この記事は2026年9月4日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「高齢化が進む中で問われる社会保障の給付と負担のバランス」を一部編集し、転載したものです。


高齢化が進む中で問われる社会保障の給付と負担のバランス
(画像=manassanant/stock.adobe.com)

(国会予算政策処『2026大韓民国財政』)

韓国では、少子高齢化の急速な進展に伴い、社会保障給付をいかに支えていくのかが大きな課題となっている。2025年の65歳以上人口の割合(高齢化率)は20.7%と、日本の29.4%を下回っている。だが、24年推計によると、韓国の高齢化率は45年に37.3%まで上昇するとみられている。同時期の日本の高齢化率が36.3%(23年推計、出生・死亡中位)であることを踏まえると、韓国の高齢化が急速に進行していることが示唆される。

高齢化が進めば、年金や医療、介護などの社会保障給付は増加する。一方、保険料や税金を負担する現役世代が減少すれば、一人当たりの負担は重くなる。韓国の社会保障を巡る問題は、給付を受ける側と支える側の人口バランスが急速に変化していることである。

こうした変化は、韓国の国家財政にも表れている。国家予算は長期的に拡大しており、近年は歳入以上に歳出が膨らむ傾向が鮮明である。05年から19年頃までは歳入と歳出がほぼ同じペースで増加していたが、20年以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、歳出が急激に拡大した。26年には、歳入が約670兆ウォンであるのに対し、歳出が約730兆ウォンに達すると見込まれる。

なかでも注目されるのが、保健や福祉、雇用の各分野の予算拡大だ。26年の同分野の予算は269兆1,000億ウォンで、前年比8.2%増となった。総歳出予算に占める割合も、16年には31.7%だったが、26年には5.2%ポイント増の36.9%に伸びている。

韓国は、これまで経済成長や雇用の拡大を背景に社会保障制度を拡充してきた。しかし、少子高齢化が進むなか、従来の仕組みを維持することは難しくなっている。保険料を引き上げれば企業や従業員の負担が増え、給付を抑えれば高齢者の生活に影響が及ぶ。税金で補塡しても、最終的には国民全体にのしかかってくる。

特に懸念されるのは、若年層への負担集中だ。韓国の若年層は、すでに住宅費や教育費、就職競争など多くの負担を抱えている。そこに社会保険料や税負担までかさめば、結婚や出産をためらう要因になりかねない。少子化で制度を支える層が減少し、各自の負担がさらに増大するという悪循環に陥る可能性も高まっている。

社会保障制度を持続可能にするには、やはり働く意欲のある高齢者が長期に働ける環境を整えるとともに、女性や若者の雇用の質や生産性を高めることが欠かせない。そうすることで、社会保障を支える人を増やし、経済全体の活力を高め、制度の安定につなげていく。

このように、若年層が安心して結婚や出産を選べる社会をつくることと、持続可能な社会保障制度を整えることは密接に結び付いている。急速に高齢化する韓国にとって、社会保障改革は財政問題にとどまらず、未来の社会の在り方そのものを左右する重要な課題といえよう。

高齢化が進む中で問われる社会保障の給付と負担のバランス
(画像=きんざいOnline)

ニッセイ基礎研究所 上席研究員 亜細亜大学 都市創造学部 特任准教授/金 明中
週刊金融財政事情 2026年9月8日号