⑧アクティビストが猛威を振るう
フジ・メディア・ホールディングスは12月半ば、旧村上ファンド系投資会社から株式を最大33.3%まで買い増すとの意向が示されたと発表した。旧村上系は現在、フジ株式の17%余りを保有するが、その過半を個人で共同保有し、筆頭株主となっているのがアクティビスト(物言う株主)として知られる村上世彰氏の長女の野村絢氏だ。
野村氏ら旧村上系はフジに対し、放送事業と関連性が薄い不動産事業の切り離し・売却などを通じた一定の株主還元策を示せば、買い増しを撤回するとしている。さらにその後、買い増しの方法として1株4000円でのTOB(株式公開買い付け)を行う用意があることを公表し、フジ側への圧力をさらに強めた。
「フジテレビ」問題で経営の屋台骨が揺れるフジ。旧村上系によるフジ株式の5%超の新規保有が判明したのは4月初め。その頃、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが企業統治の不備や不動産に傾斜したフジの経営に批判のトーンを高めていた。これに乗じる形で旧村上系が瞬く間に17%以上に買い増したのだった。
2025年中の旧村上系による新規保有は王子ホールディングス、高島屋、マンダム、ディー・エヌ・エーなどフジを含めて15銘柄以上。いずれも野村氏が共同保有者として名前を連ね、父親の村上氏から“代替わり”を印象づけた。
日本企業が最も警戒するアクティビストの一つ、香港オアシス・マネジメントも動きを活発化させた。化学品メーカーの太陽ホールディングス、ドラッグストア大手のクスリのアオキホールディングスの株主総会ではそろって社長の取締役解任議案を株主提案。いずれも否決だったが、太陽HDでは可決寸前の49.9%まで賛成票を集めた。
そのオアシスは今年、カルビー、芝浦機械、カシオ計算機、堀場製作所、イオンフィナンシャルサービス、カカクコムなどで株式の新規保有が判明した。
⑨“M&A巧者”ニデック、連勝ストップ
モーター大手のニデックは「M&A巧者」の異名を持つ。これまで国内で手がけてきたM&Aは75件に上る。積極的なM&A戦略を成長の原動力としてきたことで知られる同社だが、初の苦杯をなめた。
5月、工作機械大手の牧野フライス製作所の完全子会社化を目的に実施中だったTOB(株式公開買い付け)を撤回したのだ。牧野フライスが導入した買収防衛策について、ニデックは差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請していたが、これが却下されたのを受けて矛を収める形となった。
約4カ月半に及ぶ両社の攻防戦の渦中、ホワイトナイト(友好的な買収者)として名乗りを上げたのがアジア系投資ファンドのMBKパートナーズ。手続きの遅れでスケジュールがずれ込んでいるが、2026年の早い時期にMBKによるTOBが始まる見通しだ。
ニデックが牧野フライスに1株1万1000円でのTOBを提案したのは2024年12月末。TOBに関する事前の通知や協議は行わず、同意なき買収を提案した。買収額2570億円に上り、ニデックとして過去最大級の案件だった。
ニデックは賛同を得るために十分な協議期間を設けるとしてTOB開始日を4月4日に設定。牧野フライスは当初から5月9日以降に延期するよう繰り返し求めたが、ニデックは予定通りにTOBを始めた。
これに対し、牧野フライスは複数の第三者から完全子会社を目的とする買収の初期的な意向表明書を受け取ったこと明らかにし、各提案を比較検討するための時間を確保する必要があるとしていた。
ニデックはその後、不適切会計問題が発覚し、経営が暗転した。10月には東京証券取引所が内部管理体制に重大な不備があるとしてニデック株を特別注意銘柄に指定。
さらに12月に入り、ニデック創業者でカリスマ経営者とされてきた永守重信代表取締役グローバルグループ代表(取締役会議長)が辞任(19日付で非常勤の名誉会長)し、会社の行く末が危ぶまれる非常事態となっている。