印刷業界が成熟産業といわれる中、印刷後の後加工を担う「ポストプレス」の領域で独自のポジションを確立し、成長を続ける株式会社ホリゾン。1946年の創業から、幾度もの事業転換や危機を乗り越え、強固な地位を築いている。
20年近く前からデジタル化の波をいち早くとらえ、業界のスタンダードを自ら創り出してきた同社は、これからどこへ向かうのか。代表取締役社長である堀 英陽氏に、これまでの歩みとターニングポイント、そして「ポストプレス機器業界の世界最大手」を目指すための経営戦略と、その根底にある哲学を聞いた。
企業サイト:https://www.horizon.co.jp/
目次
「国内に競合は数えるほど」縮小する印刷市場でホリゾンが成長を続ける理由
── ホリゾンの創業から現在までの事業変遷について教えてください。
堀氏(以下、敬称略) 1946年に創業し、当時は教育向けの理科学機器の製造や修理を小さく行っていました。さらなる飛躍を目指し、現在の事業である印刷の後加工機器、いわゆる「ポストプレス機器」の分野に大きく舵を切ったのが、今から50年ほど前です。
それを機に自社ブランド「ホリゾン」を立ち上げ、急速な成長を遂げることができました。しかし、現在では我々のメインのお客様である印刷市場は、先進国においては成熟産業であり、業界のパイ全体としては縮小傾向にあります。
── 市場がシュリンクする中で、どのように成長を続けてきたのですか。
堀 1990年代、デジタルプリンター黎明期のかなり早い段階から、デジタルプリンターに対応したポストプレス機器の開発を進めてきました。
その結果、現在ではデジタル印刷機に精通したポストプレス機の有力メーカーとして、どのプリンターメーカーとも中立的な立場で協業関係を築いています。
近年では、印刷データと製本機を連携させ、上流から下流まで一貫したデータ管理によって生産を行うという取り組みを、プリンターメーカーさんと連携しながら進めています。
── 上流工程との連携が、他社に対する大きな優位性になっているのですね。
堀 はい。たとえば中国の新興メーカーなども存在しますが、上流の印刷工程との連携や、販売戦略面での協業関係を構築するところまで考えると、簡単に模倣ができる状況ではありません。
また、成熟・縮小している産業に、新たに参入してくる企業も少ない。非常に参入障壁が高い業界になっていると考えています。その中で我々は一定以上のシェアを占めることができており、市場全体としては縮小する中で、残ったパイをさらに獲得するという形で、安定した成長を遂げてきました。
業界の常識を覆したデジタル化への早期転換 倒産の危機から生まれた自社ブランド
── デジタルへの転換が大きなターニングポイントだったのでしょうか。
堀 そうですね。近年のことで言えば、それが一番大きいと思います。20年近く前になりますが、国際的な展示会で、デジタルプリンターと当社の製本機をインラインで直接つなぎ、印刷から製本までを一気通貫で本の形に仕上げるというソリューションを提案しました。
正直なところ、当時はまったく売れませんでした。しかし、その提案を起点として、印刷業の生産工程に対して、より合理的な形でお役立ちをしようという取り組みを始めてきたのが、大きなポイントだったと思います。
── 当時、同業他社がある中で、いち早くそうした転換ができた背景には何があったのでしょうか。
堀 歴史があり成熟している業界だと、伝統的なやり方に固執してしまいがちな傾向があり、どの業界にもあることだと思います。印刷、製本業界も何百年もの歴史を持つ業界で、当時も、そして今でもそういった面は見え隠れします。
それに対して、業界の中では後発のメーカーであると認識していた当社は、伝統的な常識やしがらみに縛られず、あくまでフラットに、広い目で見て、どういう価値提供がお客様のためになるのかということを合理的に考えた結果でした。
── 創業以来、会社が直面した最も大きな壁はどのタイミングでしたか。
堀 当社の社名にもなっている自社ブランド「ホリゾン」を立ち上げるきっかけになった、50数年前のオイルショックの頃ですね。それまで当社は自社ブランドを持たず、他社のOEM製造を手がけていました。
しかし、オイルショックの影響でOEM元からの注文がキャンセルになり、倒産の危機に直面しました。その時に、OEMから脱却して自社ブランドを立ち上げ、自分たちで製品を販売するという方向に舵を切った。そこが一番大きな壁であったと思います。
── その危機を乗り越えた経験が、会社のDNAとして今も受け継がれているのでしょうか。
堀 そうですね。「環境の変化に合わせて、自らを変化させ続ける姿勢」というDNAとして、現在も強く受け継がれていると言えます。私が普段から大切にしていることは、「自分たちで変化する」ということです。
周りが変化しているからこそ、自分たちも変化に対応し、さらには『自分たちで変化を生み出していく』姿勢こそが、企業の持続性にとって最も重要な要素になると考えています。
目指すは世界最大手。M&Aや協業で「顧客価値の最大化」を追求する
── 市場が縮小する中で、どこに注力し、どのように優位性を築く考えですか?
堀 一番は、主力のポストプレス機器事業において、お客様やマーケットに向けたトータルの価値提案をさらに高めたいと考えています。
たとえば、IoTの側面では、工場全体の設備の稼働状況や生産工程を見える化し、分析してレポートをお客様に返すといったクラウドサービスを強化しています。
ハードウェアの面では、製本した「その先」です。本を作って終わりではなく、包装から配送準備、あるいは段ボール梱包まで一貫して担う。印刷機のさらに次の工程まで手がけます。
── 事業領域をどんどん広げるということですね。
堀 はい。ただ、そうしたことをすべて自社の力だけでやることはできません。ですから、垣根を作らずにさまざまなメーカーと協業しています。。
M&Aに限らず、多くの会社との協業関係を強化し、お客様にさらに価値あるソリューションを提案する。これらによって目指すのは、お客様にとっての価値の最大化であり、ひいては産業自体の活性化です。
そうした産業の発展への貢献が、「パイは小さくなるがシェアを高める」ということにもつながる。このポストプレス機器業界の中での「世界最大手」を目指します。
成果に責任を持つ組織への変革
── 事業の成長とともに、組織も拡大されていると思います。現在の組織における強みと課題についても教えてください。
堀 私が入社した10年前、グループの従業員は500人ほどでしたが、今では国内だけで770人ほどにまで増えています。創業期と比べると、全体としての意思統一や、規律を守って同じ方向を向くことが難しくなっており、「大企業病」のような、自分ごと感が薄れてしまうといった課題は感じています。
一方で、非常に自由度が高く、一つの部門がまるでベンチャー企業のように、それぞれのメンバーが最大限にスキルと能力を発揮して動き回れているような部署もあります。「自由度の高さ」と「統制」のハイブリッド的な良さをより伸ばし、改善すべきところは改善することが今の課題です。
── 幹部層のメンバーにはどのようなことを求めていますか?
堀 特に幹部には、それぞれの部門のアウトプット、つまり成果の見える化と、それに対して責任を持つことを強く求めています。
企業の代表を引き継いだからには、部門のトップには、自部門の業績に責任を持ってもらう。それが会社全体の業績向上につながり、ひいては一般社員への還元にもつながると考えています。
ですから、まずは成果を数値化し、見える化する。そして、目標をしっかりと握り合う。そういった基本的なところを、今まさにコツコツとやっているところです。
「経営者の器を超えた成長は難しい」自身の人生を充実させることが、会社の持続的成長につながる
── 今後のアライアンス戦略についてはどのように考えていますか。
堀 M&Aの戦略としては、基本的に本業とのシナジーが見込めて、かつ財務が安定した企業とのお付き合いを大事にしています。
組みたいのは「ものづくり」に関連した企業です。我々は製造拠点が1つしかないので、違う分野のものづくり企業と提携することで、日本のものづくりの力を、我々が持つ世界の販売チャネルに乗せて、さらなる飛躍が狙えればと考えています。
── 変革をリードする上で、大切にされていることは何ですか。
堀 「経営者の器を超えた企業の成長は難しい」という言葉を意識しており、自分が想像できない規模の成長を無責任に目指すのではなく、自分が責任を持てる範囲で、企業の持続性をいかに高めるか、ということを重視しています。
とはいえ、維持、継続は衰退だと考えているので、持続のための継続的な成長をどうやって生み出すか。そこにつながる一番大事なキーワードが、やはり「変化」や「変革」なのです。
経営者としてどうあるべきか、というよりは、まず自分自身が楽しく、幸せな人生を送れるか、ということを大事にしています。
日常のこと、家族のこと、趣味や遊びのこと。いろんなものがあって自分が形作られている。自分の人生自身を充実させたいと、自信を持って言いたいですし、それを従業員にも問いかけることで、健全な組織運営を目指しています。
- 氏名
- 堀 英陽(ほり ひではる)
- 社名
- 株式会社ホリゾン
- 役職
- 代表取締役社長

