本記事は、安達 裕哉氏の著書『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
人に仕事を依頼するのが上手な人は、こうやって頼んでいる
人に仕事を依頼するのが苦手な人はけっこういる。
たとえば、管理職になったにもかかわらず「自分でやったほうが早い」と手を動かしてしまう人が数多くいるが、それではマズい。人にやってもらわなくてはならないのが管理職である。
したがって、相手にこちらの依頼を確実に遂行してもらうためのコミュニケーションスキルは、必須であるとともにマネジメントの要諦でもある。
だが、「こちらの依頼を確実に実行させる」とひと口にいっても、その実践はそれほど簡単ではない。
簡単な打ち込み作業を、あなたがアシスタントにお願いするとしよう。
【私】こちらの営業資料のデータを、急ぎで、エクセルに打ち込んでほしいんだけど
【アシスタント】今日はけっこう忙しいんですが……
【私】夕方までになんとか!
【アシスタント】わかりました……
しばらくしたあとに様子を見ると、期待どおり打ち込まれている…… と思いきや、少し見ていくとなんかデータがおかしい。
「ここ、間違っていますよ」とアシスタントに指摘すると、「あ、すみません」と直してくれた。
だが、あなたは少し不安だった。もう数箇所、データを細かく見ていくと、ほかの部分も少しずつミスがある。
おいおい……、ミスだらけじゃないか……。不安になってアシスタントの人を呼ぶ。
【私】これ、ほかの場所にもけっこうミスがあるけど、きちんとチェックした?
【アシスタント】いえ、急ぎだとうかがったので、ひとまず打ち込みました。ミスが多少あるかもしれません
【私】「かもしれません」じゃないよ。大事な営業のデータだよ。間違っちゃ困るんだよ
アシスタントはムスッとしている。
【アシスタント】わかりました。もう少しお時間をいただけますか
【私】こんなの、言わなくてもわかるだろうに……
さて、何が悪かったのだろうか。
もちろん、アシスタントの責任にすることもできる。「仕事に取り組む姿勢がダメなのだ」と糾弾することもできよう。
だが、このアシスタントの責任にしても、同じようなことが再発する可能性はある。
実際、あなたが本当に得たいのは「だれの責任かを特定する」ことではなく、「同じミスを起こさないこと」ではないだろうか。
そう考えていくと、これは「頼み方」がマズいという結論に達する。つまり、悪いのは発注者であるあなただ。
発注者の頼み方が変わらない限り、また同じことが起きる。このアシスタントが起こさなかったとしても、人が替わればまた起きる。
もちろん、「いやいや、どう考えてもミスをしたアシスタントが悪いだろう」と言う方も多いと思う。
しかし、たとえこのアシスタントがミスなく仕事をしていたとしても、さきほどの「打ち込んでほしいんだけど」という依頼は、ある意味「最低の依頼の方法」といえる。
なぜなら、「仕事の品質管理の水準」を相手に委ねていることになるからだ。
じつは「品質管理を相手に委ねる」のは、最悪の依頼の方法である。
私は新米のコンサルタントだったころ、上司からこう習った。
【上司】コンサルの現場では、お客さんに宿題を出すだろう
【私】はい
【上司】たとえば、営業の業務フローをつくってほしいとき、どうやって宿題を投げる?
【私】ええと……「ぎ、きょ、業務フローをつくってほしいんですが、お願いできますか?」でしょうか……
【上司】そんなんでお客さんがキチンとつくってくると思っているのか!
【私】す、すみません……
【上司】依頼というものは、どの水準のものをつくってほしいのか、きちんと確認をしなければ、絶対にきちんとしたものはあがってこない
【私】はい……
【上司】フローをつくるときは、どの形式で、どの粒度で、どの範囲でつくるか、そう言ったことを細かく定めないとめちゃくちゃになるぞ。依頼前にフォーマットをきちんと協議するんだ
品質管理を相手に委ねてしまう依頼のしかたは、たとえどんな水準のものがあがってきたとしても文句は言えない。それは「発注者がサボっているだけ」なのだ。
ただ、勘違いしないでいただきたいのは、「品質管理の水準」は相手に示すが、「品質管理の方法」は相手に任せてもいいということだ。
管理方法まであれこれ指示をすると、箸の上げ下ろしまで細かく指示をすることになり、かえって効率が落ちる。
よって、さきほどの依頼であれば、このように頼むのが望ましい。
【私】営業の分析用の資料を、急いでつくってほしい。明日の夕方に使うから急ぎで。精緻に分析するための資料だから、ミスが絶対にないようにお願いしたい
【アシスタント】わかりました
【私】ミスをなくすために、どうするかイメージは湧いている?
【アシスタント】はい、前にもやりましたから。表のレイアウトはこの資料と同じでもいいですか?
違うとチェックしにくくなるので。あと、私ともう1人で、ダブルチェックをかけたほうがいいですか?
【私】うん、そうしてほしい
プロジェクトマネジメントにおける世界標準の規格「PMBOK」の「プロジェクト品質マネジメント」の項目の一節には、最新の品質マネジメント手法では「検査よりも予防」が重要であると述べられている。
品質とは計画され、設計され、プロジェクトのマネジメントやプロジェクトの成果物に組み込まれるものであり、検査によって実現されるものではない。
トヨタ自動車は「品質は上流工程である設計でつくり込む。検査では品質は向上しない」というコンセプトを持ち、設計を品質管理の要とする。
そう考えれば、あがってきた成果品に対して、作業者であるアシスタントにガミガミ言ったとしても、品質はほとんど向上しないことがよくわかるだろう。
依頼における品質管理は、最初の段階で「どの程度のものがほしい」かをきっちり明確に示すことが肝心なのだ。
適当に依頼しておいて、「こうじゃないんだよなぁ〜」とか言ってしまう管理職は、品質管理の初歩から、勉強し直したほうがいいだろう。
話しながら意識していること
仕事を依頼するときは「品質管理の水準」を相手に示す
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