この記事は2026年8月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「暦年上期ベースで過去最高になった今年の国内不動産売買取引額」を一部編集し、転載したものです。
2026年上期に公表された上場企業やJリート等による国内の不動産売買取引額は、2兆7,393億円と前年同期比19.4%増加し、上期ベースで過去最高を記録した(図表)。不動産価格の下押し要因となる金利上昇が進む中でも、投資姿勢は引き続き積極的で、売買取引は活況だ。
投資意欲を支える要因として、堅調な資金調達環境と賃料上昇期待が挙げられる。資金調達環境について、日銀短観の「金融機関の貸出態度判断DI(不動産業向け)」はやや引き締まり方向に動いているものの、依然としてプラスを維持している。
賃料については、国内景気の回復を背景に上昇基調にあり、その度合いは増している。不動産価格は、教科書的にはNOI(=賃貸総収入-総費用)をキャップレートで割り戻して算出される。金利上昇はキャップレート上昇圧力を強め、キャップレートの上昇は不動産価格の下押し要因となる。そのため、金利上昇分を上回るNOIの増加を見込めるかがカギとなる。
目下、賃料上昇の加速が不動産投資を下支えしている。注目度が高まりつつあるサステナブル投資との親和性も相まって、築古物件を取得して改修工事を行った上で賃料引き上げを狙うバリューアップ戦略の活発化も売買市場を押し上げている。
他方、26年上期の事業法人の保有不動産売却は前年同期比で減少に転じた。この間、東京証券取引所が23年に公表した資本コストや株価を意識した経営の要請や、アクティビストが株主還元・資本効率の向上を企図して不動産売却を迫る動きの活発化を背景に、事業法人による保有不動産の売却が増加基調を支えてきた。
もっとも今後、事業法人の売却意欲が低下するとは考えにくい。アクティビストの動きは依然として活発だ。さらに今年7月に公表されたコーポレートガバナンス・コードの26年改訂版で、取締役会の役割・責務として「金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべき」と明記された。このことが保有不動産の売却を促す可能性がある。
加えて利益確定や、より収益性の高い物件への買い替えを企図した投資家による売却も散見されている。そのため、金利上昇に伴う価格天井感への意識から今後も売却意向が維持されることが想定される。
短期的には、資金調達環境が悪化せず、賃料上昇の源泉たる景気回復が続けば、投資ニーズは総じて堅調を維持するだろう。ただし、エリアやアセットによっては賃料の上限が意識され始めており、賃料上昇が息長く続くかは注視する必要がある。また、金利が上昇するなか、物件の収益性に対する選別の重要性が増している。投資難度が高まれば、売買が成立しにくくなる可能性も考えられる。
都市未来総合研究所 主席研究員/大島 将也
週刊金融財政事情 2026年8月25日号