この記事は2026年10月28日(水)に「羊飼いのFXブログ」で公開された「西原宏一氏の現在の相場観とFXトレード戦略」を一部編集し、転載したものです。


FXトレード戦略
(画像=RONY/stock.adobe.com)

2026年10月28日(水)の午前10時ころに、現役トレーダーの西原宏一さんから聞いた最新の相場観と戦略を紹介する。

西原宏一
青山学院大学卒業後、1985年に大手米系銀行のシティバンク東京支店へ入行。1996年まで同行にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラーなどを歴任後、独立。ロンドン、シンガポール、香港など海外ヘッジファンドとの交流が深く、独自の情報網を持つ。

現在の為替相場の傾向や相場観

今週は、FOMCや日銀といった重要イベントを控えているため為替は方向感なく乱高下している。

先週156.08円付近まで下落した米ドル/円は、米2年債利回りが4.74%まで戻したことで、一時158円台まで反発した。175.00円割れ目前(安値175.10円)まで続落していたユーロ円も、一時176.00円まで値を戻している。

このところのAI関連株の下落について、マーケットの見方が変わってきている。「AIはバブルか?」という問いは、あまり語られなくなった。いま問われているのは、次の3点

①AI企業は借金を返せるのか。金利上昇に耐えられるか。
②米国企業の利益成長は、少数の大企業に頼りすぎていないか。
③AI関連の強気な予想は、本当に実現するのか。

AIが社会を変える可能性のある技術であることは事実。しかし、技術が普及しても、関連するすべての企業が儲かるとは限らない。言い換えれば、「AIがすごい」ことと、「AI企業にお金を貸して安全」かどうかは別問題というわけだ。その具体例として語られているのが「チップ・ファイナンシング」。

■チップ・ファイナンシングとは何なのか?

チップ・ファイナンシング(GPU担保融資)とは、一言でいうと「超高価なAI用半導体(GPUチップ)を担保にして、巨額の借金をすること」。最近のFTの記事にも登場した「ネオクラウド(AI特化型の新興クラウド企業)」が、急成長のために使っている「錬金術」のような仕組みだ。イメージしやすいように、「大人気ゲーム機のレンタルビジネス」にたとえて説明したい。

■どんな仕組み?

いま世の中で、「1台500万円もするけれど、持っていれば毎月どんどん稼げる超高性能なAIマシン(エヌビディアのGPU)」が大ブームだとする。あなたはこのマシンをたくさん買って企業に貸し出す「レンタル屋さん(=ネオクラウド企業)」を始めたいのだが、何千億円ものお金は持っていない。そこで使うのが、チップ・ファイナンシング。

①まず少しだけマシンを手に入れる:投資家から集めたお金で、まず100台のAIマシンを買う。
②お客さんを見つける:大手IT企業と「このマシンを3年間レンタルします」という契約を結ぶ。
③マシンを担保に借金する:銀行や投資ファンドに行き、「この100台のマシンとレンタル契約を担保(返せなくなったら没収していいもの)にするので、この何倍ものお金を貸してください」と頼む。
④さらにマシンを大量購入する:借りたお金でさらに何万台ものマシンを買い、ビジネスを一気に巨大化させる。

普通、銀行がお金を貸すときは土地やビルを担保に取る。ところが今のAIブームでは、「エヌビディアの半導体チップそのもの」が、土地やビルと同じくらい価値のある財産として認められ、借金の担保に使われているのだ。

■なぜみんなそんなことをするの?

借りる側(新興クラウド企業):会社を作ったばかりでお金がなくても、エヌビディアのチップさえ手に入れば、それを担保に雪だるま式に資金を集められる。こうしてGoogleやAmazonといった巨大企業と戦えるようになる(代表例:CoreWeaveなど)。貸す側(銀行やファンド):お金を借りたい企業がたくさんあるので、少し高めの金利を取ってしっかり稼げる。「もし会社が潰れても、人気のチップを取り上げて他社に売れば損はしないだろう」と考えているわけだ。

■何が危ないの?

一見うまくいきそうな仕組みだが、大きな落とし穴がある。

FTの記事でゴールドマン・サックスの運用責任者が「これは金利と借金(レバレッジ)の問題だ」と指摘していたとおり。

  • チップは土地と違ってすぐに古くなる(陳腐化リスク):土地やビルは10年たっても価値が残りやすいが、半導体チップはスマホやゲーム機と同じ。エヌビディアは1~2年おきに新型チップを出すため、担保にした古いチップの価値があっという間に下がる危険がある。
  • 金利が高いと返済が苦しくなる:巨額の借金をしているので、金利が高いままだと、レンタル代で稼いだお金のほとんどが利息の支払いに消えてしまう。
  • AIブームが冷めたら一発アウト:お客さんの企業が「AIで思ったほど稼げないので、レンタルを解約します」と言い出したら、レンタル屋さんは借金を返せなくなる。手元には価値の下がった大量の古いチップだけが残り、破綻してしまう。

つまりチップ・ファイナンシングとは、「AIブームの熱狂を背景に、値下がりしやすい半導体チップを担保に巨額の借金を積み上げる、ハイリスク・ハイリターンな資金調達法」な訳だ。 いまウォール街では、「借金で膨らんだAIインフラ投資は本当に大丈夫なのか?」が最大の議論の的になっている。

イーロン・マスク氏も25日(日)、Xへの投稿で「AIデータセンター以外に収益のない企業には、市場がほぼ資金を出さなくなった」と指摘し、200社以上のネオクラウドが淘汰・統合されると警告している。

もっともマスク氏は、SpaceXでAIインフラを手がけるネオクラウドの競合でもあり、その立場からの発言である点には注意が必要。

現在の為替相場の戦略やスタンス

今週はFOMC や日銀といった重要イベントもあるが、引き続き、AI関連株の動向に注目。

AI関連株が続落するようだと、リスクオフのドル買いではなく、ドル売りを誘引する。

▽米ドル/円 日足チャート

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(画像=羊飼いのFXブログ)

*:当記事は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

羊飼い(ひつじかい) FXトレーダー&ブロガー
「羊飼いのFXブログ」の管理人。2001年からFXを開始。ブログで毎日注目材料や戦略を執筆配信中。トレードはスキャルがメインで超短期の相場観には自信あり。