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(この記事は2015年1月20日に掲載されたものです。提供: Leeways Online

賃貸経営(不動産投資)をしている方の中でも、複数物件による経営や賃貸物件を1棟所有するなど、高額の不動産収入を得ている方は、個人による資産管理よりも「法人化」による資産管理が適しているともいわれる。具体的にどのような点にメリットがあるのかチェックしていきたい。


まとまった額の退職金を受け取れる

法人化するメリットの1つ目は、「代表取締役や役員に退職金」を将来的に受け取れる環境をつくれることだ。個人では多額の退職金を受け取ることはできないが、法人化すればまとまった額の退職金を受け取れる。だが、退職金を受け取るには、長年その原資を積み立てていくことが前提になるが、経営的にそれが難しいということも考えられる。その場合、損金割合の高い保険を法人契約し、解約金や保険料を退職金にあてるという選択も可能だ 。


法人が不動産を持てば相続対策にも

法人化による2つ目のメリットは、「相続対策」だ。法人化によって、親族間で資産を巡る争族が発生するリスクを抑えることができる。不動産投資を法人化する場合の形態は大きく分けて二つある。一つは、個人の不動産の管理をするための法人を作る方法、そして、不動産そのものを法人が保有する方法だ。

いずれも節税メリットはあるが、“相続"を考えると後者の方が好ましい。なぜなら相続となった場合、優良物件の取り合いになることが目に見えているからだ。あらかじめ法人に不動産を保有させておけば、誰がどの物件をもらうかといった議論はなく、株式の保有割合を決めれば良いだけとなる。


不動産所得が高額な場合、法人化の方が節税に

メリットの3つ目は所得税の節税だ。個人の所得税率は“累進課税"の形を取っている。所得が低ければ税率も低く、増えるにつれて税率も高くなる仕組みだ。所得が195万円以下なら税率は5%だが、所得が1,800万円を超えると税率が(40%—2,796,000円)となる。一方、法人税率は課税所得800万円超でも25.5%(2015年4月1日以降の事業年度)であり、個人の所得税に比べると税率が低い。

だが、この税率の差だけを見て、「節税になる」と判断するのは早計だ。法人には、法人住民税、事業税、地方法人特別税などがかかり、実行税率 は30%後半から40%前半になる。もちろん、個人にも住民税がかかるため、「個人、法人で税金をおさめた場合、それぞれいくらになるのか」を算出してから選択するのが賢明といえる 。


相性が良い「不動産投資」と「法人化」

不動産投資においては、キャピタルゲイン(売却による利益)よりも、インカムゲイン(家賃収入による利益)を重視するのが常識的だ。これは、日本国内の物件においては、バブル時代のような急激な値上がりは期待できないと一般的に考えられるからだ。

そのため、不動産投資は、「長期にわたっての経営」が前提となる。法人化にはここまで解説してきたように「退職金の設定」や「相続対策」などのメリットがある。このメリットを活用するには、長期的な視点が必要であり、「長期に渡っての経営」を前提にする不動産投資とは極めて相性が良いといえる。

だが、法人化をすればメリットがあるというのは、すべての不動産オーナーや不動産投資家にあてはまるわけではない。不動産分野に強いコンサルタントや税理士にアドバイスを受けた上で選択するのが賢明である。

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