1999年設立の株式会社エアージェイは、モバイルアクセサリーや雑貨の製造販売を主力事業とする企業だ。代表取締役の内田康之氏は、自身のカーレース参戦をきっかけに高級車ブランドのライセンスを取得し、自社製品に展開するという独自のビジネスモデルを築き上げた。さらに、その人脈を生かして2021年には中古車販売事業も開始している。
エアージェイの最大の強みは、大手家電量販店との厚い信頼関係から売り場構成まで任されることによる、詳細な販売データを生かした「負けないものづくり」。今後は、東日本大震災での支援経験から生まれたソーラー充電器など防災対策商品の拡充にも注力すると、内田氏は語る。
同社の事業の軌跡と今後の展望を探った。
企業サイト:https://air-j.co.jp
モバイルアクセサリーと中古車販売の二軸で展開
── エアージェイの事業と売り上げの構成を教えてください。
内田氏(以下、敬称略) 当社の主な商材はモバイルグッズです。現在の売り上げの7〜8割をこの部門が占めています。残りの約2割は、2021年に開始した中古車自動車販売事業です。
モバイルグッズの中には、スマートフォンのアクセサリーだけでなくさまざまな雑貨も含まれます。大きく分けると「モバイル・雑貨」と「中古車販売」の二つの柱で事業を構成しています。
── 1999年といえば、まだ「ガラケー」が主流だった時代ですね。どのタイミングでスマートフォンアクセサリーへ事業をシフトしたのでしょうか?
内田 設立当時は、携帯電話のアクセサリーグッズを専門に製造・販売していました。世の中がスマートフォンへシフトする流れは、明確に感じ取れました。当社としても、ニーズに合わせた自然な形でスマートフォングッズへ移行しています。
── 時代の変化に柔軟な対応をしたのですね。内田社長がこの事業を立ち上げようと考えた背景には、どのような経緯があったのでしょうか?
内田 私は起業する前に、二つの会社でサラリーマンを経験しました。一つは家電量販店で、テレビやビデオなどの周辺機器を店頭で販売する仕事です。そこで培った知識や経験が、私のビジネスの基礎となりました。
その後、家電量販店の経験が評価され、OAアクセサリーの製造販売会社へ転職しました。マウスパッドやマウスなどを扱う会社に、8年間勤務したのです。しかし、当時の社長と方針が合わなくなり、退職を決意しました。
当初は同業他社への転職を考えて、毎晩のように面接を受けていました。そんなとき、ある販売店の方から「自分で会社を始めたらどうか」と助言があったのです。当時、私は34歳で、失敗しても良い経験になると考え、思い切って起業しました。
前職の経験を生かしつつ、はやり始めていた携帯電話グッズ製造、販売の専門メーカーとして起業、誕生したのが、現在のエアージェイです。創業から現在に至るまで、常に新しいものづくりに挑戦し続けています。
趣味のレース参戦をビジネスにつなげる
── 中古車事業という新しい領域に参入された理由は何でしょうか? そこにどのような意思決定があったのかが気になります。
内田 中古車事業の開始には、私の趣味であるカーレースが深く関連しています。もともとモバイルグッズの事業で、高級車のライセンス商品を展開したいと考えていました。つまり、フェラーリやランボルギーニのロゴを冠したiPhoneケースなどの製造です。
50歳のころ、当時の自分の趣味であるドライブの運転技術を向上させるために、サーキットでの講習に参加したことが転機となりました。プロのレーサーから「才能があるからレースに出るべきだ」と勧められたのです。
── 趣味の延長から本格的なレースの世界へ足を踏み入れたのですね。
内田 実際にレースを始めましたが、最初に予想していた以上の成績を残せました。
そして、ランボルギーニのアジアレースに出場したのですが、会場にランボルギーニの社長が来られていたのです。表彰式などの機会を通じて、直接お話しする機会を得ました。
その場で「ランボルギーニのライセンスを取得して、iPhoneケースを売りたい」と伝えました。すると、その場で快諾。通常、ライセンス契約を結ぶには非常に多くのプロセスを経なければなりませんが、異例の速さで決まりました。
翌年にはフェラーリのレースにも参加し、同様にライセンスを得てます。これをきっかけに、BMWやメルセデス・ベンツなど次々とライセンスを取得しました。現在では約15のパワーブランドを展開できる体制が整っています。
── レースでの実績が、そのままビジネスの強力な武器になったということでしょうか?
内田 その通りです。私は50歳からモータースポーツを始めて、国内のスーパー耐久シリーズで近藤真彦さんのチームに誘われてチャンピオンを獲得しました。その後も様々なレースシリーズやフェラーリアジアシリーズでチャンピオンとなりました。現在では自分がコーチとして後進の指導もしておりレース界での実績と人脈が、現在のビジネスに直結しています。
この経緯から、中古車事業もスタートしました。現在の中古車事業部の峰尾店長は、私が初めてレースをしたときの私のコーチです。彼との出会いから中古車ビジネスが発展し、今では売り上げの2割を支える事業に成長しました。もし私がレースを始めていなければ、この事業は存在していなかったはずです。
販売データを活用した「負けない」ものづくり
── ライセンス契約によって、会社の知名度や売り上げにはどのような変化がありましたか?
内田 知名度は格段に向上しています。特にiPhone 7が発売された時期は、市場が非常に盛り上がっていました。そのタイミングで高級車ブランドのケースを投入できたことは、大きな弾みとなりました。
── モバイルアクセサリー業界は競合も多いかと存じますが、エアージェイの強みはどこにありますか?
内田 当社の強みは、唯一無二である事、利便性が高いこと、そして人の役に立つ商品であることです。また家電量販店との深い信頼関係に基づいたマーケティング力です。当社の営業担当者は、バイヤーの方々から非常に厚い信頼をいただいています。その結果、売り場の管理を丸ごと一任されるケースも少なくありません。
── 売り場を任されるというのは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
内田 たとえば、ある大手家電量販店で売り場の約7割の構成を当社が担当することがあります。そこには自社製品だけでなく、同業他社の製品も含まれます。バイヤーからは「他社製品も含めて、最適なラインアップを組んでほしい」と依頼されるのです。
この仕組みの最大の利点は、詳細な販売データにアクセスできることです。何が売れていて何が売れていないのか、リアルタイムに正確な数字を把握できます。この膨大なデータ量は、他社にはない圧倒的なアドバンテージです。
── 競合他社の動向まで把握した上で、自社製品の開発に生かせるのですね。
内田 市場のニーズを正確に吸い上げ、即座に製品開発へフィードバックします。お客様が求めているものを、適切な価格とタイミングで提供する体制が整っています。当社の成長を支えているのは、このデータに基づいた「負けないものづくり」です。
もちろん、データだけに頼るわけではありません。それこそ唯一無二なアイデア商品の開発にも力を入れています。自社の技術力と市場のニーズ、そして独自のアイデアを融合させることが当社のスタイルです。
社会課題の解決にも照準を合わせる
── 今後の事業展望について教えてください。特に注力している領域はありますか?
内田 今後はモバイルグッズの領域をさらに広げ、防災対策商品に注力します。地震や豪雨などの災害時、人の役に立つ商品を拡充する計画です。以前開発した商品の一例が、数年前に発売したポータブルソーラー充電器です。
この商品の原点は、東日本大震災の際に私自身が宮城県へ支援に行った経験にあります。当時は電気が復旧せず、スマートフォンの充電ができずに困っている方が大勢いました。「自給自足できる充電器があれば救われる人がいる」と痛感しました。
── 太陽光さえあれば充電できるというのは、災害時には非常に心強いですね。
内田 当社は個人が持ち運べるサイズのソーラーパネル充電器を、世の中に先駆けて開発しました。パネルにもよりますが、最短2時間ほどでiPhoneをフル充電できます。この製品は非常に高い需要があり、当社の大ヒット商品です。
他にも、乾電池だけで充電できる機器やラジオ付きライトなどのラインアップを増やしています。また、近年ではリチウムイオンバッテリーの火災事故を防ぐため、発火しない「準固体モバイルバッテリー」も多数展開しています。
安全性が高く人の役に立つ商品を、いち早く市場に届けることが、私たちの使命です。
── 防災用品以外にも、新しい取り組みはありますか。
内田 雑貨部門では、カーボン素材を使用したシステム手帳など、モーターテイスト溢れる商品を展開しています。車ファンの方々に喜んでいただけるような、独自性の高いアイテムを増やしているところです。中古車販売事業についても、多店舗展開を視野に入れて土地や店舗の選定を進めています。
- 氏名
- 内田康之(うちだ やすゆき)
- 社名
- 株式会社エアージェイ
- 役職
- 代表取締役

