営業面で”一匹狼”ばかりの保険業界を変革したいと、自らの保険代理店を起業した足立哲真氏。R&C株式会社の創業者と出会い、かねてからの思いが合致したことから2012年、同社に入社した。
2014年の代表取締役就任後は、約2億円の赤字を抱えていた状況から、ブランド刷新や新規事業への参入で組織を再建・拡大している。会社も顧客との関係も息長く続ける「1000年継栄」を掲げる足立氏に、保険業界、そして金融から社会をどう変えたいと考えるのか、聞いた。
企業サイト:https://www.randcins.jp/
知られざる保険代理店の世界にある性質
── 足立社長のR&C入社の経緯から、教えてください。
足立氏(以下、敬称略) 私がR&Cに入社したのは、2012年2月です。そして、創業者からの交代という形で、2014年、社長に就任しました。就任当初は、会社が約2億円の赤字を抱えている状況でした。その後、ブランド刷新や不動産事業、キャプティブ保険事業などを開始し、組織の拡大を図っています。
── そもそも保険業界に入ったきっかけは何だったのでしょうか?
足立 大学3年生のときに保険業界でインターンをしたことが、きっかけです。卒業後、新卒で入社した保険代理店から転職し、別の保険代理店に入りました。しかし、保険代理店業界は”一匹狼”の集まりのような側面があり、個人の力に限界を感じていました。
お客様を本当に守るためには、組織でなければならないと考え、メンバーが3名ほどの代理店を始めたのです。その直後に、R&Cの当時の社長と出会い、組織でお客様を守るという目的が一致したため、ナンバー2として参画しました。
── 入社当初から、将来的に代表になるという考えはありましたか?
足立 はい、そのつもりで入社しました。当時の社長も、数年後には交代するつもりで私を迎えていたと思います。
── 「サステイナブルソリューション」という言葉を掲げていますが、どういった意味を持つのでしょうか?
足立 経営理念に「1000年継栄」を掲げていることが、背景にあります。保険は、終身保険のように生まれてから亡くなるまで続く、最も長い契約を結ぶ商品です。世代を超えてつながっていくものでもあり、その過程を持続可能にすることが重要だと考えました。
そのため、「サステイナブル」という言葉を用いていました。ただ、少し分かりにくいという声もあったため、現在は別の言葉で表現しています。
── 「お客様が本当に守りたいものを守る」という思いが込められているのですね。
足立 はい。人が保険に入る本質は、「残したいもの、守りたいもの」を守るためだと考えています。それがなくなったときに、はじめて保険は不要になる。その気持ちは普遍的なものです。
── 保険代理店業界は個人の営業力が重視されがちですが、組織化への舵を切った際の難しさや、文化変革について教えてください。
足立 未だに大変ですよ。保険業界に入る方は、縛られるのが嫌で自由を求める方が多いのです。しかし、お客様を守るためには組織が必要です。私たちは「コレクティブ(集団)」という言葉を使い、組織でお客様を守るという本質を伝え続けています。
R&Cが進める組織化の具体像
── グループ会社を増やしたり、解決策を増やしたりしているのは、そのためですか?
足立 はい。お客様の課題は、保険だけで解決できるわけではありません。資産運用や不動産など、さまざまな解決策が存在します。
これらをすべて自分が扱うのは不可能なので、専門家とチームを組む必要があります。お客様のことを真に考えるならば、質の高い専門チームで対応することが不可欠です。そのため、個人の力に依存するのではなく、チーム力という感性が必要なのです。
── チームは、どのように顧客へ対応するのでしょうか?
足立 たとえば資産家のお客様がいらっしゃった場合、まず保険でお付き合いを始め、コミュニケーションを深めます。その後、資産運用や不動産など、お客様のニーズに合わせて、それぞれの専門家とチームを組んで対応します。チームで担当することを伝えれば、お客様は安心します。
── 現在、そのチーム体制を実践できる営業担当者はどのくらいいますか?
足立 まだ1〜2割程度でしょうか。多くの営業担当者は、保険を売ることに集中しています。しかし、お客様とのリレーションシップを築き、チーム体制を構築することが重要だと考えています。
組織的強さを持つ代理店の人材、体制、商品
── 2014年の代表就任後、約2億円の赤字から再建を果たしています。成長を実現する上でのきっかけは何でしたか?
足立 二つあります。一つは、優秀なプレイングマネージャーが現れたことです。彼はプレーヤーとしてもマネージャーとしても非常に優秀で、組織の水準を引き上げてくれました。もう一つは、新しい人材を採用し、組織を活性化したことです。
── そのプレイングマネージャーの方は、どのような経緯で入社されたのですか?
足立 新しい人材や拠点の展開を担当する部長が、ヘッドハントで採用しました。保険業界の採用は、基本的にヘッドハントかリファラルが中心です。
── 現在は、採用にも力を入れているとのことですが。
足立 毎月10人程度の営業担当者を採用しており、年間では100人近くが入社しています。ただし、離職者もいるため、規模は常に変動があります。
── もう一つの転換点である、幹部陣による全国展開についてお聞かせください。
足立 はい。現在も全国展開を進めていますが、都市圏だけでなく、地方にも拠点を展開しています。拠点の決定は、計画的にというよりは、その場所で働けるマネージャーがいるかどうかで決まることが多いです。マネージャーがいないと、どれだけ優秀な営業担当者がいても拠点は成り立ちません。
── 拠点数や人数についての将来的な目標は?
足立 拠点数はあまり重視していません。2030年頃までには、1000人規模の組織を目指したいです。
── LGBTQ+向け共済商品などもラインアップにありますが、その理由を教えてください。
足立 保険代理店業界は、扱う商品に大きな差がなく、差別化が難しいことが理由です。そこで、自社商品で独自性を出すことを目指しました。
LGBTQ+の方々への保障ができないかと考え、5年前にパートナー共済をサービス化しました。これは保障が必要とされていながら、これまで業界が保障を十分にできなかった層へ届けたいと考えてのことです。また、一過性の取り組みにならないように、長く支え続けるための収益性が重要だと考えています。
将来的には金融版ユニクロのようなイメージの、自社商品を開発できるメーカーになりたいと考えています。
── 自社商品の開発は、保険会社にとっては大変なことかと思います。
足立 保険会社が商品開発をするのは大変ですが、私たちは後発だからこそ、低コストで効率的に開発できる強みがあります。
現在、共済商品の開発は実質1〜2人で行っています。管理コストを抑えることで、保険料を安く設定したり、利益率を高めたりすることが可能です。また、自社商品で得たノウハウを活かし、OEM提供も行っています。たとえば、施術者向けの損害補償サービスなども提供しています。
経営哲学とする「1000年継栄」とは?
── 「1000年継栄」という壮大な経営理念について、その意味と日々の経営にどう落とし込んでいるかを教えてください。
足立 私は「100年経営研究機構」に所属しており、長く続く企業の秘訣を研究しています。100年以上続く企業は、社会への貢献という考え方が強いのです。利益を株主のためだけではなく「三方よし」の精神で、かかわるすべての人々が良くなることを目指しています。
そこでR&Cの役割は、国の社会保障制度を補完することであるととらえました。
従業員には、お客様にとって最も重要なのは担当者が辞めないことだと常に伝えています。また、広報活動や社内報などを通じて、「1000年継栄」の理念を浸透させる努力をしています。
── 100年経営研究機構に所属されたきっかけは何ですか?
足立 「1000年継栄」を掲げた際に、ほかに事例がないか調べたのがきっかけです。1000年以上続いている企業は日本には21社もあり、中には1300年以上続く企業も存在します。活動を通じて、息長く続く企業の経営者の方々と交流し、営業活動にもつなげています。
── 働きがいのある会社として複数年にわたり表彰を受けていますが、選ばれる組織であり続けるための差別化戦略は何でしょうか?
足立 やはり人を大切にすることです。特にどのような人を大切にしているかというと、人を誘う人、人から誘われる人であることを重視しています。そういった人に、ほかの人、お客様がついてくるからです。
また、保険業界には商品だけで限界を感じている人がおり、私たちの考え方に共感して入社するケースが増えています。
── 入社した社員からは、どのような声が聞かれますか?
足立 「プライベートまで大切に考えてくれる人が多い」「他の代理店と雰囲気が違う」といった声が多く聞かれます。会社の雰囲気が良く、楽しそうに働いている人が多いため、お客様やその友人が私たちの様子を見て入社したいと思うケースもあります。
── 雰囲気はどのように醸成しているのでしょうか?
足立 人生を豊かにするために働くということを、社員に伝えています。お金を稼ぐこと、豊かな人間関係、そして健康が大切だと、常に社員に伝えています。
── 従業員への動機づけは、どのように行っていますか?
足立 年間の表彰制度や社内報で、個々の功績や考え方を取り上げています。また、毎週の朝礼では、私がセールスパーソンにインタビューを行い、契約のきっかけや仕事への思いなどを深掘りしています。400人のメンバー全員がそれを聞く機会を持つことで、意識を高める狙いです。
リスクの再定義で社会を明るくする
── 今後、どのような分野に挑戦したいと考えていますか?
足立 直近では、海外展開を視野に入れています。代理店としての海外展開は、今後5年で国内中心に展開し、その後5年で海外へ進出したいと考えています。また、先ほどの「金融版ユニクロ」を目指し、自社商品を開発して自社の営業担当者しか売れないような仕組みを構築したいです。
── 海外で特に注力したい地域はありますか。
足立 台湾やマレーシアなどを中心に考えています。
── パーパスにある「リスクを再定義する」という言葉について、詳しく教えてください。
足立 リスクという言葉は「危険」というネガティブな印象を持たれがちですが、成功者は「リスクがあるからリターンがある」「リスクを取ったから成功した」と考えます。この価値観を社会に広げたいのです。
リスクを理解し、取れるリスクと取れないリスクを把握することで安心感が生まれ、挑戦できるようになります。挑戦から成長が生まれ、成功確率も上がります。また、成功者は周りへの感謝を忘れません。感謝する人が増えれば、世の中も良くなるはずです。
── 「攻めの保険」や「成長を支える保険」といった新しい価値提供を掲げていますが、そちらについても教えてください。
足立 リスクを再定義することによって、攻めの保険や成長を支える保険を世の中に提供していきたいと考えています。その根幹にあるのは、リスクに対する価値観を広げることです。
── 今後、どのような未来をつくりたいのでしょうか?
足立 リスクを再定義することによって、社会全体がよりポジティブに挑戦できるような未来をつくりたいと考えています。保険というものを、単なるリスク回避の手段ではなく、成長を後押しするポジティブな力に変えていきたいのです。
- 氏名
- 足立哲真(あだち てつま)
- 社名
- R&C株式会社
- 役職
- 代表取締役

