足元を見つめた「本業への回帰」 JA全中は事実上解体へ
(写真=Thinkstock/Getty Images)

1954年に開始された中央会制度が60年ぶり改革されることとなった。戦後に多くの農協が経営危機に陥った。その救済策として農業協同組合法を改正し発足したのが全国農業協同組合中央会(JA全中)だ。各都道府県ごとに地方中央会があり、職員数21万人、組合員数461万人のJAグループを率いる大組織である。


農協改革によりどうなるのか



JA全中の改革方針は、これまで一体であった地域の農協への監査権限を分離させ、農業協同組合法にもとづく組織から一般社団法人へと組織変更を行うことが明確となった。これによりこれまでJA全中が行っていた監査を、JA全中の監査部門から分離された監査法人か他の一般の監査法人のどちらかの監査を受ければいいことになる。これにより農協が監査の報酬としてJA全中に支払っていた年間80億円にものぼる負担金が消滅し、任意の会費となる。これにより地域の農協は経営の自由度が増えそうだ。


農協改革の目的は

農業人口は確実に減っている。最も農業人口が多かった1960年と比べ、今では6分の1にまで低下。後継者も減っている中、農業の担い手は高齢化が進む。さらには環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)により農作物の自由化議論が進む等、農業における課題は山積みだ。今回の農協改革によりこれら課題は解決するのだろうか。

農協改革の議論のスタートとなったのは、政府の「規制改革会議」でとりまとめられた「農業協同組合の見直しに関する意見書」が発端だ。これによれば、JAバンクのメインの利用者である正組合員や准組合員である農家の利用は2分の1を超えてはならないとなっている。農協には金融サービスを提供するJAバンクと、共済サービスを提供するJA共済という2つの金融事業を抱える。JAバンクの預貯金残高は90兆円、JA共済の契約保有残高は300兆円の計390兆円と非常に膨大だ。90兆円の預貯金残高というのはメガバンクである三井住友銀行の80兆円をも上回る規模だ。

この「農業協同組合の見直しに関する意見書」が適用されてしまうとJAバンクはこれまでの高い預貯金が、半減以下になってしまう可能性が高い。そうなれば高い預貯金を背景に安定経営を行ってきたJAバンクは厳しい舵取りを迫られることとなり、地域農協に与える影響も大きなものとなる。当然JA全中も死活問題だ。反対のことを言えば、国内金融機関にとっては新たな預金確保の機会を得られることとなる。チャンス到来というわけだ。この預貯金の切り崩しがメインの目的だと言われても政府は反論しづらいところだ。