カツデン株式会社は創業から68年の歴史の中で、テレビアンテナから建材、そして現在の主力事業であるスチール製階段とさまざまなプロダクトを開発・販売してきた。後継者への円滑な継承のため分社化した後は、新たな経営理念のもと、開発志向の企業文化を築き上げている。
同社代表取締役の坂田清茂氏に、いかに強みを築いたのか、今後の事業展開について、聞いた。
企業サイト:http://www.kdat.jp
社長の専門分野を生かす事業承継のため、分社化
── 事業はさまざまな変遷をたどったと聞いています。具体的にどのような事業を手掛けてきたのか、教えてください。
坂田 創業は1958年で、今年で69年目になります。創業当時は、テレビアンテナの製造販売からスタートしました。東京オリンピックや東京タワーができたころで、テレビ放送が始まった時代背景もあり、アンテナ事業で成長しました。
しかし、創業から10年ほど経ったころ、アンテナ事業だけでは厳しいと判断し、金属を使った製品という共通点から建材事業を開始しました。当初はアルミ製の手すりなどを中心に、約40年間事業を展開しました。
そして、今から25年ほど前、建材部門とテレビアンテナ事業を行っていた電気・家電部門を分社化しました。厳密には、当社は分社化された側の会社、つまり子会社にあたります。
分社化と同時に、現在、主力事業となっているスチール製階段の事業をスタートさせました。当初はアルミ建材事業と並行して行っていましたが、分社化以降、アルミ事業は右肩下がりとなり、一方、スチール階段事業は右肩上がりで成長しています。よって現在、アルミ事業はほとんど行っていません。
── 分社化のきっかけは、事業承継だったと聞きました。
坂田 はい、その通りです。創業者は私の父で、私は次男です。父は家電業界も建材業界も両方見ることができたのですが、私や長男である兄が社長になった場合、両方の事業を同時に見ることは不可能だと判断しました。
そのため、それぞれの専門分野に特化した会社として分かれることになり、私が分社化された側の会社の社長に就任したのです。
建材に特化した会社として適切な環境づくりに取り組む
── スチール階段事業は創業当初の事業とは専門性が異なると感じますが、この事業のスタートにあたり、社内からの反発などはありましたか?
坂田 専門外の社員もいましたので、立ち上げ当初は大変でした。社内からの反発はもちろんありました。「こんなこと、やったことがない」という声もありましたね。
── その反発をどのように乗り越えたのでしょうか?
坂田 私が社長に就任したのと、スチール階段事業を立ち上げたのが同時期でした。分社前の会社の考え方を踏襲することもできましたが、当時の会社は建材部門と家電部門がほぼ同じ規模で、経営理念はどちらの事業にも通ずる内容でした。
しかし、新しい会社では家電部門のことを考える必要がありません。より分かりやすい言葉で、経営理念を再構築する必要性を感じました。
そこで、社長就任後すぐに、半年以上かけて社内外のさまざまな人に相談しながら、現在のウェブサイトにも公開している経営理念をゼロから考え直したのです。そして、理念を採用活動でも学生たちに繰り返し伝えました。
分社化当初は、前の会社の考え方をそのまま受け入れていた社員もいました。私が「これからの新しい会社はこういう考え方で行く」と伝えても、すぐに全員が賛同するわけではありません。
そこで、既存の社員へ理念を浸透させるには「時間に解決してもらうしかない」と考え、私は採用を重視しました。私の考え方に賛同した人を採用するという方針を徹底したのです。
当社の経営理念の核は「美しく快適な空間づくり」です。これに賛同できないのであれば、当社に入社してもお互いに不幸になるだけだと、毎年、採用活動で伝えてきました。その結果、毎年「こういう会社なんだ」と理解して入社してくれる人が増え、理念に反発する社員の割合は徐々に減っています。
トップダウンで強引に進めるのではなく、時間をかけて理解を求めてきたのです。
── 採用を重視されたのですね。坂田社長は41歳で社長に就任されたとのことですが、当時の建材業界では若かったのではないでしょうか?
坂田 建材業界は古い業界なので、41歳での社長就任は若かったと思います。私はもともと技術屋で、設計や生産管理、品質管理などに強みを持っていました。ものづくりについては詳しい方だと思います。難しい技術論を、誰にでも分かるように説明する能力は、昔からあったと感じています。
── 坂田社長は「オールAよりSが一つあるほうが面白い」と考えているそうですね。
坂田 オールA、オールBのような、当たり障りのない人材はつまらないのです。大企業では求められるかもしれませんが、当社のような中小企業ではそのような人材はそもそも来ませんし、求めるべきでもないと考えています。採用コンサルタントからも、中小企業と大企業の採用戦略はまったく異なると教わりました。
採用状況が良くなったとき、たまに「オールA」のような人材が来ることもありますが、そのような人材は当社には不要だと考えています。なぜなら、そのような人材が入ると、集団の中で浮いてしまい、企業文化を壊してしまう可能性があるからです。
毎年開催する採用活動のキックオフ会議では、「変な奴を採用しよう」と私はいい続けています。学生時代に親の敷いたレールに乗ってきたような人ではなく、尖った、いわゆる「変な奴」を見つけて採用しています。彼らは大企業ではまず採用されないような人材ですが、当社ではそれが成長の原動力となっています。
開発型企業の志向で消耗戦を避ける
── 採用以外の強みは何でしょうか?
坂田 お客様からどのように見られているかという点では、開発型の会社だと思われていること、それが強みです。世の中にないものをつくることを追求しています。たとえば、有名な企業でいえばソニーのような存在を目指しています。
そのため、開発会議は毎月開催していますが、営業会議は3ヵ月に1回にしました。もちろん、営業を軽んじているわけではありません。しかし、開発会議に時間をかけるべきだと考えています。
開発会議では、営業から顧客の要望が上がってきても、すぐに受け入れるわけではありません。私が「今、この仕事は他の会社がやっていますか?」と質問し、もし他の会社がやっていると答えが返ってきたなら、「なぜうちがやらなければいけないのか?」と考えます。
既存の会社が「この部分を改良してほしい」「機能を追加してほしい」といった要望に応えてくれない場合に、当社がそれに応えるのであれば、挑戦する価値があります。しかし、単に「同じものを安くつくってほしい」という要望には応えません。そのような仕事は、価格競争に陥り、最終的には消耗するだけだからです。
── 目の前の売り上げよりも、付加価値の高いものづくりを追求されているのですね。
坂田 根底にあるのは、売り上げを最優先に求めていないということです。売り上げを増やすために、無理に仕事を受ける必要はありません。また、売り上げが2割減ったとしても、営業所を2割減らすといった無理な対応はしません。採用を止めれば、自然に人員は減っていきますから。
それよりも、世の中の役に立つ商品開発や技術開発をした方が、社会のためになり、お客様のためにもなります。そうすれば、結果的に売り上げは自然に増えると考えています。
── ここ数年の売り上げは倍増するなど急成長されていますが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
坂田 おそらく、他社が伸び悩んでいるのだと思います。建築・住宅業界は基本的に右肩下がりで、いわゆる斜陽産業です。若い優秀な人材が、この業界に命をかけることは少ないでしょう。新規参入する企業もほとんど聞きません。
私が41歳で社長になったときも、まさにそのような状況でした。「よし、俺がやってやる」と思っても、周りにはそのような意欲のある人がいませんでした。
しかし、健全な興味を持つ若者はいます。彼らは企業を変えよう、工場をつくろう、商品開発をしようといった意欲は持っていませんが、そのような意識の大切さを若者たちに伝えることで、結果的に当社は成長しました。競合他社が高齢化する中で、設備投資や人材採用を積極的に行う当社は、相対的に伸びていったのです。
── 大手企業との戦い方としては、どのような戦略を考えていますか?
坂田 大企業に勝てる部分は、小回りの良さ、スピード感、対応力です。お客様から「今日中に見積もりを出してほしい」といわれれば、対応します。難しい仕事でも、「わかりました」といって、設計部門と相談しながら進めることが多いです。お客様は、そのような対応を喜んでくださいます。
── 本業であるスチール製階段事業について、あらためてうかがいます。階段は、建材の中でも特に難しいアイテムであるそうですが?
坂田 はい、階段は非常に難しいです。家の設計において、部屋の位置や動線が決まった後に、最後に階段の場所が決まることが多いのです。そのため、まっすぐな階段にならず、複雑な形状にならざるを得ません。
さらに、「かっこいい階段が欲しい」といった要望も出てきます。さまざまな条件を満たそうとすると、多くのメーカーでは「できません」となります。
当社は、そのような場合の「駆け込み寺」として、お客様から喜ばれています。さまざまなメーカーに断られた後、最後に当社に相談が来るケースが多いのです。20数年間の技術的な蓄積は、他社が容易に追いつけない圧倒的な差となっています。
たとえベテラン社員が退職しても、図面やノウハウは残っていますので、その技術力は当社の最大の強みです。
── 今後、EC(電子商取引)にも注力されるとのことですが、これは階段事業に関連するものですか。
坂田 はい、試しにやってみようというレベルですが、階段のネット販売を開始しました。
たとえば、青森県の小さな村で当社の階段が欲しいという場合、間に複数の流通業者が挟まり、価格が高くなってしまいます。そこで、ネット販売を通じて、企画した製品を直接お届けできるようにしました。寸法の自由度は限られますが、合わせる方法があります。
すでにベトナムへ進出し、新たな海外展開も検討中
── 今後、どのようなことをやっていこうと考えていますか? 新規事業の展開などはありますか?
坂田 新規事業の展開は考えていません。既存事業を粛々と大きくする形でもありません。売り上げは伸びていますが、特に大きくしようと思ってもいないです。将来の計画も立てていません。過去に立てた3ヵ年計画や5ヵ年計画は、一度も成功した試しがありませんでした。
1年先のことも読めない現代において、3ヵ年計画を立てること自体がナンセンスだと考えています。毎年予算は組んでいますが、予算通りになった試しはありません。株主向けという側面もあるのでしょうが、私はアホらしいと感じています。
── そのような考え方の中で、設備投資はどう決断しているのでしょうか?
坂田 工場建設のような大きな設備投資は、次のステップに進むための重要な決断です。
長期的な売り上げの増減を予測する必要がありますが、それは私の経験則に基づくものです。過去の投資とその後の売り上げの推移、そして当時の時代背景を反芻しながら判断します。取締役会や幹部会もありますが、最終的な決断は私が下します。
工場と営業の両方を理解できる人材が少ないため、どうしても私一人で考える必要があるということです。
── 海外展開については、アメリカやオーストラリアを検討されているとのことですが?
坂田 アジア圏では、ベトナムに11年前に進出し、現在は非常に利益率の高い会社になっています。しかし、そこから東南アジア全体に広がることはありませんでした。
アメリカとオーストラリアについては、特に大きな理由はありません。まずは調べてみようという段階です。「アメリカに進出している会社」というだけで、少し格好良いかな、という気持ちもあります。
国内では、10年以上前から西日本の営業拠点強化に注力してきました。島根県に工場を建設したり、福岡や広島、神戸などに営業拠点を新設したりしてきました。しかし、これ以上工場を拡張する余地もなく、西日本強化も一段落したと感じています。
そこで、次のステップとして海外展開を検討しているのです。先日、社員をアメリカ視察に行かせましたが、オーストラリアの方が良さそうだということになり、現在オーストラリアでの展開を検討中です。
- 氏名
- 坂田清茂(さかた きよしげ)
- 社名
- カツデン株式会社
- 役職
- 代表取締役

