バブル容認の『MITコンセンサス』…米国の利上げ時期はいつ?

ユーロ圏が既に完全なデフレ状況に陥りユーロ安政策を推進し、日本は国策で円安・株高誘導を進めている中にあって、米国1人勝ちの状況となったのが2014年だった。2015年も世界経済の中でもっとも市場にインパクトを与えるものとして注目されているが、なかでも米国の利上げの程度とそのタイミングは市場関係者の大きな関心どころとなっている。世界的な長期停滞状況の中で、米国の利上げは今年最大の金融イベントともいえる状況になってきているのである。


バブルの女神イエレン議長の発言で株も為替も上昇の12月FOMC

2014年の状況をつぶさに観察してみると連邦公開市場委員会(FOMC)や議会証言などでイエレン議長が発言するたびに株も為替も上昇していることがわかる。外資系のヘッジファンド筋からはバブルの女神との称号も与えられているイエレン議長だが、12月のFOMCにおけるフォワードガイダンスの文言いじりも日本的に言えば玉虫色で、どうとでも理解できるような手法を駆使して市場の好意的状況を誘いだすことに成功している。

しかし、イエレン議長は会見での記者の質問に向こう2回のFOMCでの利上げは無い旨を明確にしてしまったため、利上げは少なくとも4月のFOMC以降ということだけは確定した状況だ。昨年3月の記者会見でも、テーパリング終了後の相当な期間とは約6ヶ月であると口走っていることから、この二つの発言を総合的に勘案すれば3回目以降のFOMCの実施タイミングである4月28-29日、6月16-17日、7月28-29日のいずれかに実施の可能性が高まっている。4月のFOMCには記者会見がセットされていないため6月が最有力というのが市場のコンセンサスになりつつあるのだ。


FOMCの政策決定の根底にあるMITコンセンサスとは?

ところで、昨年大変話題になったのは世界の先進国の中央銀行をとりまくマサチューセッツ工科大学(MIT)人脈である。MITというと工科系の大学というイメージが強いが、今や世界の中央銀行の主要人材は実にMITの経済学部出身者が多いことがわかる。現米連邦準備制度理事会(FRB)副議長のスタンレー・フィッシャーはもともとMITの教授出身で、ローレンス・サマーズ前財務長官、ベン・バーナンキ前FRB議長、マリオ・ドラギ現ECB総裁は彼の教え子である。イエレン議長の夫のノーベル賞学者アカロフもMITの出身である意味MIT派閥に属する。キング前BOE議長や元ECB議長でギリシャ危機時の首相を務めたルーカス・パパデモスもMITといった具合で、気がつけば一大勢力となっているのである。

こうしたMIT出身の金融関係者に共通しているのは、MITコンセンサスと呼ばれるバブル容認のスタンスである。これは前述のローレンス・サマーズの持論である長期停滞論をベースにしたもので昨年8月スタンレー・フィッシャーもこの長期停滞論を支持する立場を表明している。つまりバブル温存と経済的抑圧が政策の背景にあることは明白な状況にある。

したがって金利を上げて正常化する動きを実施するとは言え、このバブル温存が維持できる程度の利上げに留まることは間違いなく、また変動要因があればさらに先送りとする可能性すら残されていることは念頭において置く必要があるといえる。また短期の政策金利は完全にFRBのコントロール下にあり、一旦は上昇させても支障がでれば再度下げることも可能な状況で、政策金利を上昇させても金利が大幅にはあがらないという市場観測を醸成させるのが当面のFRBの狙いと考えられる。