この記事は2026年7月10日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「緩やかに経済が回復するなか、企業の過去最高益更新が続く理由」を一部編集し、転載したものです。
(財務省「法人企業統計季報」)
国内の企業活動を財務諸表ベースで包括的に記録した「法人企業統計季報(四半期別調査、金融保険業を除く全産業・全規模)」。この累計データに基づけば、2025年度におけるわが国の企業全体の経常利益は、24年度から10兆円増加して126兆円となった。
21年度以降、5年連続で過去最高益を更新し続けている。コロナ禍からの復元の面が大きい21年度を除いても平均増益額は9兆8,000億円。この4年間で、ほぼ10兆円ペースで推移する強めの増益トレンドは、1990年代以降では見られなかった重要な変化といえる。
コロナ禍以降の日本経済は緩やかな回復基調が続いていたものの、強い勢いがあったとは言い難い。こうした中で、なぜ企業の経常利益の増加トレンドが続いているのか。この背景を探るため、経常利益を「限界利益要因」「固定費要因」「営業外損益要因」の3要因に分解して考えてみたい(図表)。
経常利益の前年差を要因分解すると、2025年度(10兆円)における寄与は、限界利益要因が14兆6,000億円、固定費要因が▲8兆1,000億円、営業外損益要因が3兆5,000億円である。25年度のみならず、近年の増益トレンドに大きく寄与しているのは、限界利益要因である。
限界利益が増加している背景としては、企業の価格設定行動の変化が大きいだろう。中間投入コストの上昇に応じた販売価格引き上げの動きが定着したことが、企業の収益基盤をより強固にしているとみられる。
半面、ここ数年は固定費要因が一貫してやや大きめのマイナス寄与となっている。これは、人件費の増加が主因である。日本経済がデフレ型からインフレ型に移行するなか、企業の賃金設定行動も変化している。近年の賃上げ持続の動きを反映した結果といえよう。
もっとも、絶対値で見た限界利益要因の寄与は、固定費要因の寄与のおおむね2倍程度の大きさであり、十分なバッファーがある。固定費の負担増加が企業収益の重石になっているわけではないだろう。
このように、国内企業の経常利益が好調な理由として、企業の収益構造が10年代以前から大きく変化していることが指摘できよう。26年度は中東情勢の緊迫化による影響で企業収益が下押しされるリスクに警戒が必要となるものの、近年の企業収益の構造的な変化とそれによる強靭性の高まりを踏まえ、おおよそ高水準の企業収益が保たれるとみる。
SBI新生銀行 グループ経営企画部 金融調査室 シニアエコノミスト/森 翔太郎
週刊金融財政事情 2026年7月14日号