本記事は、島 青志氏の著書『頭がいい人の思考のコツ 考えるスイッチ』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
システム思考とは
三つの思考法の最後「システム思考」について取り上げます。
システム思考を一言でいうと「仕組み化を考える」ことです。特に、長く続ける「持続可能な仕組み」のためには、システム思考は必須の思考法です。
「システム」の言葉は、「コンピュータシステム」や「社会システム」など広く使われていますが、もともとの意味は「複数の要素のものを連携させて、目的のために動かす」ことを指します。コンピュータシステムの場合、複数のハードウェア(CPUや記憶装置、キーボードやディスプレイなど)と複数のソフトウェア(OSやアプリケーションソフトなど)で動かすものですし、社会システムも、人や組織など複数の要素から成り立っていますよね。
特に社会システムの場合、要素にあたるそれぞれの「人」がそれぞれの「思惑」「想い」を持って動いているので、これを「目的のために動かす」のはコンピュータシステムより遙かに難しいものです。何万人の会社組織を動かす経営者でも、数人だけの自分の家庭の「運営」がうまくいかない話はよくあります。
そのために「政治システム」「経済システム」あるいは「会社」や「家族」のシステムがあるわけですが、私たちが何らかの「成功」をしたいと思う場合も同じです。
今までの思考法で新しいアイデアや問題解決の手法を思いつくことができても、それが実行に移せなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。そしてこの「実行」は、多くの場合、一人でできるものではなく、周りの協力を得るとか、周りに影響を与えるなどの必要があります。
そのために必要なのが、「仕組みづくり」と「仕組み化」です。
例えば、新製品やサービスを普及させるには、その商品が普及するような仕組み(システム)をつくらなければいけません。逆に組織の問題解決であるとか、今流行のDXなどで組織を「変革(トランスフォーメーション)」させたいときもそうです。この場合は、今の仕組みを変える、場合によっては一度壊す必要があります。この場合も今あるシステムをよく理解したうえで、どうすれば変えることができるのか、あるいは壊したうえでどうやって新しい仕組みをつくるのかを考える必要があります。
会社とか組織の場合だけでなく、私たち個人に関しても同じです。
例えば、私たちが「夢をかなえる」ために必要なことは何でしょうか。
「目標をしっかり持つこと」とか「能力」や「スキル」も大事ですが、それだけではなく、周りの人たちを巻き込む「仕組化」を考えることが欠かせません。これは何も自分で一から仕組みをつくれと言っているのではなく、既存の仕組みをどう活用するかも含めてです。
プロ野球選手になりたければ、プロ野球機構のチームに加入する必要がありますし、俳優やタレントになりたければ、芸能事務所に入るなど「芸能界」のシステムの一員になることを考えなければいけません。
もちろん既存のシステムを利用し、加わるだけが選択肢ではなく、自分で仕組みやシステムを構築する場合もあります。今ならユーチューバーとして有名になり、そこから芸能の仕事をするようになった人も多いですよね。
このように仕組み化やシステムを考えることが、この社会の中で「成功する」「成功を再現化」する必要な要素になります。
アート思考やデザイン思考の成果
前章までの思考法を使えば、アート思考を活用して、自分のやりたいことや夢を想い描き、デザイン思考で製品やサービスのアイデアを生み出すことができるようになります。しかし繰り返しになりますが、実現ができなければ「絵に描いた餅」で終わってしまいます。
仮に「世界を良くする方法」「社会のみんなが幸せに生きる方法」を思いついても、一人で思っているだけでは、一ミリも実現に近づきません。また、その考え方を積極的に発信しようとしても、これだけ様々な情報が溢れている世の中で、自分の考えを社会に浸透させるのも、そう簡単にはできることではありません。
同じように、デザイン思考で画期的な新製品や新サービスを考えついたら、そのアイデアを実際に製品やサービスの形にしたり、必要な数の製品を生産できるようにしたり、必要な顧客に届ける仕組みを構築する必要があります。
その製品やサービスを世の中に浸透させる。簡単な言葉でいえば、「売れる仕組み」もやはり構築する必要があります。せっかくデザイン思考を使って、イノベーティブな製品やサービスが生まれたとしても、それだけでは売上もゼロですし、シェアもゼロです。
売上を上げてシェアを伸ばすためには、今まで自社の製品やサービスがなかった社会、競合製品がひしめいていた社会の仕組みを、ある意味壊すことができなければ、あなたの製品やサービスも世の中に出ることができないですよね。
その製品がユーザーに受け入れてもらえる仕組みづくり、社会システムの構築の観点が必要なのです。
これはデザイン思考の五つのステップでいうと、テストやテストの後、製品やサービスを普及させる段階で必要になります。
広告やマーケティングは、「製品やサービスの存在を世に知らしめる」重要な機能ですが、「長く売れ続ける仕組みづくり」が構築できなければ、広告もマーケティングも意味をなしません。
また、「共感」や「問題定義」のステップでは、受注型のシステム構築など、顧客が一人だけのケースを除いて、数多くの多様なユーザーを相手に、解決につながる正しい問題点を探し出す必要があります。これは人間関係が入り組んだ、家庭や職場、地域社会の問題解決でも同じです。
このデザイン思考とシステム思考の関係は図のようになるでしょう。
デザイン思考で生まれたアイデアを製品化したり、顧客に届ける流通の仕組みなどサプライチェーンを構築したりといったことについては、システム思考の中でも、システム工学(システムズエンジニアリング)の範疇になります。プロジェクトマネジメント手法などもここに入ります。
そのような目に見える部分だけでなく、取引先などのステークホルダーや社内、顧客などとのつながり、さらには仕事を離れて、家族や社会との良いつながりを「仕組み化」する。これもシステム思考ができることです。
このようにシステム思考の守備範囲はとても広いのですが、特にこの「目に見えないつながりの仕組み化」に重点を置いて解説をしたいと思います。
広告業や会計事務所など多様な業界を経て、株式会社SALT(現ブルーロジック株式会社)にて代表に就任。
アート思考、デザイン思考、システム思考を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供している。
三思考統合コンサルティング企業として、企業のDX導入、組織変革、イノベーション創出支援を手がける。AIや生成型モデルの活用による効率化・価値創出、地域振興、アジャイル型開発支援など、多岐にわたるテーマで活動。
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