株式会社ファインズ.

動画制作からコンサルティングまでを一貫で提供し、中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する、株式会社ファインズ。代表取締役社長の三輪幸将氏は、営業畑から経営トップへと駆け上がり、同社をグロース市場上場へと導いた。

三輪氏に、動画事業への参入の背景、中小企業に特化する理由、そしてパーパス経営への転換を通じて目指す未来について語ってもらった。

三輪幸将(みわ ゆきまさ)──代表取締役社長
株式会社フリーセル(現 ブランディングテクノロジー株式会社)の営業部門でキャリアをスタートし、株式会社ファインズの立ち上げメンバーとして参画。ウェブマーケティングの営業を中心に、経営戦略や事業全般の企画・推進に従事し、執行役員、常務取締役を歴任。2018年、株式会社ファインズの代表取締役社長に就任。
株式会社ファインズ
2009年、創業。Videoクラウドを中心に、企業のDX推進を支援。現在まで2万4,000社以上(2025年6月末時点)と取引し、特にVideoクラウド事業における動画制作累計取引社数は1万2,000社を超える(2025年6月末時点)。その他、DXコンサルティングなど、企業のDX化で一貫したサービスを提供。2022年、東証グロース上場。
企業サイト:https://e-tenki.co.jp/

目次

  1. 営業職でのキャリアスタートから10年で社長就任
  2. 国内全域の中小企業向けのカスタマーサクセス体制を構築
  3. 伸び悩むからこそパーパスを重視
  4. 地域社会のために自由に発想し、行動する会社に

営業職でのキャリアスタートから10年で社長就任

── 創業時のガラケー向けサイト制作事業をしていたところから、2015年の動画事業への参入は大きな決断だったと思います。その背景を教えてください。

三輪氏(以下、敬称略) もともと当社はコンテンツ制作を主軸としており、モバイルサイト制作事業から始まっています。その後、SEOやMEO、さらに2013年には予約システムの販売提供に事業を広げました。

多くの企業、特に予約システムを導入される企業から、集客やプロモーションに関するニーズを強く感じていたことが、背景にあります。

私自身もコンテンツ制作のバックグラウンドがあったため、世の中の広告がどのように変遷するのか、アメリカの動向などを調査する中で、動画を活用したプロモーションに着目しました。ちょうどYouTubeが盛り上がり、日本でも動画コンテンツが浸透し始めた時期です。

そこで、動画を活用し企業のプロフィールやPRを効果的に行うことが今後重要になると考え、2015年に動画事業を立ち上げました。

── 会社のPR支援という文脈で、貴社が中小企業にサービスを展開しているのは、どのような考えからでしょうか?

三輪 もともと中小企業向けのモバイルサイトや予約システムを販売していた流れもあり、お客様の声を聞きながら事業を進めてきた結果です。必然的に、中小企業のPR支援へと事業が拡大しました。

── 三輪社長ご自身が社長に就任するまでの経歴を教えてください。

三輪 私は2008年にフリーセル(現ブランディングテクノロジー)に入社し、ウェブサイト制作や広告販売といった営業職からキャリアをスタートしました。

ファインズは、ブランディングテクノロジーの100%出資子会社として創業し、私も立ち上げメンバーとして参画しています。ファインズでは当初、営業としてモバイルサイト制作からスマートフォン向けサイト制作、そして事業全体の統括に携わりました。

2013年には営業全体を統括する立場となり、予約システムの管轄も担当しました。その後、大阪、名古屋、福岡、仙台、札幌、金沢といった地方展開を実現しています。

2018年、ファインズの代表取締役社長に就任し、同時に旧オーナーからの会社売却の意向もあり、2019年にLBO(レバレッジド・バイアウト。経営陣による買収) を実施しました。その後、上場し、現在に至ります。

── 営業からの叩き上げで、営業統括も経験されたということですね。三輪社長の営業時代は、どのようなビジネスパーソンでしたか?

三輪 特別なことはなく、ごく普通に一生懸命、営業活動をしていました。お客様がどうすれば喜んでいただけるか、どうすれば反響を出せるか、といった点を常に中心に考えていました。

── 社長就任の打診を受けた際の心境は?

三輪 正直にいって、驚きました。「私が社長に?」という気持ちです。しかし、常務取締役として営業組織だけでなく、ミドル・バック部門の一部も見ていたため、引き受けました。社長になることで、自分のやりたい方向へ会社を導けるという確信もありました。

国内全域の中小企業向けのカスタマーサクセス体制を構築

── 社長就任後に描いたビジョンについて教えてください。

三輪 まず着手したのは、事業の選択と集中です。2015年に動画事業を開始してから、ほかにホームページ制作事業、予約システム事業があり、大きく分けて3つの事業組織がありました。しかし、予約システム事業は競合の増加もあり、伸びが鈍化していたのです。

そこで、動画事業に注力し「動画を起点としたマーケティングDX」を推進するという方向へ、大きく舵を切りました。2019年からインタラクティブ動画事業を開始し、2021年には「Videoクラウド」を本格リリースしています。

これらが基盤となり、2022年の上場へとつながりました。上場を目指した背景には、LBOによる多額の借り入れがあり、新規事業への挑戦や投資が一時的に困難になった状況があったからです。会社を成長させるためには資金調達が必要だと考え、グロース市場への上場を目指しました。

── 上場準備を進める上で、最も大変だったことは何でしょうか?

三輪 上場準備はすべてが大変でした。管理部門はありましたが、月次決算を締める程度の体制しかありませんでした。内部管理体制やコンプライアンスを強化し、よりスピーディーな管理が可能なバックオフィス体制を構築することに時間を割いていたように思います。

── 現在は、動画を起点としたマーケティングDXを展開していますが、このモデルの強みやファインズならではのバリュー(価値観)を教えてください。

三輪 当社の強みは、Videoクラウド事業における累計1万2,000社以上の動画制作実績です。中小企業向けの動画制作実績では、日本でもトップクラスだと自負しています。

また、動画制作だけでなく、配信プラットフォーム、コンサルティングまで一気通貫で行える点が当社の強みです。さらに、VideoクラウドからDXコンサルティング事業の「Raise」へと連携し、お客様の広告情報、ウェブサイト閲覧状況、動画閲覧状況などを一元管理するシステムを提供しています。

中小企業はウェブ担当者を置くことが難しい場合が多いため、当社がお客様のウェブ担当者のような立ち位置でコンサルティングを行い、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)的なサポートを提供します。

さらに、中小企業でも支払い可能な単価設定が、多くのお客様と長期的なお付き合いをできている理由です。

── その一気通貫モデルが”絵に描いた餅”にならないのはなぜでしょうか?

三輪 サポート体制が非常にしっかりしている点です。

ウェブサイト制作や動画制作会社の中には、「つくって終わり」という企業も少なくありませんが、当社はカスタマーサクセスを重視し、2017年ごろからお客様の成功を支援する体制を構築してきました。

メールだけでなく、電話で直接ヒアリングを行い、お客様の悩みや課題に対して、改善提案を丁寧に行っています。このきめ細やかなアプローチが、他社にはない強みです。中小企業、特に地方の企業が日本を支えているという信念のもと、DXが遅れている企業を下支えして地域社会にも貢献したいと考えています。

今回、新たに「企業と地域社会の未来に、テクノロジーの追い風を。」というパーパスを策定したのも、こうした想いからです。

伸び悩むからこそパーパスを重視

── 中小企業は、社内が社長を頼り、社長に業務が集中しがちです。この課題を解消するため、どのような領域でDXを行うのでしょうか?

三輪 システムの自社開発を進めるとともに、AIの活用にも注力します。AIは人手不足や作業効率の改善に不可欠であり、積極的に投資を行っています。

現在、累計2万4,000社以上とお付き合いがあり、そのうち約7,000社が「ユニーク」の顧客(複数のプロダクトを利用するなど重複を除いた純粋な数の意)です。まずはこれらの顧客のDX、AI化を進め、今後は中小企業だけでなく、中堅・大手企業も視野に入れたマーケティング活動を展開していきます。

ウェブ集客、展示会参加、セミナー開催といったリード獲得手法にも投資したいです。現在はテレマーケティングが中心ですが、チャネルを多様化させてプル型の案件獲得を増やしたいと考えています。

また、M&Aや業務提携も積極的に行い、パートナー企業との連携を通じてお客様の課題解決機会を増やしたいです。

── 上場後、業績の伸び悩みが見られました。多くの企業が戦術的な対応に走る中、パーパスの策定という本質的なテーマに取り組まれましたが、その背景は何でしょうか?

三輪 2023年6月期をピークに、売上が横ばい、あるいは低下するという状況が続きました。会社全体の伸び悩みに、私自身も自問自答を繰り返しました。

そこで、人を大切にしたいとの想いがあるにもかかわらず、目先の数字に囚われ社内での離職者が出たり本来あるべき経営理念やビジョンがおろそかになったりしていると、気づいたのです。従業員一人ひとりが「なぜ、何のために、仕事をしているのか」という目的意識が希薄になっていたともいえます。

このままでは会社は伸びないと直感し、事業投資だけでなく、会社の一丁目一番地である「なぜファインズという会社が存在するのか」を再定義する必要があると考えました。会社の存在意義を定義するパーパスは、取締役 経営戦略室長を中心に全社全員で4ヶ月の時間をかけて策定しています。会社として、なぜ、どうして、何のために事業を行うのか、そして全社全員が本気で向き合えるのか、この点が希薄化したことが業績低迷につながったと反省し、新たにパーパスとバリューと共に策定した流れです。

── パーパス策定のプロセスについても教えてください。

三輪 まず役員合宿を実施し、「ファインズをどのような会社にしたいのか」を徹底的に話し合いました。当初は役員間でも目線にばらつきがありましたが、勉強会を経て、会社の存在意義についての深い議論につながっています。

また、役員だけで決めるのではなく、各部長や課長へのヒアリング、さらには全従業員へのアンケートやフォーカスインタビューを実施し、全社全員で「ファインズが目指すべき姿」を考え抜きました。このプロセスを経て、パーパスを策定しました。

── そのプロセスの中で、三輪社長がハッとさせられたことや気づきはありましたか?

三輪 役員や部長へのヒアリングを通じて、自分が目先のことばかりを見て、仲間のことを十分に考えられていなかったことに気づきました。業績を上げることに集中するあまり、役員や従業員の満足度をおろそかにしていたと、深く反省しました。まさに裸の王様になっていたと痛感します。

── その後の行動に変化はありましたか?

三輪 パーパス策定や現在の経営改革において、私が先頭に立つのではなく、役員や部長が主体となり従業員の声を聴くことを重視しています。トップダウンの目標設定からボトムアップの目標設定へと移行し、エンゲージメントサーベイの実施やOKR(目標と結果の設定)の導入、1on1の実施などを進めています。

研修会を重ね、従業員を巻き込みながら進めており、私はその姿を見守り、会社の状況を客観的に把握できるようになりました。

── パーパスと現場の文化がぶつかり合うことはありませんか?

三輪 もともと「お客様ファースト」「お客様の成功を実現する」という精神は持ち合わせていました。そのため、パーパスで「企業と地域社会の未来に」と言語化したことで、会議体などでも「なぜこれを行うのか」「お客様のためか」「地域社会のためか」といった議論がより深まっています。

ミーティングでは積極的にパーパスを絡め、自分たちがどうあるべきかを立ち戻って考えることができるようになりました。これにより、個人の感情に流されず、お客様や地域社会のためになる行動を選択できるようになったと思います。

地域社会のために自由に発想し、行動する会社に

── パーパスが明確になったことで、さらなる成長のタイミングが到来したという中、今後の資金戦略、M&Aや業務提携など、どう考えていますか?

三輪 手元にある現預金を活用し、M&Aや資本提携を積極的に行うことで、さらに会社をドライブさせていきたいと考えています。

パーパスを明確にしたことで、投資戦略も社内で明確になってきており、積極的な投資も検討したいと思っています。

── 未来を描く中で、三輪社長ご自身の役割は何だと考えますか?

三輪 私の役割は、方向を示すことです。私自身がどのような会社でありたいと思うのか、事業を通じてどのような未来をつくりたいのかを示す必要があります。2030年に向けた中期経営戦略などを示し、メンバーがそれを実現するための戦略・戦術を組んでいく、という構図が理想です。

── それを踏まえて、社員に求めることは何でしょうか?

三輪 「仕事は自ら進んでやろう」ということです。いわれてやるのではなく、自分で考えて行動することが重要です。いわれたことをこなすだけでは、作業になってしまいます。どうせ仕事をするなら、自分がどうしたいのかを考え、ディスカッションしながら進めることが大切です。

250名を超える従業員一人ひとりの考え方が、会社にとっての新たな発見につながります。自分の考えをオープンにでき、コミュニケーションができるメンバーを求めています。発想力や考える力をコミュニケーションの機会から広めるため当社で行っているのが、1on1や斜め1on1(部署横断の1on1)などです。

お客様のため、地域社会のためになることを、自由に発想し、行動できる会社にしていきたいです。

氏名
三輪幸将(みわ ゆきまさ)
社名
株式会社ファインズ
役職
代表取締役社長

関連記事