1962年創業の株式会社東京アロエは、60年以上にわたりアロエ製品を製造・販売し続ける老舗化粧品会社。最大の強みは、自社農園での有機栽培にこだわった原料から製品までの一貫した品質管理である。
2023年、代表取締役社長に就任した鈴木真矢氏は、長年の愛用者との関係性を今後も保つため、リブランディングを進行中だ。福島大学との共同研究では世界で初めてアロエ成分の可視化に成功するなど、科学的エビデンスを重視し、アロエの新たな価値創造を目指す。
若年層への訴求、2年以内の海外進出も視野に入れる鈴木氏に、これから百年企業を目指す上でどのような施策を展開するのか、聞いた。
企業サイト:https://tokyo-aloe.jp/
60年超続けるアロエ関連の製品づくりと販売
── 1962年創業、1969年設立と、長い歴史のある東京アロエですが、創業の経緯を教えてください。
鈴木氏(以下、敬称略) 東京アロエの原点は、創業者である祖母が、戦後の厳しい時代のなかでアロエの可能性に希望を見いだしたことにあります。祖母は、アロエ研究者の間宮敏雄先生に学びながら、その魅力を深く知り、「この植物の良さを多くの人に届けたい」という思いで事業を始めました。
アロエは昔から暮らしの中で親しまれてきた植物ですが、祖母はその力を強く信じ、日本全国に広めることに尽力してきました。その思いを父が受け継ぎ、今は私がそのバトンを受け取っています。
私にとって東京アロエは、単なる化粧品会社ではなく、家族の思いと歴史が積み重なってできた会社です。だからこそ、このブランドを次の時代へしっかりつないでいきたいと思っています。
── 別の業界出身とのことですが、その経験は現在の経営にどのように生きていますか?
鈴木 レコード会社で通販事業に携わったことや、広告代理店を立ち上げた経験は、今の経営にとても生きています。
レコード会社では、どう見せれば人の心が動くのか、どう届ければ商品を手に取っていただけるのかを学びましたし、広告の仕事では、言葉の伝え方や世界観のつくり方、販促の考え方を身につけました。
メーカーは、良いものをつくるだけでなく、それをきちんと価値として伝え、お客様のもとへ届けるところまでが仕事だと思っています。異業種で学んだことが、今の東京アロエのリブランディングにもつながっていると感じています。
── 数あるウェルネス・化粧品ブランドの中で、東京アロエの最大の強みは何でしょうか?
鈴木 最大の強みは、やはり自社農園でアロエを育てていることです。原料からこだわれるメーカーは多くありません。土づくり、水、育て方まで、自分たちで責任を持てるのは大きな価値だと思っています。
農園は私のいとこが所長として日々向き合ってくれていて、本当に愛情を持ってアロエを育てています。そうした現場があるからこそ、私は自信を持って商品をお届けできます。
それに加えて、60年以上積み重ねてきた信頼も、東京アロエの大きな財産です。長く使い続けてくださるお客様がいて、親子三世代でご愛用くださる方もいる。その積み重ねは、簡単にはつくれない強みだと思っています。
大学との共同研究で科学的エビデンスを獲得
── リブランディングという決断は、どのような意識から生まれたのでしょうか?
鈴木 ひと言でいえば、次の時代へきちんと手渡していくためです。
東京アロエは、祖母から父へ、父から私へと受け継がれてきた会社です。そして、お客様もまた、長い時間をかけて東京アロエを愛してくださっています。50年以上使い続けてくださる方や、親子三世代でご愛用いただいている方もいらっしゃいます。
以前、90代のお客様から「もう先が短いから、一つでいいわ」とお電話をいただいたことがありました。そのとき、この商品は単なるモノではなく、その方の人生に寄り添ってきた存在なのだと感じ、胸がいっぱいになりました。
だからこそ、昔からの良さは守りながら、今の時代に合った形に整え直し、次の世代にもちゃんと届くブランドにしたい。その思いが、リブランディングの出発点です。
── 取り組みの一つとして、福島大学との共同研究によるアロエ成分を世界で初めて可視化に成功しましたが、科学的アプローチに取り組まれた狙いを教えてください。
鈴木 私たちはずっとアロエの良さを信じてきましたが、それを今の時代に伝えていくには、感覚や経験だけでなく、きちんとした科学的な裏付けも必要だと考えました。
「東京アロエのアロエは何が違うのか」「どういう育て方をして、どんな価値があるのか」を、言葉だけでなく、研究として示していきたい。その思いで大学との共同研究を進めています。
私たちのアロエは、自社農園で手間をかけて育てているものです。だからこそ、その違いを見える形にしていきたい。昔から積み重ねてきたものを、今の言葉と今の方法で証明していくことが、これからのブランドづくりには欠かせないと考えています。
また、早稲田大学との研究では、アロエとオートファジーに関する可能性も見えてきており、さらに深めていきたいと思っています。
── 研究成果は、今後のマーケティングや製品開発にどう活用しますか?
鈴木 製品開発はもちろんですが、原料としてのアロエそのものの価値を、もっと広く発信していきたいと考えています。
完成品としてお客様に届けるだけでなく、私たちが育てているアロエ自体の魅力や可能性を、原料の段階から伝えていくことで、新しい展開も生まれると思っています。
感覚的な良さだけではなく、きちんと語れる素材として育てていくことが、東京アロエならではの価値創造につながると感じています。
2年以内に海外進出へ
── 今後の事業展開やビジョンについてもお聞かせいただけますでしょうか?
鈴木 中期的には、東京アロエというブランドを、日本だけでなく海外にも発信していきたいと考えています。2年後までには、その一歩をしっかり形にしたいと思っています。
現在、ブランドマークやロゴを一新しており、ニューヨークのMoMA美術館でデザインを手掛けた方に制作をお願いしています。パッケージデザインも含めて、より今の時代に合った、感度の高いブランドへと進化させているところです。
また、エコサート認証やコスモス認証の取得を視野に入れた、オーガニックでヴィーガン処方の製品開発も進めています。環境にも人にもやさしい新しいラインとして展開していく予定です。
一方で、どれだけ形を変えても、根本にあるのは変わりません。自社農園でアロエを育て、その魅力をまっすぐ届けることです。
伝統と新しさ、その両方を持ちながら、日本から世界へ発信していきたいと考えています。
── 先ほどのオートファジーの研究成果は、アンチエイジングという観点からも非常に注目されそうです。
鈴木 そうですね。オートファジーは細胞のリサイクルの仕組みともいわれていますし、多くの方が若々しさや健やかさに関心を持つ今、とても可能性のあるテーマだと思っています。
ただ、私が大事にしたいのは、単に若く見えることだけではなく、毎日心地よく、自分らしくいられることです。肌の調子が整うと、気持ちまで前向きになる。そういう体験を、アロエを通じて届けたいと思っています。
アロエは派手さはないかもしれませんが、毎日の暮らしにじんわり寄り添ってくれる植物です。その価値を、もっと今の時代の言葉で伝えていきたいです。
── 今後のマーケティング戦略についても教えてください。
鈴木 これまで東京アロエを支えてくださったのは、長年ご愛用くださっているお客様です。その存在は本当にありがたく、これからもずっと大切にしていきたいと思っています。
一方で、百年企業を目指すなら、若い世代にもアロエの魅力を知っていただかなければいけません。そのためには、中身が良いだけではなく、香りや使用感、デザイン、パッケージ、世界観まで、すべてにこだわる必要があると感じています。
昔ながらの良さを持ちながら、今の人が「使ってみたい」と思えるブランドにしていく。その両立に本気で取り組んでいます。
── 社内を巻き込むための工夫や、社員の方に伝えているキーワードなどはありますか。
鈴木 よく伝えているのは、「自分がお客様だったら、本当に使いたいと思うものをつくろう」ということです。
どんなに良い商品でも、つくる側が心から良いと思っていなければ、その熱は伝わらないと思うんです。まずは自分たちがファンになること。そして、その思いを一人でも多くのお客様に届けること。それがものづくりの基本だと考えています。
── マーケティング戦略において、現在、直面している壁や悩みはありますか?
鈴木 今は本当に商品があふれている時代なので、その中で選ばれるには、ちゃんと理由が必要だと感じています。
でも東京アロエには、流行だけではない強みがあります。長く使ってくださるお客様がいて、積み重ねてきた歴史があって、自社農園という本物の土台がある。その価値を、きちんと伝え切れていないことが、今の課題でもあると思っています。
だからこそ私は、ただ新しいことをするのではなく、東京アロエにしかない価値を、今の言葉と今の表現で磨き直していきたいです。
── お客様に同じ商品を買い続けてもらうのは難しいのでしょうか。
鈴木 難しさはあります。今は次々と新しい商品が出てきますし、お客様の目も新しいものへ向かいやすい時代です。
その中で選び続けていただくには、「変わらない安心感」がすごく大切だと思っています。東京アロエには、長年使い続けてくださる理由がある。その理由を丁寧に伝え続けることが、私たちの役目だと感じています。
── 資金戦略についても教えてください。
鈴木 これまでは内部留保を中心にやってきましたが、これからは補助金や助成金の活用、大学や外部パートナーとの連携なども含めて、もっと柔軟に考えていきたいです。
自社だけで完結するのではなく、志を同じくする方々と組みながら、新しい価値を一緒につくっていく。そのほうが、東京アロエらしい未来の広がり方ができるのではないかと思っています。
── 商品提供以外で、お客様とのつながりを深めるための戦略はありますか?
鈴木 本社のある練馬区に、2026年2月4日、サロンをオープンしました。以前は店舗があり、お客様と直接お話しする機会がありましたが、その価値をあらためて感じ、今の時代に合う形で再びお客様とつながれる場をつくりたいと考えたのがきっかけです。
私は、お客様の声を直接伺うことがとても大事だと思っています。サロンは、商品を販売するだけの場所ではなく、東京アロエの世界観や思いに触れていただき、お客様との距離をより近くできる場にしたいと考えています。
実際に対面でお話しすることで、使い心地や期待されていること、日々のお悩みなど、数字だけでは見えない一次情報に触れられるようになりました。こうした生の声を、今後の商品づくりやブランドづくりにも生かしていきたいと思っています。
── リアル店舗での一次情報に触れることは重要ですね。店舗を持たない現状では、お客様の声をどのように拾い上げていますか?
鈴木 今もお電話やお手紙、FAXでのご注文をたくさんいただいています。特に長年のお客様は、お電話で直接お話ししてくださることも多いです。
そうしたお声には、数字では見えない大事なヒントがたくさんあります。便利さだけでは拾えない本音や思いがあるので、私はそうした声をとても大切にしています。
── すでにファンになってくださっているお客様が、他社ではなく東京アロエを選ぶ決め手は何だと分析していますか?
鈴木 やはり「変わらない安心感」と「積み重ねてきた歴史」だと思います。
今はデザインや見せ方も大切ですが、それだけでは長く選ばれ続けることはできません。東京アロエには、“ずっとそこにある”という信頼があります。それは数字にはしにくいですが、ブランドにとって何より強い財産だと思っています。
── 百年企業を目指す上で、今後も続けるものと、変えるべきものについて、教えてください。
鈴木 続けるべきものは、安心・安全で、信頼できるものづくりです。これは絶対にぶらしてはいけないと思っています。
一方で、変えるべきものは、伝え方や見せ方、組織のあり方です。昔のやり方をただ守るのではなく、今の時代に合う形に変えていかなければ、良いものがあっても届きません。
私は「温故知新」という感覚を大事にしていて、守るものは守り、変えるものは変えていきたいと考えています。
── 今後の組織体制について、課題感や乗り越えるべき壁はありますか?
鈴木 人手不足はありますし、少数精鋭でやっていく難しさもあります。ただ、人数が少ないからこそ、意思決定を早くし、質の高いものづくりに集中できる面もあると思っています。
これからはAIや新しい技術も上手に取り入れながら、効率を上げつつ、人にしかできない仕事に力を注いでいきたいです。長く続いてきた会社だからこそ、やり方まで古くていいとは思っていません。
── 百年企業への道のりで、社長が最も注力されていることは何でしょうか?
鈴木 今は、「自分が全部やる」ことよりも、「次の世代が力を発揮できる土台をつくること」を意識しています。実際、娘がリブランディングにも関わっていますが、私はなるべく口を出しすぎず、見守りながら支える立場でいたいと思っています。私自身もアイデアはたくさんありますが、それを全部前に出すのではなく、次の世代の感性や力を引き出すことが、これからの経営には必要だと感じています。
── 選択と集中の中で、社長が判断基準にされていることは何ですか?
鈴木 実際、娘がリブランディングにも関わっていますが、私はなるべく口を出しすぎず、見守りながら支える立場でいたいと思っています。私自身もアイデアはたくさんありますが、それを全部前に出すのではなく、次の世代の感性や力を引き出すことが、これからの経営には必要だと感じています。
── 最後に、今後の抱負を教えてください。
鈴木 東京アロエを、アロエと共に100年続くブランドにしたいと思っています。
キダチアロエをはじめ、私たちが大切に育ててきた素材の魅力を、これからの時代に合う形で届けながら、お客様のお肌だけでなく、心まで整えられるような存在でありたいです。
昔から受け継いできた思いを守りつつ、新しい価値も生み出していく。そして日本から世界へ、東京アロエらしい発信をしていく。その挑戦を、これからも続けていきたいと思っています。
- 氏名
- 鈴木真矢(すずき まや)
- 社名
- 株式会社東京アロエ
- 役職
- 代表取締役社長

