この記事は2026年8月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「10年間で拡大してきた若年層の「金融リテラシー・ギャップ」」を一部編集し、転載したものです。
(金融経済教育推進機構「金融リテラシー調査」)
今回は「金融リテラシー調査」をもとに、この10年間における年代別の金融リテラシーや、金融リテラシーに関する自己評価と投資行動の変化について概観したい。
まず着目したいのが、金融リテラシーの変化における鮮明な年代差である。正誤問題の正答率は18~29歳から50代までの各年代で低下した(図表)。とりわけ30代で6.0ポイント低下と明確な後退が見られた。一方、60代はほぼ横ばい、70代は4.8ポイント上昇しており、対照的な動きを示している。
さらに興味深いのが、金融リテラシーに関する自己評価と投資行動である。自己評価は18~29歳で5.5ポイント上昇したが、40代以上では低下している。また株式・投資信託・外貨建て商品のすべてに投資する人の割合は、18~29歳で11.0ポイント上昇したが、年代を追うにつれて上昇幅が縮小し、70代では2.1ポイント低下した。このように若年層(高齢者)ほど「知識は低下(上昇)」「自信と行動は上昇(低下)」という傾向が確認できた。
まず若年層を中心とした投資行動の広がりは歓迎すべき変化だが、これは政策や経済環境による後押しが大きい。本来、若年層を含む現役世代は結婚や子育て、住宅取得などライフイベントに伴う金融意思決定が連なり、行動の積極化に知識の習得が追い付かなければ意思決定の質を損ないかねない。一方、高齢層で金融リテラシーが維持・向上していることは、金融犯罪や認知機能低下に伴う金融トラブルへの備えという面で好ましい。
また、筆者はかねて、金融行動の「量」と関連が深い「主観的金融リテラシー」の重要性を指摘してきたが、今回も若年層では自己評価の上昇と投資行動の積極化が並行しており、その関係性が示唆される。一方で、金融行動の「質」を支える客観的な金融リテラシーは低下している。
「金融リテラシー・ギャップ」と呼ばれるこの主観と客観の乖離が若年層で拡大していることは、10年間の変化の中で最も注視すべき事象の一つといえる。
金融行動が活発化する今、いかに「知識→自信→行動→知識」という好循環を生み、その先の「ファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的な観点で幸せや安心感を得られている状態)」を実現するかが次の課題になる。特に、現役層の実践的な金融リテラシーの向上と、金融リテラシー・ギャップの正常化がこれまで以上に求められるだろう。
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員/西久保 瑛浩
週刊金融財政事情 2026年8月25日号