本記事は、安達 裕哉氏の著書『コミュ力が高い人が話しながら意識していること』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

コミュ力が高い人が話しながら意識していること
(画像=anai/stock.adobe.com)

言語化が苦手な人と話すときの3つの対処法

さまざまな会社に訪問していると、それなりの頻度で「言語化が苦手な人」に遭遇する。
こんな具合だ。

【彼】プロジェクトの基本要件を1つにまとめてマネジメントしたいんだけど。たとえば、一部のプロジェクトで必要なリソースを最初に1つの大きな枠組みで決めて、それを全部に使う、そんな感じ。

「言葉にできてるじゃない」と思う方もいるかもしれない。
だが、本当に言語化の苦手な人とは、「言葉にはできているのに、その内容が、ほかの人にとって難解すぎる人」なのだ。

「言葉が出てこない」「説明しにくい」「なんと言えばいいのか迷う」というのは、じつは「言語化の苦手な人」よりもかなりマシである。
なぜならば、「言語化できていない」ことを自分自身で認識できているからだ。
それに対して、真に言語化の苦手な人は、自分自身で「言語化が苦手」と気づいていない可能性が高い。

前職にもこんな人がいたが、「あの人、頭がよすぎて、言ってることがわからないよね」とまわりから言われていた。
じつは、難解な理由を「相手の頭がよすぎるから」と決めつけている人がもっとも言語化能力が低いのだ。
そして、自分自身の言語化能力の低さに気づかないので、それを修正する機会もない。
こうして、「『何か言いたい』ことだけはわかるけど、何を言ってるのかわからない人」が誕生する。

しかし、いったいなぜ、「言語化能力に難のある人」の言ってることはわかりにくいのだろうか。

さまざまな理由があると思うが、ケースとして多いのが、「独自言語」「具体性の欠如」「不明瞭な指示語」の3つだ。
たとえばさきほど例にあげた短文のなかにも、次のように難解な言葉が6つも出てくる。

  • 「プロジェクトの基本要件」って何?
  • 「マネジメント」とは具体的には?
  • 「一部の」と言っているが全部もわからない
  • 「プロジェクトで必要なリソース」とは?
  • 「大きな枠組み」という言葉が抽象的すぎる
  • 「それ」は何を指す?

だからまるで、専門外の論文を読んでいるかのような気持ちになる。
論文は厳密さを追求するから言葉が難解になるが、彼らの言葉は厳密さによって難しいのではなく、独自の言語体系と、独自の辞書をもっているから難しいのだ。

業を煮やして、「プロジェクトの基本要件ってなんですか?」と聞き返しても、「成功に向けて不可欠なものの集合体です」とか「複数の条件がそれらをすべて満たすための基準やルールみたいなものです」といった、わけのわからない回答がまた、返ってきてしまう。
泥沼である。

こうして彼は「何を言っているのかわからない人」として認識され、コミュニケーションコストが高いので、社内からもお客さんからも、徐々に相手にされなくなっていく。
ただし、こういう人が上司だったり、お客さんだったりすると「相手にしない」というわけにもいかない。
本人が必死に何かを伝えようとしているのにもかかわらず、「何言ってるのかわからないので無視」も、かわいそうである。
そういう状況もあり、過去に私は「言語化能力に難のある人」への対処法も習った。
それが、次の3つである。

① 書き出す
残念ながら、会話でのやりとりが「言語化能力に難のある人」とはかなり難しい。
日常会話は「なんとなく」でもいいが、仕事ではそうはいかないからだ。そんなときは「その人の話を残らず書き留める」ことが推奨されていた。
時間はかかるが、あとからモメないように、書かれた1つひとつの言葉の定義を確認しながら進めたほうが、結果的に手戻りが少ない。
だから、さきほどの「プロジェクトの基本要件って何?」から、1つひとつ定義と詳細化を行いながら、話をしていく。いわば言語化能力に難のある人の「独自言語」の辞書をつくるのだ。いったん辞書ができてしまえば、あとはけっこう楽ができる。

② 具体的なエピソードを聞く
話をわかりにくくしている大きな理由である「具体論の欠如」については「具体的にはどのようなケースが当てはまるのでしょう?」などと聞くところからはじめる。
言語化に難のある人ほど、難解な言葉を頻繁に使うが、「独自の解釈」でその言葉を使っているケースが多いため、定義を確認する必要がある。
ただし、「定義は何ですか?」と聞いてはいけない。
定義をうまくできる人は言語化能力の高い人であり、その言語化能力に難のある人に定義を聞いても泥沼化しやすい。
その場合に役立つのは、「具体的なエピソードを聞くこと」である。
感覚的なものであっても、エピソードがあればかなりの役に立つ。たとえば、次のように聞けばいい。

【私】1つにまとめてマネジメントしたい、とおっしゃいましたが、具体的に◯◯というプロジェクトに当てはめると、どんなことが行われていれば、マネジメントできていると判断しますか?

エピソードから定義をすること自体は、こちらの仕事として引き受けよう。

③ 指示語は都度、確認する
「それ」とか「あれ」といった、指示語は、書き出しながら確認を取る。
面倒かもしれないが、「それ」の意味することが、不明瞭になっているケースが極めて多いため、妥協をするとあとで困るのは自分だ。

【私】すみません。確認ですが、「それ」というのは何でしょう……?
【私】「あれ」とおっしゃいましたが、さきほど言っていた「△△」のことでしょうか?

このように、あと回しにせず、そのつど確認をしたほうが無難だ。
要は、言った本人も「それ」が何を指すか、よくわかっていないことが多いのだ。
現代文の試験に「指示語」の問題が出ていたことは、やはりそれなりの理由があったのだな、と思う。

以上のように、「言語化が苦手な人」とのコミュニケーションには大変なコストがかかる。
彼らは、決して頭が悪いわけではないが、思考と表現が噛み合わないため、「受け手がその言葉をどうとらえているのか」がうまく想像できない人たちなのだ。

話しながら意識していること
言語化が苦手な人と話すときは
「書き出し」「具体化し」「指示語を確認する」

コミュ力が高い人が話しながら意識していること
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。Deloitteで12年間経営コンサルティングに従事し、社内ベンチャーの立ち上げにも参画。東京支社長、大阪支社長を歴任。1,000社以上にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8,000人以上のビジネスパーソンに会う。その後独立し、オウンドメディア支援の「ティネクト株式会社」を設立。コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行なう。自身が運営するメディア「Books&Apps」は月間200万PVを超え、ソーシャルシェア数千以上のヒット記事を毎月のように公開。「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」としておもしろく役立つコンテンツを届け続けている。2023年に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行なう「ワークワンダース株式会社」を設立。著書に『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)などベストセラー多数。なかでも『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は、2023年、2024年に日本で一番売れたビジネス書(トーハン・日販調べ)となった。

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