この記事は2026年7月31日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:骨太の方針で明確に示された日銀のデュアル・マンデート」を一部編集し、転載したものです。
骨太の方針で明確に示された日銀のデュアル・マンデート
政府は骨太の方針で、日銀に「「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」とし、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」のデュアル・マンデートを課した。骨太の方針では、「強い経済」の目標を、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」とすることによって、高圧経済の方針の下の日銀のデュアル・マンデートをより明確化した。日銀の金融政策の目標を、政府の経済政策の方針と整合的なデュアル・マンデートとし、ECB型からFRB型に転換する試みだ。目標を達成するための金融政策の手段の自主性とは矛盾しない。
日銀の展望レポートでは、2026年度から2028年度の実質GDP成長率の見通しは、+0.6%・+0.8%・+0.8%と、経済成長はまだ弱いことが示されている。デュアル・マンデートの下では、日銀が前のめりの利上げをする政治的環境は整っていない。骨太の方針を受けた、2027年度の政府予算の概算要求、財務省の査定、年末の政府予算案の決定を経て、官民連携の戦略投資の拡大の方向性がより明確となる。グローバルな景気の動きが堅調であることを確認し、実質GDP成長率が1%台に上昇していくことが予想できる状態となることが、次の利上げの必要条件だろう。その条件が整うのは来年1月の展望レポートになるとみられる。円安の過度な動きに関しては、「強い経済成長」を犠牲にする利上げではなく、為替介入で引き続き対応するとみられる。
7月の金融政策決定会合で、日銀は政策金利(無担保コールレートオーバーナイト物)を1%に据え置いた(8対1、反対:高田審議委員)。政府は骨太の方針で、日銀に「「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」とし、「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」のデュアル・マンデートを課した。6月に利上げを決めたばかりであり、デュアル・マンデートの下、利上げが経済活動を下押すことがないか点検する必要があったとみられる。高市政権の発足から、デュアル・マンデートが何度も政府から言及されていたため、骨太ショックと呼ぶことはこれまで政治をしっかりウォッチできていなかったことになる。デュアル・マンデートへの言及は、城内経済財政担当大臣の就任記者会見、初の経済財政諮問会議での高市首相の発言、日銀金融政策決定会合での政府からの発言などがあった。
骨太の方針では、「強い経済」の定義を、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」とすることによって、高圧経済の方針の下の日銀のデュアル・マンデートをより明確化した。「安定的な物価上昇」が「持続的な経済成長」につながるという、「安定的な物価上昇」の達成に前のめりのシングル・マンデートのような日銀の説明は、もはや政府の方針と整合的ではなくなった。「持続的」という弱くても満たされる経済成長では不十分で、「強い経済」との両立が課せられているからだ。政府は日銀に、「日本銀行法第4条及び政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切な金融政策運営を行うことを期待する」と、政府の経済政策と整合的な金融政策運営を求めている。
日銀の金融政策の目標を、政府の経済政策の方針と整合的なデュアル・マンデートとし、ECB型からFRB型に転換する試みだ。「日本銀行法第3条(日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない)に基づき、金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる」と、目標を達成するための金融政策の手段の自主性に言及した骨太の方針の注とは矛盾しない。高市政権では、これまで軽視されてきた「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とする日本銀行法第4条がより重視されることになる。条文の解釈は、政府の権限で、日銀が独自に解釈できるものではない。
日銀の展望レポートでは、2026年度から2028年度の実質GDP成長率の見通しは、+0.6%・+0.8%・+0.8%と、経済成長はまだ弱いことが示されている。一方、物価上昇率の見通しは2%台で、物価安定目標に沿った動きが予想されている。高市政権では、2%の物価安定目標の解釈は、「2.0%ジャスト」ではなく、「2%程度」であるとみられる。デュアル・マンデートの下では、日銀が前のめりの利上げをする政治的環境は整っていない。骨太の方針を受けた、2027年度の政府予算の概算要求、財務省の査定、年末の政府予算案の決定を経て、官民連携の戦略投資の拡大の方向性がより明確となる。グローバルな景気の動きが堅調であることを確認し、実質GDP成長率が1%台に上昇していくことが予想できる状態となることが、次の利上げの必要条件だろう。その条件が整うのは来年1月の展望レポートになるとみられる。円安の過度な動きに関しては、「強い経済成長」を犠牲にする利上げではなく、為替介入で引き続き対応するとみられる。
図1:「強い経済成長」と「安定的な物価上昇」の日銀のデュアル・マンデート
図2:日銀の見通し
図3:CACIBの見通し
出所:クレディ・アグリコル証券)
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