも多く、ユニフォーム専門店としての存在感を示しています。また、店舗ではお客様のリアルな声を直接聞くことができ、迅速な対応が可能です。

ユニフォーム業界は成熟市場といわれますが、ECとの融合や情報発信、環境配慮型素材の活用など、まだまだ再構築の余地は大きいと考えています。たとえば、生分解性ユニフォームや海洋プラスチックを利用した素材など、環境に配慮した素材を取り入れることも可能です。

お客様の意見をよく聞き、コンサルティング的な提案を行うことも重要です。ユニフォームは人の生活や経営と密接に関わるため、その重要性を理解し、お客様と共に成長することを目指します。

── それを実現するため、社長が従業員に伝えていることは何でしょうか?

 まず、営業担当者には「計画に対する約束を守ること」を伝えています。予算は会社との約束であり、納期や品質、価格も同様です。会議には5分前には参加し、責任ある発言を求めています。

また、2030年までに売上を倍増させ、売上高20億円達成が目標です。そのためには、毎年15%ずつの計画的な売上アップが必要となります。

しかし、単に売り上げを伸ばすだけでなく、利益を確保することも重要です。利益のある仕事でなければ、会社は持続できません。都内で会社や店舗を維持するためには、最低でも28%程度の利益率が必要だと考えており、社員には利益を意識した仕事をするよう伝えています。

また、以前は業務が属人化していたため、情報共有が十分ではありませんでした。そこで、「共有・共感・同意」を常に意識するよう伝えています。会議の内容を出席していない人にも共有しています。社員全員が同じ方向を向いて仕事に取り組めるようにすることが、重要です。

とはいえ現状では、まだアナログな部分も多く、マニュアルやフローが整備されていない箇所もあります。そのため、入社した社員が戸惑うことも少なくないのが課題です。

今後は、経験豊富な人材を採用し、会社を変えるスピードを上げることが必要です。社員一人ひとりが会社の成長に貢献し、定着してくれるような環境づくりを目指します。

日報を提出し、それに対して私がコメントを入れるという取り組みも行っています。これにより、社員間の情報共有を促進し、お互いの業務への理解を深めています。社員一人ひとりの良いところを活かし、それぞれの能力を発揮できるような仕事を見つけることも大切だと考えます。

ユニフォーム業界の変化に対応する

── 今後の資金戦略について、教えてください。

 資金戦略については、まだオーナーが管理している部分が大きいですが、私としては、デジタル化への投資や、人材採用への投資を積極的に行っていきたいと考えています。

── 社長が日ごろ、意識する経営哲学について教えてください。

 お客様との関係構築において、担当者だけでなく、その上司やさらに上の役職の方々とも良好な関係を築くことが重要です。お客様の担当者が変わると対応も変わることがあり、同じ会社でも人脈や紹介に頼るのではなく常に新しい情報や熱量を持ってアプローチすることが大切だからです。

また、お客様に対して、どれだけ真剣に考えているか、どれだけの情報を提供できるかが、営業マンの価値となります。

社員一人ひとりの個性や強みを活かすことも重要です。否定から入るのではなく、それぞれの良いところを見つけ、最大限に引き出すような仕事を任せることを心がけています。

── ユニフォーム業界の未来と、三光白衣が果たすべき役割について、どのようにお考えでしょうか。

 ユニフォーム業界は、今後も変化し続けるでしょう。デジタル化の進展、環境意識の高まり、そして働き方の多様化など、さまざまな要因から影響を受けると思います。

三光白衣はこれらの変化に対応し、お客様に最適なユニフォームを提供し続けることで、業界の発展に貢献したいと考えます。リアル店舗の強みを生かしつつ、オンラインとの連携を強化し、お客様のニーズに応じた付加価値の高いサービスを提供することが、私たちの使命です。

氏名
臂幸宏(ひじ ゆきひろ)
社名
株式会社三光白衣
役職
取締役社長

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