この記事は2026年7月31日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「中東情勢混迷後も、粘り腰を発揮する日本企業」を一部編集し、転載したものです。


中東情勢混迷後も、粘り腰を発揮する日本企業
(画像=Agus/stock.adobe.com)

(日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」)

本稿では、中東情勢緊迫化後の企業マインドの変化を把握するため、日本銀行の「全国企業短期経済観測調査(短観)」を取り上げる。市場では大企業の数字に注目が集まるが、本稿では中堅・中小企業も含めた日本企業全体の動向を把握するため「全規模ベース」のデータを用いる。

短観6月調査の調査期間は5月28日から6月30日だが、回収基準日である6月11日までに大半の回答が集まったようだ。回収基準日の翌週に中東情勢が和平覚書の締結に至ったが、この点については十分に織り込まれていない可能性が高いだろう。

まず、企業の景況感を表す業況判断DIを見ると、全産業のDIは18となり、前回の3月調査から横ばいだった(図表)。DIの水準は2025年以前の過去30年間で最も高く、2桁台の推移が3年間継続したのも過去30年間で初めてのことだ。

企業の景況感の堅調さと持続性は特筆すべき状況にある。中東情勢緊迫化に伴うコスト上昇圧力の高まりや、部分的なサプライチェーンの目詰まりが景況感の重しになったものの、企業全体では、価格転嫁の進展による収益力向上が景況感を下支えしたとみられる。

製造業・非製造業別に見ると、製造業DIは14と、3月調査から2ポイント上昇しており、足元の景況感については明確に回復を示している。AI(人工知能)・半導体関連の需要拡大が牽引材料になったほか、製商品の需給や在庫のバランスが改善したことも景況感回復に寄与したとみられる。

非製造業DIは21であり、6四半期連続で横ばいだった。非製造業DIの水準は過去30年間で最も高く、高止まりが続いている。サービス消費の回復や高水準のインバウンド需要継続などが背景にあろう。

次に、26年度の設備投資計画(ソフトウエア・研究開発を含む、土地投資を除くベース)を見ると、全産業ベースで前年度比8.8%増となり、3月調査の同2.7%増から上方修正された。6月調査では統計のクセとして、前年度案件のずれ込み分や具体化した投資案件の計上等により、3月調査から上方修正される傾向がある。

今回は過去の修正パターンにおおむね沿うかたちで順調に上方修正された。中東情勢緊迫化後も、企業の設備投資マインドが大きく崩れていないことを示唆している。

「中東情勢の影響で企業マインドは弱含む」という事前予想に反して、今回の短観では中東情勢の目立った悪影響は見られず、企業の景況感や設備投資マインドも堅調だった。昨年来、米国による追加関税措置や中東情勢緊迫化といった度重なるショックに見舞われながら、近年の企業マインドは大きく悪化していない。今回の短観は、日本企業の強靭性(レジリエンス)をあらためて示したといえよう。

中東情勢混迷後も、粘り腰を発揮する日本企業
(画像=きんざいOnline)

SBI新生銀行 グループ経営企画部 金融調査室 シニアエコノミスト/森 翔太郎
週刊金融財政事情 2026年8月4日号