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ヘルスケア市場の成長性が背景の投資商品

近年の金融緩和により、盛り上がりを見せるJ-REIT市場。今後、リート市場の起爆剤となるのでは? と注目される新しい分野に「ヘルスケアリート」がある。これは投資家から集めた資金を、介護・食事サービスと住居を組み合わせた「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」などのヘルスケア施設に投資して運用するものだ。安定性の高い不動産を投資対象にしたリートの魅力に、ヘルスケア市場の成長性が加わり、軌道にのればより効率的かつ信頼性の高い投資商品になると考えられる。

「ヘルスケアリート」の定義は、総資産の50%以上をヘルスケア施設が占めるものとされる。現時点でもヘルスケア施設に投資する法人はあるが、一部を占めているだけでは「ヘルスケアリート」に該当しない。ヘルスケア市場の成長性を背景に、今後、この分野に特化した法人が増加することが見込まれている。それに先駆けて、ここではヘルスケアリートは「本当に投資に値するか」「投資のポイントはどのような点か」にフォーカスしていきたい。


人口が減少しても高いニーズのヘルスケア施設

高齢社会へ突入した日本だが、高齢化が本格的になるのはこれから先のことである。そのためヘルスケアリートは、「安定的な長期運用」が期待できるといえる。総務局の発表によると、平成25年時点の65歳以上の人口は約3000万人、7年後の平成32年には3500万人超と増加の一途をたどる。日本の総人口が減ってもこの高齢者のボリューム自体は、しばらく横ばいとなり、ヘルスケア施設に対するニーズは揺るぐことがないだろう。

現時点においても、ヘルスケア施設の数は足りておらず開設が相次いでいる。全国有料老人ホーム協会が平成25年3月に発表したデータでは、平成21年度以降に開設した有料老人ホームが45.5%を占める。これは、未登録施設の登録を強化したことも関連するが、それを割り引いても近年のヘルスケア施設に対する強いニーズを証明する。

こういったデータから、ヘルスケアリートは、「現時点でも投資に値するものであり」「中長期的にも安定性がある」といえる。


官民協働で進められてきたヘルスケアリート

さらに、信頼性を強化する材料がある。ヘルスケアリートには「官民協働」で推し進められてきた背景があるのだ。金融庁、国土交通省、厚生労働省などの省庁と、一般社団法人「不動産証券化協会」の連携により、実務者検討委員会が設置され、ヘルスケアリートの課題や解決策が検討されてきた。平成24年12月に出された中間取りまとめは、「克服可能な課題はほとんどない」という内容になっており、ヘルスケアリートの実現化を後押しした。

それ以前にも、ヘルスケアリートは閣議決定された「好循環実現のための経済対策」に盛り込まれている。ヘルスケアリートの問題点の一つに、「介護関連の法律改正による利益率低下」があげられるものの、ヘルスケアリート自体を国が後押ししている背景を考えれば、短期的には極端なリスクは低いと見ていいだろう。


施設運営者のサービスの質が鍵をにぎる

ただし、ヘルスケアリートと通常のリートの仕組みには大きな違いがあるので注意したい。通常のリートでは、物件管理をするプロパティマネジメント会社との一括賃貸契約により賃料を得る。これに対して、ヘルスケアリートでは、オペレータと呼ばれる施設運営会社との契約となる。この部分だけを見ると、プロパティマネジメント会社が、オペレータになっただけで違いを感じないが、前者は入居者から「賃料」を得るのに対し、後者は利用者から「利用料」を得るという違いがある。

つまり、オペレータは、サービスを含む利用料が原資となるため、物件に魅力があっても、サービスの質が悪ければ利用者からの支持が得られない可能性があるのだ。だが、逆にいえば、サービスの質が高ければ、物件が僻地にあっても利用者から一定の支持が得られるということでもある。そういった意味では、投資の際には、ヘルスケアリートに参画する法人の「オペレータのサービス力」を精査する能力に着目するという発想が求められるだろう。

(提供: Leeways online )

(ZUU online)

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