(この記事は2015年3月13日に掲載されたものです。提供: Leeways Online

日銀の大胆な金融緩和や米国経済の回復などのおかげで、日本の不動産価格は堅調に推移しています。 J-REIT を始めとした国内の投資家による不動産取得は活発ですし、それ以上に外国人投資家による日本の不動産への投資が盛んです。

たとえば、マレーシアの公的年金である従業員退職積立基金( EPF )は日本で不動産投資に乗り出し、首都圏の物流施設を取得しました。日経新聞によると、アジアの公的年金が日本で不動産投資するのは初めてのことです。

都市未来総合研究所の調べでは、 2014 年外国人投資家による日本の不動産取得額は 1 兆円近くに上りました。ひとつの例としては、シンガポール政府投資公社( GIC )が、東京駅前の「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」のオフィス部分を約 1,700 億円で買収したことがあげられます。

このように外国人投資家が日本の不動産投資に意欲的なのは、グローバルで見て日本の不動産が割安と感じているからです。


日本人目線での不動産価格推移

以下の図は、東京都内の中古のマンション価格指数(不動研住宅価格指数)です。

外国人投資家の目線で見ると、日本の不動産が割安に見えるのはなぜ?

東京の中古マンションは 2013 年あたりから価格が上昇して、いまでは直近の 2007 年の高値に近付いています。この図を見ると、この2、3年で「だいぶ上昇してきた」ようにみえます。国内の目線では、もうだいぶいいところまで来たと少し警戒的にみる人もいるでしょう。

ところが、外国人投資家はオフィスもマンションも関係なく、また東京のみなならず地方の物件まで食指を伸ばしています。日本の投資家と外国人投資家の目線の違いはどこから来るのでしょうか。


外国人投資家の目線

外国人投資家と一口に言っても、実際は多岐にわたります。アジアや中東の人もいれば、欧米人やオーストラリア人もいます。ここでは便宜的に外国人投資家をひとまとめにして、米ドルで投資資金を運用する人ととらえます。

「ドルベースの資金をいかに安全に増やすか」、それが外国人投資家の投資戦略と仮定します。

そうすると、日本の不動産も為替の影響を含めたドルベースで見ることになります。それが以下の図です。

外国人投資家の目線で見ると、日本の不動産が割安に見えるのはなぜ? (2)

これが米ドルベースの外国人投資家が見ている不動産価格推移です。さきほどの図は円建て、こちらの図は米ドル建てです。こちらで見ると、この2、3年で「安くなってきた」と見えるのです。

2つの図を比較すると以下のようになります。

外国人投資家の目線で見ると、日本の不動産が割安に見えるのはなぜ? (3)

日銀の金融緩和で円安が進んだことで、ドルベースで見た日本の資産が割安に見えるのです。ドル建てで損益を測る外国人投資家にとっては、いまの水準であれば、安くなってきたと判断できるでしょう。

また、 2008 年のリーマンショックのときに日本を含め世界中の資産価格は下落しましたが、円高が進んだことで外国人投資家は日本の不動産価格の下落を円高でヘッジできました。世界的にリスク回避が強まるときは、対外純債権国である日本やスイスの通貨が選好されます。そのため、リスクオフの局面の備えとして、外国人投資家は絶えず日本の資産に興味を持っています。いまのような円安局面であれば、ますます日本の不動産に関心が強まるのです。

ドル建てで見れば日本の不動産は割安ですし、リスクオフに備えた分散投資の一環としても、日本の不動産は魅力的といえるでしょう。不動産価格を米ドル建てで見ることで、外国人投資家の視点がわかりやすくなります。

基本は円建てで見るとしても、たまにはドル建てで不動産の動向を見ることで、グローバルな視点から投資を多面的に考えるといいのではないでしょうか。

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