日本マクドナルド <2702> が発表した2015年12月期第1四半期連結決算状況によると、売上高は対前年同期比34.4%減の408億7,400百万円と大幅な減少となった。最終損益は145億9,400万円の赤字で、期限切れ鶏肉の使用や異物混入問題が影響した。
4つのビジネスリカバリープランで信頼回復を狙うが……
深刻な客離れに見舞われている中、マクドナルドは4つの柱からなるビジネスリカバリープランを打ち出した。顧客にフォーカスしたアクションとして「KODO(コド=鼓動)の導入」、「店舗投資の加速」、「地区本部制の導入」、「コストと資源効率の改善」である。
この中でも最も注力するのは「KODOの導入」のようだ。
「KODO」とは、スマートフォンベースのアプリケーションの呼び名で、これまで行ってきた覆面調査等による店舗サービスの定点観測(マクドナルドが設けた自主基準での調査)の改良版だ。
顧客が「KODO」を使って、店舗を評価するアンケートに回答すると、アンケートはオンラインシステムを通じ店舗ですぐに確認でき、本社を介さずに店舗が独自に改善への行動を起こすことが可能になるという。
アンケートに協力した顧客には、謝礼としてマックフライトポテトのSサイズなどの無料クーポンが提供される。このサービスは熊本県と埼玉県内の店舗(計211店舗)でトライアルとして実施済で、4月21日から国内の全店舗(約3,100店舗)に拡充した。
「店舗投資の加速」では全国の既存店の改装と閉店に着手。今後4年間で約2,000店舗を改装する一方、2015年中に131店舗を閉鎖する。「地区本部制の導入」では日本を3つのエリアに分け、マーケティング、人事、財務といった機能を各地域に配置し、地域ごとの権限委譲を進めるという。地域に特化したマーケティング活動を強化するのが狙いだ。
「コストと資源効率の改善」では人材や資金などリソースの最適な配分、と抜本的なコスト構造の見直しを実施する。その一環として本社スタッフを対象に約100人の早期退職者を募るほか、原材料費や物流コスト、店舗の最適な人員配置などコスト削減を徹底する。
顧客の声を現場に直接届けることで改善のスピードを上げ、店舗を改装し、社内体制やコストを見直す…経営が悪化した企業が作りだす事業計画の常套手段である。
しかし、ビジネスリカバリープランには、もう一つ重要なアクションが抜けているようにみえる。
抜け落ちる『食の安全・品質管理』と『各国現地スタッフの品質』
マクドナルドの不振の原因ともなった期限切れ鶏肉の使用問題。2014年7月に放送された中国・上海の食肉工場の内部映像は衝撃的だった。床に落ちたペースト状の肉を再び機械の中に戻したり、青く異臭のする肉の塊や消費期限ギリギリの不良品を、これから加工する肉に平然と混ぜる工場スタッフのモラルの欠如に誰もが唖然としただろう。
その後、商品への異物混入の訴えが相次いだ際にも、工場の内部映像が頭を過ぎった。それにも関わらず、残念ながら今回のビジネスリカバリープランには、「食の安全、品質管理」に関して一言も触れられていない。
同社のホームページでは、品質管理や最終加工国および主要原料原産国の一覧は公開している。だが、実は、加工する国や原産国より問題にしなければならないものがある。それは、そこで働く現地スタッフの「意識の向上」や「モラルの向上」だ。
各国でマクドナルドの食に携わっている現地スタッフへの品質・衛生に関する研修や、労働環境の向上への取り組みや努力過程をホームページで公開してもらうほうが、単に最終加工国や主要原料原産国を公開されるより、マクドナルドが本気で食の安全に取り組んでいると感じるだろう。
更に導入した「KODO」を店舗のためだけに活用するのではなく、加工工場などの現地スタッフの姿勢を、「KODO」でアンケートを取り、顧客の感謝や励ましの言葉を現地スタッフにフィードバックすれば、品質も生産性も上がるのではないだろうか。
安価な商品のためには、安い賃金で働くスタッフが必要なのは理解できる。だが、現地スタッフの労働体質を無視したままでいれば、顧客やステークホルダーの信頼の再構築には及ばず、146億円の赤字どころではなくなるのではないだろう。(ZUU online 編集部)
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