この記事は2026年8月28日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「「実需の円売り」は払拭できず、26年下期は円安継続の方向に」を一部編集し、転載したものです。


「実需の円売り」は払拭できず、26年下期は円安継続の方向に
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7月31日の日米協調介入によって一時1ドル=155円台まで下落したドル円相場は、現在158~159円付近へ押し戻されて堅調に推移している。介入後、IMM(国際通貨市場)通貨先物における投機筋の円ショートポジションは2週間で約4分の1に激減し、「投機の円売り」の大部分が掃討された。

しかし、根底にある「実需の円売り」は残存しており、結果的に為替介入が実需・投機双方に押し目買いの好機を提供したに過ぎない懸念がある。さらに、財政・金融政策の整合性に対する市場の疑義も払拭されていない。むしろ、ポジションの削減が進んだことで、投機筋が再び円売りに踏み込みやすい「身軽な地合い」に変容したという現実の方が不安をかき立てる。

実需勢の動向を示す2026年上半期の「国際収支統計」では、経常収支が過去最大の黒字(17兆4,292億円)を記録した。主因は第一次所得収支の巨額の黒字(20兆4,914億円)である。また、貿易収支も7,421億円と21年以来の黒字に転じた。これは半導体輸出の好調に加え、原油備蓄の放出による輸入代替効果が大きく寄与した結果である。

しかし、この原油放出という一時的な政策効果がなければ、輸入は大幅に伸びていたはずだ。今回の貿易収支の黒字転換を、実力ベースのトレンドとして評価することはできない。実際に7月の貿易収支は赤字拡大が顕著になりつつある。これまでは数量が制約されていたため、金額が膨らまなかった。貿易収支の争点は、数量から価格へシフトしつつある(図表)。

今後の展望において強く意識すべきは、サービス収支の赤字額が前年の▲1兆5,785億円から▲1兆8,223億円へ拡大している点である。懸案であるデジタル赤字は小幅に減少したものの、インバウンド市場の成熟化によって旅行収支の黒字がそれ以上に減少(3兆6,553億円から3兆1,328億円)したことが、全体の赤字拡大を招いた。

デジタル関連収支について、今後も赤字拡大の余地が大きいことを踏まえると、サービス収支は潜在的には赤字拡大局面にある。今回の統計は、30年代にはサービス収支赤字が10兆円の大台に乗る可能性すらあると感じさせる内容だった。デジタル赤字は旅行収支黒字で相殺できているから問題ないというのは、刹那的な評価であり、今後もそうなる保証はない。

26年上半期の動向を総括すると、貿易収支の改善は備蓄放出を伴う短期的な動きに過ぎない。一方で、サービス収支の悪化は緩やかながら長期的な構造問題として残る。投機筋が身軽になった現状と、実需面での構造的な赤字要因を踏まえると、今後も円需給は売り(円安)方向への傾斜を懸念せざるを得ない。

「実需の円売り」は払拭できず、26年下期は円安継続の方向に
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みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト/唐鎌 大輔
週刊金融財政事情 2026年9月1日号